第83話
「リョウさん目を覚ましたんですか!」
「うん。少しの間だけだけどね、」
夜頃になって狩りを終えた2人が戻ってきて、私は昼のことを話していた。ちなみにリョウはあれから全く起きていない。時間は不安と共に私を襲っていた。
「それでリョウさんは何か言っていましたか?」
「心配かけたな、だって……」
「分かりました。夕食の準備しましょう。リョウさんが起きた時に食べられるように!」
「そうですよ。リリスさんも元気だしましょう。リョウさんだって落ち込んでるリリスさんなんて見たくない筈です!」
「そうだね。2人共ありがとう。夕食準備しよっか!?」
「はい!」
「はい!」
「出来ましたよ、」
「うわぁ、凄い。これって全部藍夏ちゃんが?」
「はい。これでもお料理は得意なんです」
「藍夏ちゃん意外だね、」
「何よ優司! 私だってこれくらい!」
「ご、ごめん…」
「ふふっ、」
「どうしたんですか?」
「仲良いなって思って、」
「っ!」
「っ!」
まるで自分達を見てるみたい。けど立場は逆。私はダメダメでリョウに頼っちゃうから、藍夏ちゃんは凄いと思う。
「2人共、いつからなの?」
1度自分達に重ねるとやっぱり気になってきてしまう。リョウから聞いてると2人共両想いらしいしかなり昔からなのかな?
「わ、私と優司はそんな関係じゃありません!」
「ならどんな関係なの?」
「ぅ……」
「あまり苛めないでくださいよ。リリスさん、」
「苛めてるわけじゃないよ~。優司くんは藍夏ちゃんのことどう思ってるの?」
男らしく前にでたけど、君はどう答える。リョウなら絶対に決まってるけど、ここまでの優司くんを見てると到底リョウみたいなことは出来ないと思うから。
「僕は大好きですよ。僕には釣り合わないですけど……」
「…………」
「…………」
予想外にやるねえ。リョウが寝てる時に楽しむのも悪いけど、この2人は確かに面白い。それに優司くんが素直。気持ちがド直球だと思う。
「それを、藍夏ちゃんに言ってあげれば?」
「っ!」
「………」
流石にこの1手には堪えたのか2人共無言になって顔を背ける。少し安心、これで最高の所はリョウも一緒に見れる…。
「2人共、この池の周辺は綺麗だよ。狼達を連れて歩いてくればいいんじゃない?」
「は、はい。そうします」
「ちょっと、勝手に決めないでよ!」
「ならいってらっしゃい。狼達、護衛してあげてね!」
『ガルルッ!』
半無理矢理2人を歩かせ1度私とリョウを2人っきりにしてもらう。何故なら…、
「リョウ、起きてくればいいのに」
「こういうのもいいだろ?」
ムクッと起き上がると私の隣へと腰を降ろす。その身のこなしは普段の隙の無いリョウのもの。
「まあね。2人共私だから話せたのかもしれないし、」
「だろ? あとリリス、これありがとな」
「うん。寒くなかった?」
私がリョウへ被せていた上着を綺麗に畳まれ返してもらった。お礼なんていらないのに、
「温かかったよ。リリスこそ、こんな寒い中寒くなかったのか?」
「大丈夫大丈夫。リョウの為ならこれくらい!」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。けど無理するなよ?」
「うん! と言うか、リョウは本当に大丈夫なの?」
「あぁ。頭痛も吐き気も収まったし、節々の痛みも引いたしな。擦り傷とかも精霊魔法で少しずつ治療してるし問題はないだろう」
「凄いねリョウ。やっぱり私は藍夏ちゃんみたいになれないよ、」
「ん、どうした?」
病み上がりで起きたばかりで本当にリョウには迷惑をかけるけど、私はそんなリョウへ頭を預ける。真正面を向いた状態でなんて無理だから…。
「リョウ、私とリョウってどんな関係なんだろうね?」
「……大切な、旅仲間だな」
「そっか。私にとってはそれ以上なんだけどね、」
「………」
「リョウは私のこと好きって言ってくれたでしょ?」
「あぁ、」
「私も好き。けどリョウは好き以上何も言ってくれないじゃない?」
「ふふっ、」
「なによっ!」
「俺は、約束を果たしたい。そのおかげで生きてこれたから。だからそれを終えるまで身を縛るわけにはいかないんだ」
「………」
「けど、それ以上の気持ちがないわけじゃない。リリスが求むなら仕掛けてやるぞ」
「そ、そんなこと言ってないでしょ!」
「嫌か?」
「そ、それは…」
「ふっ、冗談だ。俺は無理強いしないからな」
「私は、いいよ…」
「っ! 無理強いはしてないんだぞ…」
「うん。また今度、だけどね」
「だな。またゆっくり話そうか、」
「そうね。私も少し触発されちゃったかな……」
「俺もだ。アイツらといるとお前が恋しくなるよ、」
「っ!」
ホントにリョウとの会話は終始胸が高鳴りっぱなし。それをリョウは知ってるのか分からない。けどそんなリョウの言葉に私はドキドキしちゃってる。
「アイツらもそろそろ帰ってくるだろう。少し驚かしてやるか!」
「そ、そうだね…」
私が行ってきなよって言ったし、狼達にも護衛を頼んだから心配はいらない。けどリョウにはやっぱり心配らしい。それって、どんな心配だろ?
「ん、どうした?」
「なんでもないよ。リョウってやっぱり優しいなって、」
「ん、何かしたか?」
「なにも。ただ、私に限らず皆に優しい。それが凄いと思ってね、」
「ふっ、優しい、か。そうかもしれないな、」
「自分で言うんだ…」
「俺は向こうの世界では家が山奥なだけあって中々人と会わなかったからな。だから優しいとか、人に何かするとか無かったんだ」
「………」
「だから向ける相手がいない。愛情、恋情、優しさ、怒り、俺はこっちの世界に来て自分を出すようになったんだ」
「それってリョウにとって良いこと? 悪いこと?」
「当然良いことだ。自分の気持ちを出すことができて、人に対する愛着も湧くようになった。だからこんな気持ちも芽生えるし、もし俺がここに来なければ俺は普通の平穏な人生じゃなかったと思う。この年齢で語るのも烏滸がましいが、この歳でここに来れたっていうのは俺の感性を変えたと思う」
「感性、か。どこか複雑な気持ちだよ、」
リョウなりに何か訴えかけてくれてるんだと思う。けれど私はもう少し直球がいい。いつも真っ直ぐだから少し物足りない気がして……。
「まあ、こんな話、まだ答えは見えないんだ。けども確信を持てるものが1つだけある!」
「それは、何?」
「リリスに対する愛情だ!」
「んっ!」
まさか難しい話のあといきなりド直球で来るなんて……。顔が熱くなるのを感じて急いで顔を背ける。
「誰かに対する愛情って語りきれる物じゃないと思う。だから無駄には着飾らない方がいいと思うんだ。ただ、好きってだけな…」
「……私もよ、」
「ん?」
「私も好きって言ってるのよ。さっき好きしか言ってくれないじゃない、なんて言ったけど本当はそれだけで十分なの……」
「そう言ってもらえると俺も嬉しいよ。だがな、俺だってそれで満足なわけじゃないんだぞ?」
「ん、それって?」
問い返そうと目を見た時には既に私は地面へ押し倒され、私の顔の近くにリョウがいた。
「嫌なら拒否してくれて構わない、」
「んっ!」
始めから基本的に何をされても拒否する気は無かったけど私の唇は一瞬のうちに奪われてしまう。リョウだからいいけど……。
「………」
「ぷはっ…。いきなり?」
「ごめんな。雰囲気とか俺にはまだ無理だからな…」
「ふふ、リョウでも気にするんだね?」
「当たり前だ。まあ、問答無用で押し倒してて何言ってるかわからないけどな、」
「そこも、そこもリョウらしくていいよ!」
「ありがとな、」
再びリョウの顔が近付いてきて、私はソッと目を閉じた。




