第80話
リアス視点です!
「これは、柵?」
「そうみたい。ここから先はもう町の領土なんじゃない?」
「そうかも! どうやって入ればいいんだろ?」
「入り口を探すしかないよ。この柵に沿って歩けば見つかる筈だから…」
ティナの予想通り森はすぐに抜けて草原に入った。しかしその後、城壁が見えると共にまた森が広がっていた。
「けど、どっちかな? ティナはどう思う?」
「ティナは向こうだと思う。直感だけど……」
「じゃあ私も向こう。2人共分からないんだから責任はないよ」
「うん……」
「じゃあ行こっか、」
「うん。ティナ、そろそろ降りるね、」
「そう? 大丈夫なの?」
「うん。昨日と今朝でかなり楽になったよ。だから…」
「分かった。けどまだ戦闘は無しだよ!」
「うん……」
私がここまで考えてきたこと。そして昨日の話でより強く感じたこと。
「私は疑わないから……」
私が疑ってしまうと全てが無くなってしまう。リョウと私達の繋がりは家族でそれは想い合う限り永久。否定しない限り終わらない。
「どうしたの?」
「なんでもないよ。早く行こう」
それは何もリョウへの想いだけじゃない。私にとってティナも大切な家族。リョウに会えないのは本当に寂しいけど、その為にもう1人の家族であるティナを傷付けちゃ意味がないと私は思う。だから本当に無理だけはしないでほしい。
「ねえリアス、さっきから何を考えてるの?」
「えっ、分かる?」
「うん。ずっと無言で考え込んでるように見えるよ」
「ふふ、私って分かりやすい?」
「うん。かなりね、」
「酷くない?」
「酷くない。気を付けてね。いつか失敗しかねないから!」
「うん、気を付ける……」
私より小さく見えるティナは私よりも賢くて聡明。そしてちゃんと私のことも気遣ってくれる。この調子ならなんとかリョウに会える!
「リアス、ここからは単なる雑談だけど、」
「うん、」
「リョウ兄って今何してるんだろ?」
「………」
私も考えたことがある。私達がいない今、リョウは何をしているんだろ?
「もしかしたらリョウ兄は、私達以外の人と一緒に旅してるかもしれない」
「………」
「どう? リアスもそう思わない?」
「思わない、ことはない……」
「もしそうなら、私達を置いてった上、他の人と旅してるのって、許せる?」
「………」
「………」
「私は……、」
『許せる!』
「ふふ、リアスも同じか、」
「そういうティナも?」
「うん。はっきりと言っちゃうとリョウ兄の中ではティナ達は既に死んでるの。だからティナ達のことを考えるなんて有り得ないし、もしそうだったらティナはリョウ兄のことを怒る!」
「………」
「死んじゃった人のことを引きずるのは弱い人が何かにすがるときにすること。リョウ兄はそんなに弱い人じゃないのは知ってるから!」
「確かに。もし次会ったときに他の誰かがいたらちゃんと話して一緒に旅したいね」
「うん。リョウ兄が一緒にいるってことは理由がある筈だからね!」
「うん、きっと……」
私もティナもリョウに実質助けられた身になる。想像もしたくないけど、私なんて逃げたんだから酷いことされてそのまま色々と失くしちゃってたかもしれない。ティナだって私と同じように逃げてきたんだし同じだと思う。
「ねえリアス、前…」
「ん、何?」
考え込みながら歩いているとギュッと腕を掴まれてその場に止められる。それをしたのはティナなんだけど、そのティナの言葉に従い前を見ると見るからに大きな体格の冒険者達が歩いてくる。
「あの人達、滅茶苦茶強い……」
「私達よりも?」
「分からない。けど強い。敵対しちゃダメだよ」
「ティナが言うなら…、分かった」
槍の刃を後ろへ向け敵対の意思がないことを示しながら道の端を歩く。できるだけ絡まれないように……。
「…………」
「…………」
真ん中を歩くリーダーらしき人は私にスッと視線を移したが、すぐに視線を前へ戻す。同様にティナにも視線を向けるが同じ。どうやら敵対は回避できた、のかな。
「けけけ、」
「うひひ、」
「にしし、」
確かにリーダーらしき人物は強いだけあって普通の性格をしてたらしい。けどその配下は別。手は出してこないものの卑劣な笑い声をあげる。
「ねえティナ、もう追ってこないかな?」
「分からない。最後の3人が心配。あの3人も弱くはないと思うから危険だよ、」
「そうだね。早く町に入っちゃおう!」
あの人達が来たということはこちらに出入り口があるということ。それはすなわち私達は合っていたということ。
「あっ……」
確かに出入り口があるのは分かった。けど、その前に私達の前に現れた者達がいる。
「けけけ…、俺達の奴隷になれ!」
「うひひ…、逆らわねえ方がええぞ。その顔に傷がつくぞえ」
「にしし……、早く、早く、」
「ティナ、殺していいかな?」
「いいと思う。けど出来るか分からないよ?」
「いいよ。ここでもう1度戻るよりはね!」
「そうだね。ならティナも!」
「ダメ!」
「………」
「じゃあここで待ってて、」
久し振りに暴れてあげる。真っ赤な鮮血が散る昼間の舞を披露してあげるよ。
「けけけ、女の癖に!」
「そんなの関係ないでしょ!」
ガキンッ!
受け止められた槍を素早く引き戻そうとすると逆に私自身が引かれてしまう。慌てて槍を回転させ振りほどくが引かれた方向を見ると鎖を構えたもう1人がいる。
「うひひ、わしの鎖から逃れるとはやりおる。わしはそれくらいが好みじゃがな!」
「にしし、早く!」
最後の1人は私が全く見たことのない武器。短剣よりも小さな刃がフワフワと空に浮いて自由自在に動いている。
ガキンッ!
「にしし、弱い、簡単、」
「くっ、この人、強い…」
「にしし、俺は早く、」
ガキンッ!
何処から飛んどくるか分からない刃は私の肌を掠め槍にダメージを与える。ジリジリと私の体力を削る気?
「けけけ、俺のこと忘れてるだろ?」
ブシュッ!
後ろから近付いた男は刃を振り上げ私の肩を切り裂く。咄嗟に前へ移動したおかげであまり深くはないけど多少動きに支障出てしまう。
「うひひ、わしもおるのじゃぞ!」
ジャラジャラと音をたてながら私の腰に鎖が巻き付いてくる。破壊しようと槍を振り上げるが、その槍は自在に移動する刃に弾かれてしまう。
「けけけ、観念しな」
「うひひ、わし等が天へと誘ってやるぞい」
「にしし、女、久し振り」
怖い。金属の音や血の臭いよりも怖い。私の鎧へ伸びた手が鎧を投げ飛ばし、その下へある服へと手を掛ける。
「うひひ、なんじゃこれは?」
「っ!」
男の手の中には真っ赤な結晶。これがあれば私に勝機はある。これをティナに届けられれば…!
「にしし、女、暴れるな」
鎖は頑丈に絞まって私の腕も体もほとんど自由に動かない。けれど魔晶を飛ばすくらいはできる。唯一動く足で男の頭を蹴って離した魔晶をティナの方へと蹴り飛ばす。
「ティナ!」
「リアス、うんっ!」
ティナは魔晶を手にし魔力を込めていく。それと同時に周囲の魔力は失われていく。
「けけけ、誘ってるのか?」
「そんなわけないでしょ! そんか手で触らないで!」
少しでも時間を稼ぐべき。リョウの作った魔法は強いけどそれだけ発動に時間が掛かるし必要な魔力も多い。それも数秒だけどね!
ボウゥゥゥッ!
渦巻き男達を吹き飛ばした炎は一点へ収束すると炎の鎧を纏う巨人と化す。
「!!!!!!」
その時、大きな咆哮と共に男達の運命は尽きた。




