第78話
ティナ視点です!
「ふぁぁ。疲れたね」
「うん。それに今日も野宿になっちゃった…」
「そう言えば今日食べるものないじゃない!」
「そうだよ。忘れてたの?」
「うん……」
「しっかりしてよ。明日には次の町につくだろうしね!」
「うん。たった1日の我慢だもんね!」
「そうだよ。今日は早くねちゃおう?」
「うん。じゃあ私先に寝るね。おやすみ、」
「うん、おやすみ」
あれから数日、大きな山から流れ出る川を辿り海の近くまで行こうっていう無謀な作戦で歩いてきている。だから近くに町があるなんて確証はないけど、遠くに人を見ることが多くなってる気がする。ティナ達は月光の光る河原に穴を見付けて、その中で夜を越すことにした。念のためティナが穴の入り口を防ぐ。
「リョウ兄……」
空気孔として開けていた穴から冷たい風が吹いて思わず身震い。寒いし仕方ないよね?
「置いてかないって、言ったのに……」
目を瞑ればその裏にはいつでもリョウ兄の優しい笑顔が見えてくる。なのに、ティナが間違ってるって分かってるのに……
「ねえリョウ兄、どうしてティナを置いてったの?」
仕方のないこと。どれだけ探しても見付からないティナ達が死んじゃったって判断するのは間違ってないと思う。けど、けど、けど…、
「おやすみなさい、」
誰に言ったのか分からないけど、チョコッとだけ届けばいいな。
「おはよう、リアス!」
「ふぁぁ、おはよう。ティナって朝強いよね?」
「まあね。これでもエルフだし、」
「私も一応森の一員だよ!」
「だけど狐でしょ?」
「………」
「もう止そうよ。早く行こっ!」
「うん、」
ドンッ!
入り口を防ぐ土を崩すと外の光が穴の中へスッと差し込んでくる。それが強くって一瞬目が眩んじゃった。
「うっ……」
朝の太陽の光が射したと思うとクラッとよろけてしまって片膝をついてしまう。
「だ、大丈夫!?」
「う、うん。少しフラッとしただけ。リアスは大丈夫?」
「うん。私はなんともないよ。立てる?」
「う、うん……」
「ねえティナ、そろそろ昼前じゃない?」
「ん、本当だ! 急がなきゃ!」
「えっ、ちょっと、仕方ないなあ!」
リアスは獣人としての身体能力。ティナは魔法による能力強化でスピードを上げる。
「リアス、」
「なに?」
「リョウ兄、私達が会いに行ったら喜んでくれるかな?」
「分かんない。もしかしたらまた違うところで違う人間関係を築いてるかもしれない。けどリョウは私達から離れないって言ったもん!」
「追い掛けるよ。ティナ達は!」
「うん!」
「キユィィィッ!」
折角清々しい気持ちだったのに空を見上げると小さめの鳥達が嘴をティナ達に向けて急降下してくる。正直面倒…。
「精霊魔法・鎧樹腕、からの、精霊魔法・銃種」
降り注ぐ小さな嘴を固い固い樹木のドームで防ぐ。そのあとさその隙間から放たれた種は物凄いスピードで魔物達を撃ち落とす。
「終わった?」
「うん。行こっ!」
「うん!」
何事もなかったかのように血塗れになった地をあとにした。こんなの奴隷生活と比べれば雲泥の差。そしてリョウ兄に会えたならもっと幸せ。
「リアス、この先滝だけどどうする?」
ティナ達はここまで川に沿って歩いてきた。だけど先を見るとその川が突然消えて、大きな音と共に流れ落ちてる。
「流れにのって降れないかな?」
「流石に無理じゃない?」
「見てみなきゃ分からないよ!」
滝に近くなるほど流れは強く急になる。近付くにつれて大きくなる水音。
「これども?」
「………」
「他の道、探そうよ?」
「いいじゃない! 降りちゃおっ!」
「本気?」
「うん、本気!」
「………」
「行くよ!」
「えー、ちょっと待ってよ!」
大きな音が怖く感じる。ここから飛び降りるとなると尚更だよ。
「うわぁぁ。高いね……」
「うん。本当に飛び降りるの? 怪我したら元も子もないよ?」
「けど行くんだよ! せーのっ!」
「ちょっと待ってよ~~~」
高い、怖い、そして冷たい。
飛び降りた時の浮遊感が体の髄から恐怖を駆り立てるようで、怖くてうずくまってしまいそう。けど頼れる人は誰もいない。そんなことを考えてると水面が近くなって……、
バシャァァァァンッ!
勢いよく水の中へと墜ちてった。ティナも悠長に話してられない。何故なら泳げないから…。慣れない水中はボヤけていて、1メートル先でさえよく見えないなんて…。
「ティナ!」
光の射し込む海面から馴れた声と一緒に手が伸びてティナの手を掴む。こんな無茶をさせるけどリアスはリアスでちゃんと考えてるんだ。
「あ、ありがとう……」
「いいって! 友達でしょ!」
「うん!」
泳げないティナと違いリアスはすいすいと水面まで上がってしまう。自分が泳げないからリアスに引っ張ってもらってる。どこか無力感に襲われちゃう…。
「ぷはぁっ! 大丈夫ティナ?」
「うん。リアスこそありがとう!」
「へへ、友達を助けるのは当たり前だよ!」
「友達…、ティナ、初めて友達って言われちゃった! ティナ達友達だね!」
「うん! 私も初めて!」
ニコニコと笑うリアスも見てふと思い出した。こんか時、リョウ兄は……、
「あれ、リョウ兄は友達じゃなかったの?」
「んっ! そ、それは、えーと、友達と言うか違うと言うか、リョウとは、」
やっぱりしどろもどろになって慌ててる。リョウ兄の気持ちが分かった気がするな!
「冗談だよ。ティナ達、リョウ兄の大切な家族じゃない!」
「そ、そうだね、ははは…」
「そうそう。早く行こうっ!」
ずぶ濡れのままこの池から出ると、周囲は木々に囲まれてまるで閉じ込められてるみたい。そんな木の1本へ体を預けると1度休憩することに決めた。
「そう言えばティナ、」
「ん、何?」
「ティナって何処と無くリョウに似てきたよね?」
「そうかな?」
「うん。性格って云うか私をからかったりしたり…」
「ふふっ、それはリアスが面白いからだと思うよ。リョウ兄も意地悪じゃないからからかってばかりじゃないでしょ?」
「まあ、そうだけど……」
「けど、どうしたの?」
「飴と鞭、リョウの手の中にいるみたいで…、」
「ふふっ、それもリアスが面白いからだと思うよ? それより早く行こうよ!」
「うん! ここを早く抜けなきゃ!」
「うん。上から見た時はそこまで広くなかったし、だ、大丈夫だと、くしゅんっ!」
「どうしたの? 風邪?」
「そうかも。最近ずっと寒いから……」
「そっか。じゃあ今夜は一緒に寝よっか!」
「うん。リアスは温かいしね!」
「ふふ、ティナだって充分温かいじゃない!」
「ありがと。けど熱のせいかも……」
「熱あるの?」
「うん。少しフラッとしちゃって……」
朝と同じ。一瞬目の前がボヤけたと思うとバランスがとれなくなっていつの間にか片膝をついている。
「気を付けなきゃダメだよ。次の町に行けば薬もあると思うし急ごう?」
「そうだね。ティナもまだ我慢できるから…」
「我慢し過ぎちゃダメだよ。疲れちゃったら私が運ぶから、ちゃんと言ってね!」
「うん。まさかティナが先にダウンしちゃうなんて……」
「ふふっ、私は獣人なんだよ。免疫力は強いって!」
「そうなんだ…。くしゅんっ!」
「大丈夫? ホントに休まないと、本格的に体調崩しちゃうよ?」
「うん……」
「今日はこの近くで休んで明日に次の町まで急ごう。とにかく今日はここで休もう!」
「うん。迷惑掛けちゃうね、」
「大丈夫だよ。いつも私が迷惑掛けてるから!」
「ふふっ、ならその言葉に甘えさせてもらうね……」
気を抜いたせいかティナの意識はそのまま真っ暗な闇の中へ墜ちていった。




