第75話
「ようリリス!」
「ん、リョウ。どうして?」
「愛しのリリスに会いにきたんだよ!」
「はいはい、もうその手には乗らないからね~」
「流石に分かってたさ。それより何か手伝うことはあるか?」
「大丈夫だよ。まだ何も集まってないから!」
「そうか? なら俺はここで座ってるとしよう」
「外で何かあったの?」
「まあな。2人に少しちょっかいを掛けた後、そのまま中に入ってきたんだ。面白そうだからな、」
「ふふ、意地悪だね~」
「そういう訳でもないさ。アイツ等の仲を取り持ってるんだからな、」
「本性は?」
「単に初な恋を見物したいから、」
「ふふ、分かってた。けど、私だって一応初めてなんだよ」
「それも分かってたさ。時たま赤くなるとことかな、」
「そう言うリョウは恋してた?」
「俺は……、恋とは言い切れないけどそんな感情を抱いていたな。守りたいって思ってたし、」
「それは私にも?」
「当然!」
「私のこと、守ってくれる?」
「当たり前だ。約束しよう。必ず守りきってみせるってな!」
「私はそう言ってくれるだけで嬉しいよ。けど私だってリョウのこと精一杯守るからね!」
「ふっ、それは頼もしいな」
「私だってやるときはやるよ!」
「俺もその言葉だけで嬉しいよ、」
バサバサ、
大きな翼の音が聞こえ、空から大きな魔物を持ち炎鳥達が降りてくる。ササッと玄関前に出ると炎鳥達の下で待ち構える。
「キュィィィッ!」
「おっと、」
バサリと落とされた魔物を体全体で受け止めると炎鳥達の魔法を解き魔晶を回収した。あと2匹くらいは集まるだろう。
「ねえリョウ、これどうやって捌くの?」
「取り敢えずは関節で落としてぶつ切りだな。そのあとは適当だ。まあ、臓物は全部捨てるけどな、」
「分かった。そう言えば魔晶は?」
「当然取り出すぞ。それは外でやった方がいいと思うから先にここで捌こう、」
「ん、じゃあリョウお願い!」
「あぁ!」
直剣を借り先に中へ戻っとけとリリスに告げるとその直剣を魔物へと向ける。
グサッ!
取り敢えずは胸の所を切り裂き内部の心臓を血管を切り摘出する。いつも面倒だからしないが食べる物には臭みが移るから。
「ん、血が少ないな」
血管を切ったというのに溢れ出す血の量はさほど多くない。けれどまあ、油断は出来ない。ゆっくりと心臓壁に刃を入れ魔晶を取り出す。が、血が吹き出すことはなかった。
「取り敢えず魔晶ゲット。あとは切る!」
本当にあとは簡単。魔晶を傷付けまいと慎重になるが、肉をぶつ切りにするくらいスキルを使えば簡単だ。
「行くぞ、『雷鳴ノ瞬撃』」
ブスッ、ブスッ!
ブスッ、ブスッ!
はっきりとした言葉を使うと自分が気持ち悪くなるので言わないが魔物をある程度の大きさに分断するとそれをまとめてリリスの所へ持っていく。正直、魔晶を取り出すだけと言ったが俺はこれをやらせるのが辛い。死んでるとはいえ気持ちのいいものではないから。
「リョウ、やってくれたの?」
「あぁ。この方がやり易いだろ?」
「うん! ありがと!」
「そう言われると照れる。次のもしてくるし、これはここに置いとくぞ!」
「うん!」
ヤバい。ニッコリと笑うリリスに久し振りにドキリとした。高鳴る心臓を落ち着かせようと深呼吸すると俺は再び外に出る。
「ん、早いな」
外に出ると行儀よく座るムーンウルフが苦戦したのだろう、身体中から血を流し獲物を咥えていた。
「ガルルルルッ!」
「よくやった。ありがとな、」
「ガルゥ!」
ポンポンと頭を撫でると魔法を解除する。最近思うが疑似生命も一時的に生命を作ってるわけで、もしかすると感情を持っているのかもしれない。頭を撫でれば喜ぶし声を掛ければそれに反応する。まあ、今度動物使いの人とかに聞いてみようかな。
「とは言えコイツは知らないな、」
後で確認すればスキルも入ってるんだろうが、コイツは見たことのない魔物だ。
「残念ながら疑似生命の記憶は俺には引き継がれないんだよな……」
グサッ!
と言いながらも筋肉質の胸の真ん中へ刃を差し込むと肋骨の部分を開きさっきと同じように心臓を摘出する。それを同じように刃で切り魔晶を取り出すと、
「『雷鳴ノ瞬撃』!」
これまたさっきと同じように分断すると中へ運びリリスの元へと届ける。
「今度は多いね、」
「まあな。この魔物自体相当な大きさだったからな!」
「そうなんだ。そう考えるとさっきのって小さいのかな?」
「リリス、それは考えすぎだ。これが大きすぎるだけださ」
「そなんだ。てか、今回も切っててくれた?」
「さっきも言ったがこの方が楽だろ?」
「そうだけど、これじゃあリョウが大変じゃない?」
「大丈夫だ。次もやって来るわ!」
「うん!」
流石に2回目は大丈夫かと思ったが間違っていた。俺って慣れれば慣れるほどドキッとしてる気がする…。
「ん、まだか?」
外に出ても何も届いておらず放った魔物達もまだ帰っていない。チラッと2人の方を見ると無言で俯きあっている。正直からかってやりたいが流石に可哀想過ぎるだろう。
「ガウッ!」
ふと見ると黒い体をした狼達。バイトハウンド達が嬉しそうに走ってくる。その後方の数匹達は獲物を咥え走っている。
「よくやったな。偉いぞ、」
俺の元へついた瞬間獲物を離して俺に群がる。正直ウザいが感情があるかもしれないなコイツ等を無下には出来ない。
「ガウッ!」
「よくやったな。お前も、お前もな!」
一通りポンポンと撫でて満足気な表情を浮かべた奴から魔晶に戻していく。恐らくは次作るときはもうこのことは忘れているのだろうがそれでも俺の人としての部分が許さない。
「ふう、捌こう」
全て魔晶に戻し終えるとコイツ等がとってきた獲物を見据える。ソイツは豚の頭に人の体。そして通常より大きいことから察するに…、
「オークリーダー?」
俺が初めて殺り合った強敵だ。まあ、今からすれば難しい相手じゃないがそれでもよくバイトハウンド達が相手できたものだ。
「まあいいか。では頂戴するぞ、」
まあ一連の作業をして魔晶を取り肉を分断すると再びリリスの所へ持っていく。その時、サッと直剣を洗っておいた。後で返すのに血塗れは良くないから。
「リリス持ってきたぞ~」
「はーい、ここに置いといて」
「分かった。もう処理できた物はあるか?」
「こっちのは全部できてるよ!」
「なら俺は串を指してくし、ドンドンやってくれ!」
「分かった~」
「土魔法・細針」
と言うことで山積みになった肉を1つの串につき3枚程刺しながら作っていくこと数十分。途中から捌き終わったリリスも手伝ってくれたのもあるが、出来上がった数なんと数百本。仕留めすぎたとしか言えないな。
「仕留め過ぎちゃったね。これどうする?」
「後で考える。と言うことでまずは先に飯にしよう?」
「分かった。なら私が運んでくよ、」
「リリスにやらせられないさ。俺が持っていくよ、」
「リョウばっかり! 私にも手伝わせて!」
「っ! 分かったよ。半分持ってくれるか?」
「うん!」
持っていた盆の上の肉串を2つに分けると片方をリリスに渡す。俺からすれば問題無い量だが小柄なリリスからすれば重いだろうに…。
「大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫……」
「やっぱり俺がもう少し持つよ。けどリリスもしっかり運んでくれよ?」
「う、うん…」
リリスに渡した半分を俺の方へと乗せると俺は先に玄関を出ていく。リリスが俺に気を使ってくれてるのは分かる。けど、無理だけはしてほしくない。
「持ってきたぞ~」
「リョウさん……」
そこには赤くなりながら俯く2人が。やり過ぎたか?
「2人共、何してるんだ? 早く焼くぞ」
『誰のせいですか!』
声を揃えて怒られた。そして声が揃ったことには顔を赤くした2人は余計に無言になった。
「リョウ、やり過ぎたね?」
「あぁ。まだ早かったな、」
「うん。先に焼いてこう? 復活するのに時間掛かりそうだし、」
「そうだな。今はそっとしておこう、」
けれど焼き始め匂いが漂うと雰囲気も和み2人も徐々に復活した。気まずい朝食なんて最悪だからな。




