第74話
「はぁ、はぁ、はぁぁ…、」
「はぁ、はぁ、流石に疲れました…」
「リリス、少し早いが朝食にしてもいいか?」
「ん。私は大丈夫よ!」
「あぁ。と言うことで2人共、飯にするぞ!」
「は、はい……」
「へ、もうですか!?」
「甘ったれるんじゃない。2人共、鍛練の一環だ。乾いた木をできるだけ集めてきてくれ!」
「はい!」
「……」
やる気の藍夏と見るからにウンザリしてる優司。それでも2人は一緒に木を集めにいった。するとその後ろ姿を見ていたリリスが俺をつついてきた。
「どうした?」
「私達、あんな時期あった?」
「ふっ、無かったかもしれないな。けどリリスが死ぬまで一緒さ」
「分からないじゃない。リョウが先かもよ?」
「………」
ニヒヒと笑うリリスに俺はなんとも複雑な気持ちだ。自分を知ると云うのは時に非情だ。
「どうしたの?」
「ん、いやなんでもない……」
「なんでも無いわけないじゃない。もしかして私、悪いこと言った?」
「いや、そんなわけじゃないが……」
「ん?」
「リリス、俺の黒い翼のこと気にならないか?」
「黒い翼……、あっ! そう言えば獣人じゃないのに!」
「そう。それは俺が四種族どれにも当てはまらないってことだ」
「四種族に、当てはまらない……。ど、どういうことよ。当てはまらないって、それってまるで……」
「魔物、みたいだな。いや、魔人か? スキルを使い知能を有し魔力を操る。まるで魔物だ…」
「そ、そんなことないよ! リョウには人としての心がある! 魔物なんかじゃないよ!」
「ふっ、これが全て魔法かもしれないな……」
「えっ……」
「魔法なら支配も出来る。魔人ならしかねないだろう?」
「い、嫌よ。わ、私、そんな、信じてたのに…」
「ふっ、冗談だ」
「っ!」
「ふふっ、」
「ひ、ヒドイよ!」
「ごめんな。けど、俺が四種族に当てはまらないのは本当だ」
「んっ!」
「翼を持ち光以外の全属性及び精霊魔法を行使し膨大な魔力を有する者。当てはまらないだろ?」
「まあ、そうだけど……」
「俺は元々人間だったんだ。けど、ある出来事で少しやらかしてな。もう人じゃないんだ、」
「そ、そんな、そんなことないよ。もう種族は人間じゃなくても心は人のまんまだよ。私をからかったりしてくるけど、優しくしてくれる。ちゃんとした人じゃない!」
「ふふっ、そう言ってくれる人がいるから人でいられるのかもしれないな」
「リョウ……」
その時、走ってくる足音と共に2人が戻ってくる。藍夏を先頭に優司が集めた木を持つ感じで……
「大丈夫ですか? 大きな声が聞こえたのですが……」
「大丈夫だ。少し白熱してしまってな、」
「そう、ですか。分かりました。私達は再び集めて来ますので!」
「あぁ。頼む、」
サッと集まりサッと動く。できた奴等だと思うよ、あの2人は……。
「ねえリョウ、さっきの話だけど私、リョウが人じゃなくてもいいよ」
「んっ?」
「こう見えて私も曰く付きなんだよ。目立つ胸元に傷があってその他にも傷がいっぱいある。そんなの気持ち悪いでしょ、」
「………」
「けどね、そんな私でも好きって言ってくれる人がいてその人と一緒に旅できるなんて幸せ。人か何かなんて私には関係ないよ、」
「ふっ、ありがとう。素直に礼を言うよ、」
「私こそ! こんな私と一緒にいてくれてありがとう。正直、あの町で住んでたらこんな経験出来なかったよ」
「これで後悔はないか?」
「当たり前よ!」
その一点の曇りもない目が俺にとっち妙に嬉しかった。当たり前よ!こんな一言が俺の中で木霊した。
「………」
「………」
最近、俺とリリスの間でこの恋情に関して無言になることがよくある気がする。調子にのって小っ恥ずかしいことを口走りお互いに恥ずかしくなって黙りこむ。視線の先に仲良く俺の命令をこなす2人を見て沁々と感じてしまう。
「ねえリョウ、私達もあんなことしてみたいね」
「ん?」
「私達っていつも剣を持って何かと打ち合ってるけど、あの子達みたいに平穏な感じで何かしたことなんて無かったよね……」
「ふふっ、今度また2人になった時、ゆっくりと遊びに行こう、」
「デート?」
「そうだな。剣なんて持たず正真正銘ゆっくりとした1日を過ごそう」
「約束だよ!?」
「あぁ、約束だ!」
扉の前の段差へ座り肩を寄せあっていた俺達。いつの間には俺の肩にはリリスがもたれかかり、俺もそんなリリスへ手を回していた。
「なにちゃっかり抱き寄せてんの!」
「リリスこそ何もたれかかってんだよ!」
「ふふふ、」
「ふふっ、」
「面白いね。いつもしてることなのに、」
「今更言うことじゃないのにな、」
「私、それでも嬉しい!」
「俺だって近いって感じられて幸せなんだ!」
これはヤバい。そろそろ自分の言ってきたことのキザ感がヒシヒシと感じられてくる。小っ恥ずかしくなるとはこのことだな。
「優司、私が持つって。前も持ってもらったのに任せられないでしょ!」
「大丈夫大丈夫。藍夏ちゃんはいつも僕を助けてくれるでしょ!」
そんな話し声が聞こえて俺達の2人という感覚は少しずつ無くなり無言空間も消えていく。ナイスタイミングだ!
「2人共、かなり集めたな。大変だったんじゃないか?」
「へへ、僕達も頑張りますよ。それでも藍夏ちゃんの方が多かったけど……」
「持ってくれたのは全部優司だったけどね!」
「へへ、これくらいしなきゃ申し訳ないよ……」
まるで俺達とは立場が逆だな。まあ、言えるものと言えないものがありこれは確実に言えないがな。
「よくやってくれた2人共、あとは休憩してくれて構わない。リリス、疑似生命達に獲物を集めさせるから捌いてくれるか?」
「ん!」
「よし、なら疑似生命達よ。全員で大型の魔物を3匹狩ってきてくれ!」
「キュィィィッ!」
「ガゥゥゥゥッ!」
「ワォォォォン!」
「行けっ!」
十数匹の魔物が一気に散開して森の中へと入っていく。そのあとをポカーンとした表情で眺める2人とそれを見てクスクスと笑うリリスを残して。
「火魔法・灯火」
ボッ!
「きゃっ!」
「っ!」
意識が上の空の2人を呼び戻そうと目の前で炎を灯す。2人共驚いたようだったが優司は意外に驚かずこめかみをピクリと動かしただけ。しかしこちらも意外なことに藍夏は可愛い声が出た。
「2人共、あれは俺の魔法。あまり驚いてたらこれから大変だぞ」
その声は届いているのか否か。優司には届いていても、赤面で俯く藍夏には届いていないだろう。
「串の準備でもするかな。土魔法・細針」
集中の魔力から生成された細い針はそのまた落ちていき地面に刺さる。こんな細かい魔法は魔力操作の練習にも役立つ。
「凄いですね…、」
「まあな。けど、これのスタートラインは俺と同じで前世の違いがないからお前達もすぐに出来るようになるだろう」
「本当ですか!」
やはり藍夏は戦闘技術に関して積極的だ。やはり吸収出来るものはしようという精神らしいな。
「あぁ。魔法は魔力と知識があれば誰でも扱える。俺達転生者は他に比べ反則的だがな、」
「どうしてですか?」
「また今度教えてやるよ。それよりも今は……」
一旦針を作るのを止め俺は席を立つ。そして優司に聞こえないよう藍夏の耳元に来ると、
「優司との仲も考えろよ、」
「っ!」
「俺はリリスを手伝ってくる。お前達2人はゆっくりしているといい、」
意味深な意味を込めた一言。そんな不思議な雰囲気の中、俺は2人を残し俺も恋しいリリスの所へと向かった。




