第73話
「~♪~~♪~♪」
「ねえリョウ、前も聞いたけど私の何がいいの? 見た目なら母さんやメイド達の方が良いと思うけど…」
「ふふっ、分かってないな」
「な、何よ!」
リリスは謙遜するがそんなに醜いわけじゃない。逆に、いや普通に可愛い。現代日本じゃ確実に上位だ。
「容姿で選んだわけじゃないってことだ。リリスの言う通りメイド達もエリスも確かに美形かもしれない。けどな、そんな物二の次なんだよ」
「……。そっか。私、やっぱりついてきてよかったよ」
「ふっ。もう離さないさ、」
「私も離れないよっ!」
静かに抱き寄せ軽く唇を交わす。真っ赤になったリリスを抱き締めてこの気持ちが落ち着くまで待つことにした。
「リョウ、そう言えばあの子達は?」
互いに気持ちも落ち着き、また違う意味でゆっくりしているとふとそんな質問が飛んできた。
「2人でデート中だ。まあ、鍛練って言うオマケ付きだがな」
「ふふ、リョウが仕向けたんだ……」
「まあな。アイツ等2人を見届けてみたいと思ってな、」
「やる気だね~」
「当たり前だ。やるからにはやってやるよ!」
「そっか。今あの子達はどれくらいなの?」
「それが全然。気持ちはあっても全くの進展無しだ」
「うわっ! リョウと真逆じゃない!」
「どういう意味だよ!」
「ふふっ、で、どうやって2人を仕向けたの?」
「んー、昨日の話はしたよな?」
「うん。確か自分の代わりにもう1人を守ってってやつだよね?」
「そうだ。その時、断ったんだけど鍛えてやるって約束したんだよ」
「そう言えばそんなこと言ってたよね~」
「そう。で、取り敢えず朝、ここを5周走ってこいって言ったんだよ」
「酷くない?」
「大丈夫だろ?」
「女の子だよ?」
「そうかな?」
「うん!」
「まあいいか。明日から考えるよ、」
「うんうん。それがいいよ。で、もう1人の方は?」
「朝から似たようなことを言ってきたから全く同じ方法で走らせた」
「ヒドい……」
「その言葉を放つリリスもヒドい!」
「ふふっ、」
「ふっ、」
「面白いね!」
「そうだな。幸せな気分だ…」
「私も!」
「2人で少しの間になるが歩かないか?」
「いいよ! 動いてなきゃ体も鈍るもんね!」
と言うことで俺達2人は蝋燭を消し玄関を出た。既に着替えているリリスと魔法でパッと着替えられる俺。準備に掛かる時間なんてゼロに等しい。
「森とは違う静けさだよな~」
「確かに! 不安な静けさじゃなくて平穏って感じの静けさだもんね!」
「あぁ。ホント、最高に気持ちいい」
「うん。行こっか!」
「あぁ。アイツ等が5周終わるまでに帰ってこなくちゃだからな!」
「うん!」
人が消え廃墟のようになってしまった村。しかし村人が植えたであろう草花が乾いた風の中で揺れている。薄い氷の張った池も光を反射するガラスのようだ。
「………」
「………」
言葉が無くてもそれぞれの気持ちが分かる。寒く静かな風は俺達を取り巻く。
「リリス、俺に、ついてきてくれてありがとな」
「私こそ、リョウと一緒にこれて嬉しい。ありがとう」
「こんな時だから言える。リリス、」
「リョウ、私から言わせて……」
「ん、」
「大好きだよリョウ。これからもよろしくね」
「当たり前だ。俺こそよろしくな!」
「お互い様だね、」
「ふっ、そろそろ戻るか?」
「だね。もう端まで歩いてきちゃったよ、」
「ん、ホントだ。急がなければな、」
「うん、走ろっか」
「あぁ!」
この時俺達は勘違いしていた。俺もリリスも武人でありここ数日森を歩き回った猛者であるということ。そして走れば数分で端から端までついてしまうということを。
「あれ、まだついてない?」
「みたいだな。早すぎたか……」
「だね……。そうだっ! その間、私に教えてくれない?」
「ん、いきなりどうしたんだ?」
「いきなり、じゃないよ。こないだ約束したでしょ! 次の町についたら教えてくれるって!」
「あー、そう言えば。分かった。なら剣か魔法かどっちにする?」
「なら剣でっ!」
「分かった。なら剣を持て」
「はい!」
「あっ、先に言っておくが俺のは独学で魔力も合わせるから普通の剣術とは違うぞ、」
「それくらいどうってことないよ。形より能力の方が大事だよ!」
「ふっ、そう言うと思ったよ」
「分かってるじゃない!」
「まずは剣の構え方だが、特に何もしなくていい」
「えっ、どういうことよ?」
「えーと…、理由は始め剣で斬りかからないからだ。もっと分かりやすく言うとカウンター主体になるからだ」
「カウンター? じゃあ剣は使わないの?」
「使わないってわけじゃない。けど、俺自身刀主体だから剣で教えられることは少ない」
「そうなんだ…。そう言えばリョウが剣使ってるとこなんて見たこと無いもんね」
「まあな。と言うことで続けるが、刀身には魔力を纏わせる。これは基本だぞ、」
「へっ、どうして?」
「魔法は魔力でなければ斬れないから、」
「魔法を、斬る?」
「そう。もしかして魔法は斬らないのか?」
「斬れるものだなんて思わなかったよ、」
「そっか。なら試してみよう。リリス、適当に魔法を、」
「えっ、いいの? じゃあ、
■▧■▧■▧■▧、火魔法・バーンライン」
「はっ!」
ラフに剣を片手で持つと迫り来る炎へ斬り下ろす。魔力を纏う剣は炎を真っ二つに切り裂き俺の左右へとその欠片を打ち付けた。
「す、凄い…」
「魔力の勝敗はその密度に比例する。だから強力で大きな魔法でも1ヶ所の密度が低ければ結界や魔力を纏わすことで容易く防げる。つまり、高密度の魔力行使が大事だってことだ。ここまでは分かるか?」
「えーと…、結局は魔力を集めちゃえば良いってこと?」
「そう言うことだ。だから課題は、」
「………」
「魔力行使をしながらの戦闘だ!」
「おぉぉ!」
「と言うことで模擬戦だ!」
「えー!」
「行くぞ!」
「ちょ、ちょっと待って!」
「ん?」
「急過ぎだよ。少し練習させて!」
「んー、まあいいか! ならゆっくりと教えていってやるよ、」
「ん、ありがと」
「よし、じゃあ始めるぞ。取り敢えず魔法を放つから切り裂いてみてくれ!」
「うん!」
「よし、じゃあ始めるぞ。火魔法・炎球」
手中に少しの魔力だけで形成した炎球を作りリリスへ向けて見える程度のスピードで放つ。練習だからこんな感じだが戦闘ならもっと密度を上げスピードも上げている。
「はっ!」
ボンッ!
刃に当たった炎球はその場で爆発して剣ごとリリスを吹き飛ばした。まあそれもその筈。集中の甘い魔力は剣には纏わりついたものの、拡散し密度が上がっていない。それでは斬ると云うよりも叩くのと同じだ。
「まあ、練習だな」
「うん……」
「火魔法・炎球」
「はっ!」
バンッ!
「続けるぞ、」
「ドンドンと!」
「火魔法・炎球」
「はっ!」
バンッ!
と言うことでまあひたすらに炎球を受け続けりリスはボロボロになるまで続けた。
「そろそろ止めておけ。傷がまた開くぞ、」
「んぐっ…、」
「ほら、アイツ等も帰ってきた。ボロボロの姿は見せられないだろ?」
「ん…」
「精霊魔法・蘇生」
「痛みが和らいだよ!」
「それも気休め程度だ。早く着替えてこい『等価錬成』!」
今のリリスの服装そのままを錬成すると強引に渡して室内へと急ぐ。
「じゃあ着替えてくるから!」
「あぁ。俺は部屋の前で待ってるからな」
「うん!」
リリスが部屋に入ると予想よりも早く扉が開いてリリスが出てくる。
「お待たせ、行こ!」
「あぁ。行こう!」
その頃には見える所まで2人は戻ってきていて俺達は急いだおかげもありゆっくりと待つことができた。




