第69話
「ぅぅ…ぅ……、」
「男子なのに泣いてちゃダメよ! 私もついてるんだから!」
リリスの案内する方へ行くと泣きべそをかく男の子とそれを少々手荒な方法で元気づけようとする女の子がいる。
「リリス、俺、どうすればいいか分からないんだが……」
「私に聞く!?」
「だよな~」
そうこう話しているとなんと相手側から近付いてくる。意図は分からないが近付いてきたのは女の子の方だ。
「君は‥」
「ありがとうございました!」
俺の前まで来ると礼を言いながらスッと頭を深く下げる。にも関わらず男の子の方は女の子の背に隠れたまま。
「君達の名前はなんて言うんだ?」
「私は藍夏です。こっちの男子は優司です」
「ふっ、」
「どうしたんですか?」
「どうしたのよ?」
「リリス、後で教えてやるよ。藍夏と言ったな、お前は偽名を使った方がいいぞ」
「?」
「それとそこの優司って奴、守ってやれよ」
「?」
「気を付けろよ」
俺は久し振りの出会いに感謝し先を急いだ。また運が良ければ会うだろう。その時までに変わっていることを祈る。
「ねえ、リョウ、さっきのってどういう意味?」
「あの2人は転生者だ。2の人言葉、分からない所があっただろ? それに俺達転生者はこの世界の人と比べて名前が何処と無く違うんだよ。遼、紫竜、藍夏、優司。全て文字に直すと漢字っていう特殊な名前になるんだ。だからそんな人は転生者だってことだ!」
「じゃあもしかしてあの2人ってリョウの知り合い?」
「いや、全然知らない。恐らくは故郷も何もかも違う。けどまあ、あの言語を喋る時点でこの世界の人じゃないんだよ、」
「へー、じゃあリョウだけしかあの子達の言ってることは分からないんだ?」
「まあ、そうだな。けどまあ、すぐに慣れるだろう。アイツ等も、」
2人の転生者と離れて数分、木製のボロボロの門が見えてきた。そしてその扉は開けっ放しだ。
「ここが町?」
「いや、町と言うよりも村だな。どうする? ここに泊まるか?」
「うん。この調子だとまだまだ掛かりそうだから……」
「そうだな。離れるなよ、」
知らない土地はそもそも疑うべきだ。治安も人々の性格もよく分からない。けどそんなことは関係無い。俺のすることは自分の目的を満たしリリスを守ること。
「………」
門を潜ってもなんの物音さえ聞こえない。本当に住んでいるのか疑いたくなってくる。
「ねえリョウ、なんだか怖いよ……」
「不気味だな。何があったんだ」
「リョウ、ここ止めない?」
「いや、動けないだろう。今日1日だけでもここに泊まって明日発とう」
「そうだね。じゃあ早く見付けちゃおう。見られてるみたいで気持ち悪いよ…」
適当に村の中を見回るとまだ明かりのある家を見つけた。試しにコンコンと扉を叩くが反応は無い。物音もない静寂はとてつもなく不気味だ。
「いないのか?」
「ねえリョウ~」
いつの間にかリリスの目は潤んで今にも泣き出しそう。ヤバい…、可愛い。
「もう泣くなって。俺がついてるだろ?」
「うん……」
向こうの世界じゃあざといって言われても仕方ないような仕草だがリリスの場合、素だから可愛い。目に曇りがないから…。
「仕方ない。家を1つ借りよう。ここに人はいないだろうからな!」
「うん……」
ノックした所を選ぶのが何処と無く嫌だったからその隣の家に入る。中は真っ直ぐとした廊下が続き、左手に階段とトイレ。右側にキッチンがある。また、真っ直ぐ行った部屋にはひろめの部屋があり広間だな。
「2階はどうなってんだろな、」
ギィィィ、
板が軋む中階段をのぼると、目の前には寝室が。そして右を見れば広いベランダがある。普通に豪華な感じがする。ボロくなければ。
「取り敢えず1日だけだしな、」
これを数日過ごすなら修繕してもいいが1日だけならする必要は無いだろう。ボロい階段だけはのぼりたくはないがな。
「ねぇぇ……」
「ん?」
「リョウお願い。手を繋いで、」
「はぁ。剣は持つのにこんなのは怖いんだな」
「仕方ないじゃなぃ。こんな怖いの分かんないもん」
「分かったって。取り敢えず降りよう? 下には広い所もあったし2人でそこで寝ればいいだろ?」
「ふ、2人でっ!?」
「あぁ。怖いんだろ?」
「そうだけど……」
「取り敢えず後だ。早く降りよう、」
ギィィィ、
帰りも軋む階段を降り1階へ戻ってくる。何処と無くこの家の中は疲れる。
「ねえリョウ、1度だけ出ない? 怖すぎだよぉ…」
「分かったって。1度出よう」
自分も疲れていたのもあり俺達は逃げるように扉から出る。すると人影が2つ見える。
「ね、ねえ、リョウ、あ、あれ何!?」
「さ、さあ。生き物であることを祈るよ、」
まだここじゃ良く分からないが人影は門を潜り村の中を歩く。心根しか俺達の方へ来てる気がする。
「あっ…、」
「アイツ等か?」
「だね。あの2人じゃない?」
1人が先頭を歩きその後ろを隠れるようにもう1人が歩く。そしてどちらも黒髪だ。
「先程はありがとうございました」
「それはいいんだが、ここは偶然来たのか?」
「いえ、貴殿方に少しの間で構いません。お供してもよろしいでしょうか?」
「理由を聞いても?」
「はい。知っての通り私達の戦闘能力は皆無です。是非貴殿方に御教授願いたいのです!」
「ふっ、いいだろう。少しの間だけだぞ、」
「ありがとうございます、」
2人を2階へ案内して寝室にいるように告げ、呼ぶので降りてくるように言い付ける。そして俺とリリスは広間に、
「いいのリョウ? 転生者ってことは何かもっているんでしょ?」
「まあな。恐らくは化け物級の固有スキルを持ってるだろう」
「危なくないの?」
「ふふっ、もし危なければ見せてやるよ。そんな事態でも抑え込めるスキルをな、」
「見たいけど怖い…」
「まあ、楽しみにしてるといい」
そのスキルとは『奪者ノ頂点』これを使えば問答無用でスキルを奪える。練度が上がれば体力や魔力、魂さえも奪えるらしいが……。まあ、殺せば全て得られるがな。
「2人共、降りてこーい」
滅茶苦茶大雑把な扱いだ。けどまあ、これくらいでいい。遠慮なんてしてられない。
「はい。なんでしょう?」
「取り敢えずは自己紹介だ。まずはリリス、」
「私はリリス。魔族です」
「次は藍夏、お前だ」
「はい。私は藍夏です。優司と旅をしています。よろしくお願いします」
「ぼ、僕は優司、です。藍夏ちゃんと旅をしてます」
「分かった。じゃあ最後は俺だな。俺はリョウ。お前達と同じだ」
「?」
「?」
「白狩遼って言ったら分かるか?」
「!」
「!」
「分かってくれたようだな。と言うことでまあ、ある程度のことは答えられる。あと俺に敬語は必要無い。普通に接してくれて構わない」
「はい。御願いします」
「リョウさん…、御願い、します」
「畏まりすぎだ。取り敢えず2人共、部屋は同じ場所を使ってくれ。それしか空いてないからな。あと、俺とリリスは基本的にここにいるからいつでも来てくれ。あと、リリスには日本語の一部は通じないからな。所謂英語みたいなものだ!」
「ではどうすれば?」
「まあ、俺を呼ぶように言ってくれればいい。あとは慣れてくれ!」
ほぼ丸投げな感じで話したがそれ以上の言葉も対応もない。と言うことで俺は出来る限りここにいるが居なければ呼んでくれ的なノリで話を終わらせた。




