第68話
「美味しかったね」
「そうだな~。あっ、」
「どうしたの?」
「リリス、そろそろ傷は疼かないか?」
「そういえば……」
「薬だ。せめて3日は飲まなきゃな、」
「どうして3日?」
「あの薬の効力だ。せめて3日くらい飲まなきゃ気休め程度でしかないからな、」
「そうなんだ。じゃあ、」
もう慣れたように口へ含むと水で飲み込む。意外になんでも出来るんだよな。
「さあ、片付けよう。俺は今日も見張りを‥」
「ダメ! 2日は寝てないでしょ!」
「………」
「だからダメ。私が見張りするから今日くらいはちゃんと寝てよ!」
「ダメだ。怪我人にそんなことさせられないって!」
「でも……」
「じゃあ俺もリリスも寝たらいいだろ? ここは壁で覆われてるんだ。魔法を使っていれば危なくもないだろ?」
「……それならいいよ、」
「なら決まりだな。毛布はリリスが使うといい。俺は焚き火にでもあたるから、」
「そんな! 風邪引いちゃうよ」
「大丈夫だ。そんな柔じゃないって、」
「ダメ!」
「なら‥」
「ふ、2人で使うのは、嫌?」
「っ!」
「い、嫌ならいいんだよ?」
「いや、じゃなくて、リリスは嫌じゃないのか?」
「わ、私は別に…」
「じゃ、じゃあ俺は大丈夫だ!」
「私も。な、なら一緒に使う?」
「そうする、か?」
「じゃあそうしよ!」
最後はリリスが断言するような形で終わり俺達2人は一緒に寝ることになった。自分が寝てられる自身無い……。
「もう寝るか?」
「うん。明日も早く起きなきゃいけないし、」
と言うことで毛布の中。警備は5匹程の疑似生命に任せたので大丈夫。だが、俺がいま1番気になるのは……、
「…………」
「…………」
背中合わせで毛布を被っているがなんとも気まずい。俺にこんな時どうしろと? 恋愛経験ゼロの俺に!
「…………」
「…………」
小さな背中が俺の背中に触れてる。お互い意識してるのかピクリとも動かず嫌な静寂だけが流れる。
「なあ、リリス?」
「何?」
「野暮なことを聞くけど、どうして俺についてきたんだ?」
「いきなり何よ!?」
「普通は俺を見れば避けるのが普通だと思うぞ。俺なんて危険因子以外の何者でもないしな…、」
「ふふーん、リョウは自分のことそんな風に思ってるんだ」
「どういうことだ?」
「私から見るとね、リョウはとっても強くて優しい良い人だと思うよ。それに私はそんなリョウに惹かれちゃったしね、」
「………そうか」
「私に言わせて終わり?」
「っ!」
「リョウは私の何が好き? こんな傷だらけの何処がいいの?」
「ふっ、なんだろうな。けどリリスのそのひた向きな姿勢かな、」
「?」
「分からなくてもいいさ。俺はリリスのその傷に関してはなんともない。努力の証とも云えるしな!」
「やっぱり優しいね」
「リリスだけだ、」
「っ!」
一瞬驚いたように動いたのを胸中笑いながら俺は目を閉じた。長い間寝ていなかったせいか俺の意識はすぐに闇の中へと誘われた。
「ふわぁぁぁ。おはよう、」
体を起こすと既に陽もしっかり出て朝の陽気が森を包んでいた。リリスも後ろで寝息をたてていて、なんと穏やかなことだろう。
「まだ寝てるのか…」
毛布からスッと抜け出して焚き火に火を灯す。真っ赤な炎が再び光を放つ。
「んーーー、おはよう…」
「おはよう。ゆっくり眠れたか?」
俺が起きてことで起こしてしまったのかもしれない。目を擦りながら毛布を出ると体を伸ばし欠伸をした。
「眠れたよ。寝る前のリョウの一言がずっと心に残ってるけどね!」
「リリスだけってことか?」
「そうだよ! 寝る前に言う言葉じゃないでしょ!」
「そうかな。期待したか?」
「な、なによ!?」
「ふっ、朝食にするぞ。早く座れよ、」
「ま、まだ話は終わってないでしょ!」
「俺は終わったぞ、」
昨日の肉の余りを焚き火にかざし焼いていく。朝にしては思いからもう1品。
「『等価錬成』」
魔力では無く焼いて火の通った魔物肉を火の通った豚肉に変える。そしてそれを再び焚き火にかざし油を落とす。そしてその上へ深底フライパンを置いて熱していく。
「水魔法・清流水」
火にかけたフライパンに魔力で作った水を注ぎその中へ野菜を入れて軽く茹でていく。
「えーと、醤油かな」
その中の水を捨てて油を落とした豚肉を投入。それを軽く醤油で炒めながら混ぜるとそのフライパンごと石まで運ぶ。皿なんて洗うのが面倒なので使わない。まあ、こんな大雑把料理の御詫びにスイーツも用意してるし大丈夫だろう!
「ん、何か作ったの?」
「あぁ。朝から脂っこいのはキツいかなって思ってな!」
「そうだったんだ。朝からありがと、」
「まあ俺も食べるんだし、礼なんて必要ないよ。それよりも早く済ましてしまおう。今日のちには着きたいからな!」
「分かった! なら今日はテキパキいかなきゃ!」
「あぁ。けど、無理するなよ」
「分かってるよ!」
本当に分かっているのか……。意気込むリリスを少し心配に思いながら朝を済ませた。
「ふ~♪ふふ~♪ふ~♪」
「やけに上機嫌だな。どうしたんだ?」
「なんでもないよ!」
「教えてくれたっていいじゃないか?」
「なんでもないって♪」
ニコニコと笑いながら俺の手をとって横並びに歩く。いつもより何処か積極的でいつもからかう方の俺が恥ずかしくなってくる。
「もうっ、止めろよ。恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしいの?」
「………」
「いいじゃない♪」
「仕方ないなあ!」
俺は密かに小さな魔晶を地面に落とし魔力で命令を伝える。疑似生命はそれを聞くと即座にその場を離れ命令をこなしていった。
「ふ~ふふ~♪ふ~~♪」
「やっぱり機嫌いいな。朝から俺、何かしたか?」
「したよ。意外と嬉しかったんだから!」
全く検討がつかない、と言ったら嘘になるが分からない。まあ、もう少ししたら町に着く。その後でいいだろう。
「リリス、少し静かにしろよ!」
俺は近くの木に体を隠し木との間にリリスを隠す。そして数十秒後、俺達のいた場所には蛮刀を持つ男達が数本の鎖を手に歩いてくる。その鎖の先には子供が2人。と言っても俺達より2歳程下なだけだと思う。
「ねえ、リョウ、もしかして?」
「しっ、静にしてろ。一瞬で仕留めてくる。リリスは子供達を守ってくれ」
「分かった。けど、何も私を抑える必要あった?」
「不意討ちの方が仕留めやすいだろう。それに、もしリリスに指一本でも触れたら惨殺じゃ済まなさそうだし…」
「ふふ、そこまで思ってくれてるんだ♪」
「当たり前だ。行くぞ!」
シュッ!
一先ず男達の前へ躍り出ると大太刀を一太刀浴びせる。そして次に鎖を持つ男を斬り殺すとリリスに合図を出した。
「お前誰だ! 俺達の商品になにしやがる!」
「ふっ、戯れ言が! 奴隷にもなっていない子供が商品だと! ふざけるな!」
ドンッ!
叫んだ男の鳩尾へ拳を1発。そして怯んだ隙に顎に1発。そして最後に首を持ち叩き付ける。あとは残り2人!
「『雷鳴ノ瞬撃』」
グサッ!グサッ!
手刀が雷鳴と同じスピードで体を襲い深く深く突き刺さる。抵抗の隙も与えなかった攻撃は綺麗に男達の腹に風穴を開けた。
「終わったぞリリス。子供達は?」
「2人共、向こうで待たせてるよ。流石にこれを見せられないでしょ?」
血塗れな現場。確かに子供には見せるべきじゃない惨状だな。これからは自重しようとその時決めた。




