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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
二人の旅路
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第64話

「…………」

「まだ起きてないか、」

毛布を折り曲げて敷いて、その上で寝かしまたその上から毛布を着せる。形的には布団のようになっている。

「…………」

「心配させやがって、起きたら絶対手放さないからな!」

魔晶に刻んだ「発熱」を発動させ鍋に入れるとそのまま放置する。俺もその場へ腰を下ろし少し目を閉じる。そもそも昨日は寝てないからな……。


「んっ……」

目を閉じていたとはいえ寝てしまっていた。そろそろ陽も傾き夕方近くなっていた。

「…………」

「大丈夫か?」

額には汗が滲み苦しそう。まあ傷は深く抉られていて痛いのはまあ当たり前だよな。そういう時は……、

「『等価錬成』」

現代技術の結晶、薬剤だ。俺のような素人に薬の選別は出来ないが、このような炎症を切り傷の場合は鎮痛剤でいい。これは切り傷の多い俺が医者に直接聞いた答えだった。

「本当は今すぐにでも使ってやりたいが、飯の後でしかダメなんだ、」

向こうの世界で数針を縫う大怪我をした時もこの鎮痛剤で乗り越えた。自分が世話になった薬の中でも特に使用頻度が高かった薬だからよく知っている。

「早く起きてくれよ、」

感情的に早く目を覚ましてほしいというのもあるが、血で濡れた服のまま、それも戦闘での傷だから傷口から感染症を引き起こしてしまう可能性が高い。それも含め早く清潔にしなければならないのだ。

「はぁぁ。時間潰しだな、」

こう言っては悪いがすることがない。嫌でも今夜は起きてるんだから急いですることもない。やることと言えば集めまくった魔晶に疑似生命を刻むことくらい。なんせもう数えきれない程貯まっているからな。

「やるかっ!」

アイテムボックスから大量の魔晶を全て取り出すとその量に驚愕すると共にゾッとする。しかしやらなければならないことには変わり無い。俺はピシャリと自分の頬を叩き「疑似生命刻印」をひたすらかけ続けた。


「火魔法・疑似生命刻印」

「水魔法・疑似生命刻印」

「風魔法・疑似生命刻印」

「土魔法・疑似生命刻印」

「炎魔法・疑似生命刻印」

「氷魔法・疑似生命刻印」

「雷魔法・疑似生命刻印」

ひたすら様々な属性の「疑似生命刻印」を行い様々な属性の疑似生命達を作っていく。そろそろ半分になるが途方もない量に俺の心は折れかけていた。

「ん……、」

毛布がガサゴソと動いた気配がさて振り返る。するとまだ焦点ははっきりしていないが確かに目を開けていた。

「大丈夫か?」

「…、リョウ…?」

「そうだ。本当に無茶するよな。俺が守っててやるからもう少し寝てろ、」

「うん……、」

安心した表情で再び寝始める。俺もすることはまだまだあり休めるとは言えないが、リリスが目を覚ましてくれたおかげで一安心だ。

「今日はこれくらいにしよう、」

魔晶も半分は片付いた。それに一気に終わらせては暇潰しも無くなってしまうしな。俺は魔晶を全てアイテムボックスへ直し綺麗な状態に戻す。なんせ今室内にあるのはスープ状態のだしの素が入った鍋とリリスを寝かせる毛布だけだから。

「マジで作ろうかな、」

リリスが動けないとなると少しはここにいる必要か出てくる。それに怪我をしているし出来るだけ良い状態で安静にしてほしい。その為に必要な物を…、

「『等価錬成』」

頼みの綱の『等価錬成』だ。本当にこれは便利。まるで日本の自分の家かのような物を作り出すことができる。畳に机に布団。部屋の中は15畳程で意外に畳をしく量が多い。しかしそれでも強化されている身体能力を使えば容易いことだった。

「次々っ!」

大きめの和風机を部屋の真ん中へ置きその上へスープの鍋を乗せる。そして机の少し離れた所にに布団を敷くとリリスをそこへ寝かせる。毛布よりも布団の方がいいだろう。

「ふぅ。これで一段落、」

室内を見回すと広い部屋に机がポツンとあるだけ。まあ、欲しいものがあれば足すだけだな!

「取り敢えずここは取っ払おう、」

入り口の所だけ、畳を外し玄関のようにする。そしてその玄関には…、

「雷魔法・痺壁刻印」

魔晶に刻印した魔法を発動させその場へ埋める。こうすれば出入りする時以外は危険なことはない。因みに俺が魔晶を使い長期持続型の魔法を使えるのは周囲吸収の魔法を同時使用しているからだ。

「あとは座布団かな、『等価錬成』」

魔力が集まると共に座布団を作り出すと机の周囲へ置く。取り敢えず形からだな。まあ、今すぐ使うけど…。

「よいしょ、」

座布団に座ると懐かしい感触で落ち着く。壁は岩だがその他は日本風に仕上げたので見なければ本当に帰ってきた気分だ。

「あっ!」

落ち着いている暇はない。肉を焼きっぱなしにして入ってきているのだ。もう真っ黒な可能性の方が高い!

「あちゃぁ……」

急いで穴を出て見てみるとたき火の周囲には夥しい足跡がついていて当然肉も持っていかれていた。なんというか、肉は焦げてないがそもそも取られてしまった。

「はぁ、仕方ないな……」

肉はついでに焼いていただけ。欲しくて焼いたというよりもついでって感じだからまあ、諦めもつく。

「使うかな……、」

本当は自力でおかずくらい作りたかったが喰われていたんだ、仕方ない。出鼻をくじかれたような変な気分になった俺は焚き火を砂で消すと穴の中へ戻っていった。その時、そろそろ起きるだろうと、うどんとネギを鍋に入れた。中では魔晶が熱を発しているのでいい具合になるだろう。

「ん……ぃ…」

「リリス? 起きたのか?」

「リョ、リョウ?」

「そうだ。あまり無茶はするなよ、」

「うん。ごめんね、」

「痛いだろ? まだ動くな、」

「……、」

傷はさっき受けたばかりでまだ痛むだろう。立ち上がろうとするリリスを止めて、その近くへ腰を下ろす。

「ホント、何があったんだ? リリスがこんな大怪我を負うなんて、」

「へへへ、油断しちゃった、」

「ホント、気を付けろよ」

「うん、」

掠れた笑いを浮かべ胸の傷をなぞる。今回ばかりは応えたようでその顔は悲しそうだ。しかしその目には今にも飛び出しそうな強い勢いがある。

「…………」

「どうしたの?」

「いいや。リリスが落ち着くまで、こうしていようかなって」

「…………」

体を寝かせ横に寝ているリリスの顔を眺める。傷もあるが綺麗だと思う。

「私なんか見てて面白い?」

「どうだろうな、」

「もう! ぃって!」

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫。やっぱりここの傷が痛くて……」

やはり一番大きな胸の傷が痛むようだ。傷も深いようだったので包帯を巻いてる間も血は滲んでいた。

「リリス、ちょっといいか?」

「ん? いいよ、どうしたの?」

「回復だ。精霊魔法・蘇生」

手中から漂う真っ白の魔力の粒子が包帯を通り抜け傷口へと集う。一番大きな傷のある胸元には一番粒子が集まる。

「痛みが少し和らいだ?」

「精霊魔法だ。まだまだ微力だが尽力させてもらうよ、」

「へへ、ありがと!」

「本当に心配したんだからな。見付けた時には冷や汗をかいたぞ、」

「ゴメンね。私、心配かけてばかり…、」

「そうだな。ならもっと用心しろ、」

「そうだね。それはそうと、リョウが治療してくれたの?」

「あぁ。目を背けていたから心配ないぞ、」

「っ!」

とは言え目にはいるものは入る。それくらいは分かってほしい。けどそれを聞いたリリスの顔は悪そうに微笑をうかべる。

「えー、本当かなあ?」

「ふっ、見惚れてたよ、」

「っ!」

その真っ赤になって驚いた顔を見れただけで俺は満足だ!

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