第54話
リアス達視点です。
綺麗な月明かりが道を照らす。血に濡れた刃はこの道に血の跡を残していく。
「リアス…、ホントにいいの?」
「うん。リョウがこっちに向かったんなら私達も行くだけだよ!」
「そうだね。けど、まずは残党討伐かな!」
「だね。幸い夜月だし負けることはないよ!」
「だね!」
北、と聞いて歩き始めるはいいものの、まずは町を囲む森林を突破しなくちゃならない。そしてそこには戦争での残党も沢山いる。
「このガキ!」
「んっ!」
グサッ!
負けてイライラしているのかもしれないけど、私達に当たり事は間違っていると思う。
「ふふ。夜は危ないんですよ。精霊魔法・毒薔薇」
さっきまで普通の子だったのに、魔法を使った瞬間、羨ましい程妖艶な雰囲気に変わる。何処か怖い、けど可愛い。
「な、なんだ! あ、ぁ、熱い……」
「ちょ、な、何したの!?」
「毒薔薇だよ。森林の浅い所に自生していて、色々な毒を持つことから解毒が難しいんだ!」
「凄い、そんなこと何処で覚えたの?」
「スキルの影響かな。スキルを知ったおかげで自然にスキルに関する知識がある程度知れるよね。リアスだってあったでしょ?」
確かに。私も『獣化』や『夜月妖』の使い方や効果なんて教えてもらってないし知らなかった。けど、リョウに教えてもらって使い方も分かるようになった。
「確かに。じゃあ、スキルって持つと知識も持つってこと?」
「そうだね。ティナ達の経験だけだと、」
「そっか。だからスキルを多く持つ人は賢いんだね!」
「そうかもね!
■▧■▧■▧■▧、土魔法・破裂礫。
魔法だって十個程は覚えたし!」
「そうなんだ。そう言えばリョウが無詠唱について何か言ってたけど教えてもらったの?」
「少しだけ。だから詠唱も短くって済むんだ!」
「けどリョウは詠唱してなかったよ?」
「そこはティナの未熟さだよ。リョウの無詠唱は難しいんだ! けど原理は教えてくれたから!」
「そっか。私も魔法が使えたらなぁ……」
「まあ、魔法については仕方ないよ。リョウ兄ならどうにかしてくれるかもだけど……」
「だね。早く会いたいなぁ、」
私達、普通に話してるけど周囲には手負いの兵士達が囲んでいる。このまま通してくれたら楽なんだけど、無理だろうね。
「おい! 舐めてんじゃねえぞ!」
「うるさいなあ。ティナ、魔法でドカーンって出来る?」
「出来るよ。けど、少し溜めさせて!」
「分かった! その間守るね!」
「うん!」
ヒュッ!
やっぱり剣だけじゃない。けれど手負いでしかも雑兵ならば負けることはないと思う。
「あれ? 弓矢なんて通じると思うの?」
前、リョウがティナにしたみたいに掴んだ矢を思いっきり投げ付ける。
「ぐっ……、」
本当は眉間を狙ったんだけど当たったのは胸元。鎧が壊れていたことから確かに刺さったけど殺せはしなかった。
「リアス、もう大丈夫だよ!」
「早いね、」
「まあね。いくよ! 精霊魔法・葉刃乱射」
「す、凄い……」
揺れる木々が葉っぱを散らし周囲の兵達に切り傷を加えていく。ダメージは大きい。流血した兵達の足元は瞬く間に血に染まる。
「このまま放置する? それとも殺す?」
「意外と残酷だね。けど私は殺すよ!」
「じゃあティナも!」
グサッ!
私の槍が、ティナの鏃が、それぞれ刺さった兵士は血の吐いて倒れた。
「お腹減った~~!」
「何か捕りに行く?」
「そうだねー!」
現れた残党を全滅させて少し歩くと無性にお腹が減った。と言うことで急遽焚き火を作って腰を下ろす。けど食べ物の無い焚き火は何処か寂しく感じちゃう。
「じゃあ手分けして探そ。ティナは向こうに行くから、リアスは向こうね! 適当な時間になったらここ集合!」
「分かった! 私、絶対捕まえるからね!」
「望むところだよ!」
お互いが準備を終えた瞬間、私は黄金の槍を片手に野営地を飛び出す。
「んー、見付かんないな……」
勇んで飛び出したけど周囲に魔物なんて見当たらない。欲しいときって意外と見付からないものだよね。
「…………」
仕方ないや。ティナには悪いけど少し反則を使わせてもらうよ!
「『獣化』」
確かに『獣化』を使えば戦闘能力は格段に上げられる。けど考えてみて、戦闘能力が上がるってことは他の能力も上がるってこと。つまり、嗅覚、聴覚、視角、全て底上げされるってこと。
「見ーつけた!」
ここから見て前方。草の擦れる音がする。微かな呼吸も聞き取れる!
「やっ!」
「ブヒ!」
グサッ!
槍が魔物の頭を砕く。あまりに美味しそうな豚ちゃん!
「やった!」
美味しそうじゃない!
丸々と大きな体。引き締まった四股。
「もっといないかなぁ?」
殺した魔物の匂いを頼りに辺りを探す。けれど生憎この周囲にはこれと同じ魔物はいなかった。
「お腹も減ったし戻ろ……」
お腹減って死にそう。いっそのことこのまま食べちゃおうかな?
「お腹減ったー!」
槍を左手に、豚型魔物を右手に抱え戻ってくると既にお肉の美味しそうな匂いがする!
「お肉!」
焚き火の灯りを目標に私は木々を飛び出した。
「リアス!」
「ティナ?」
「取り敢えずリアス、座ろ?」
「うん…、」
「で、どうしたの?」
「えーと、お肉の匂いがしたから……」
「何してるのよ! 罠だったら確実に捕まってたよ!」
「だ、け、ど~~」
「だけどじゃないよ! リョウ兄だって同じこと言うよ!」
「っ!」
「ね、リョウ兄に早く会う為にもしっかりしなきゃ!」
「うん……。」
「これあげるから元気だして。そのお肉も調理するから!」
「うん!」
美味しそう。綺麗な真っ直ぐな棒にお肉が刺さって焼かれてる。少しの焦げ目がまた美味しそう!
「どう?」
「美味しいー!」
「良かった。これも焼くね!」
ニッコリと笑みを浮かべたティナは私の捕ってきた魔物も巧みな手捌きで処理していく。これも魔法の影響なのかな?
「ティナ、その捌き方って誰かに教えてもらったの?」
「基本的にはリョウ兄かな。気になるって言ったら教えてくれたよ。あとは精霊魔法の知識にもあったしね!」
「そうなんだ……」
意外とリョウの言ったことを吸収してるのはティナの方かもしれない。
「出来たよ! どうぞ、」
「ありがとティナ、」
綺麗な肉汁がお肉を輝かせる。柔らかなお肉が私の口を満たす。
「………。ティナは食べないの?」
「食べるよ。けど、もうちょっと焼いてから……」
「どうしたの?」
「油が苦手なんだ。だから油が残るのは苦手で……」
「そうなんだ。じゃあ、それのむね肉を使えばいいんじゃない?」
「むね肉? どういうこと?」
「知らないの? 鳥のむね肉は油が少ないんだよ。だから執拗くないんだよね!」
「そうなの!?」
「リョウが言ってたんだよ。体調が悪い時は油の少ないむね肉がいいって、」
「そうなんだ、じゃあ…、」
ちゃんと羽毛も処理されたお肉に刃を突き刺し私の言った部分だけを捌き取る。そしてそれを燃え盛る炎に照らす。
「美味しそうじゃない!」
「ホント、じゃあ先にどうぞ、」
「いいよ。私はこっちがあるから、」
「そう? じゃあ、」
私はこの油がジュワッと出てくるのが好きなんだけど、やっぱり私と違う人もいる。なんせ1番近いティナが真逆なのだから。
「………」
「美味しい! お肉がこんなに美味しいなんて初めてだよ!」
「良かった。これで美味しく食べられるね?」
「うん!」




