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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
平穏なる魔国
51/619

第51話

「ふんっ!」

「そう怒るなよ……」

滅茶苦茶機嫌が悪い。原因は俺にあるのだがここまでされるとなんともな……。

「ふんっ!」

「はぁぁ……」

領主が連れてきた客である俺とその領主の娘が一緒に歩いているとやはり周囲からは様々な意味の視線を向けられる。リリスの不機嫌も少なからずこれが原因だと思う。たぶん……。

「チッ、なんだよ!」

どうならリリスは町では人気者のようだ。俺には憎悪の視線が向けられる。まったく!

「おらっ!」

治安が悪いな。普通に歩いていて飛んできたのは拳程の石。

「これを投げた奴、分かってるんだ。とっとと出てこい!」

この治安の悪い町でもこのようなことは稀なようだ。周囲のザワメキは一瞬で消え分かりきっているであろう犯人の方へ横目を向け始める。

「…………」

予想通り誰も出てこない。まあそうだろうな。

「っ…」

「ん!」

悠長に出てくるのを待っていると、驚くことにリリスにまで石が飛んできた。咄嗟に受け止めたがもう許すきを無くしてしまった。

「今俺の手中には愚かな石が2つある。5秒以内に出てこい!」

「1つ……」

「2つ……」

「3つ……」

「4つ……」

「5つ…!」

出てくる気配が無いので石を投げつけ自分だと気付かせてあげた。まあ、出てくる前に治療が先だろうがな。

「2度とするなよ!」

俺はそう言うとリリスの手を引きその場を離れる。向こうの世界でもあったが妄信的なファン程対象に攻撃したがるよな。俺には理解できない。

「大丈夫かリリス?」

「…………」

「もしかして当たったのか?」

「大丈夫。」

「そうか。なら良かった」

今回の場合、恐らくは俺の存在が奴等に油を注いだようなものだ。それは間接的にでも俺のせいであると言えるからな。

「ありがとう、」

「ん?」

「さっき、守ってくれてありがとう……」

「そんなことか。当然だろ?」

「へっ?」

「男が女を守るのは当然だ。それに、俺の為に来てくれたんだからな、」

「そ、そんなことないし! 言われたから!」

「いいじゃないか。俺の考えなだけだ。もしここで魔物が襲ってきても守ってやるよ!」

「…………」

「もう行こう。そろそろだろ?」

「まあね、」

前回は入った瞬間、愚かな酒飲みが絡んできた、が、流石に2回連続はないだろう。そんなテンプレ展開が続くなんて……、

ギィィ……、

金具が錆び始めているのか嫌な音が耳にこびりつく。中からはアルコールの濃厚な臭いがしてそれだけでも軽く回ってしまいそうだ。

「貴方様はリリス様では御座いませんか、ヒクッ、そのような若造についていってはなりませぬぞ、ヒクッ、我々が送り届けて差し上げましょう」

その表情からは本当に吐き気しか感じない。リリスへ向けるニタニタした下品な笑みは万死に値する。

「すいません、絡まないでくれますか?」

相手からやらせればこっちも手を出せる。そこは俺の譲れない信念だ。

「あぁっ!? お前のような若造が偉そうなことを言うでない!」

相当の実力者なのだろう。酔っていても拳に迷いは無くただの若造なら医者送りだろう。しかし……、

「相手は選びましょうね」

「なにっ!」

闇魔法による威力吸収。ピンポイントにこれを行うのは相当難しいのだが、現代知識を持つ俺には簡単。自分が完全掌握している原子達だと考えれば良いのだから。

「では返させてもらいますね。

 火魔法・筋力強化」

腕に魔力が巡るのが分かり自分の手を潰しそうな程の力が内から沸き上がる。まあ当然その拳は酒飲みを襲うのだがな。

「ぐぅっ!」

冒険者にも関わらず鎧もつけていない酒飲みはそんな拳をまともに喰らい口から汚物を吐き出した。

「くれくらいじゃなんともないよな?」

目を見開きしゃがみこむ酒飲みにもう一発拳を浴びせる!

「ふっ、」

「なに?」

次に驚いたのは俺、本気でないとはいえ酒飲みは俺の拳を片手で受け止めた。やはり相当の実力者というのは間違いではないらしいな。

「!」

「はい、残念」

高笑いを浮かべようとしたのか顔を上げたが、俺はその顎を下から打ち上げた。そして落ちてくる酒飲みの鳩尾へ拳を叩き込む。

「ぐっ……」

「コイツはこの町の領主、エリスの娘であるのは知ってるよな? そんなリリスにお前は手を出そうとした。これは万死に値するぞ」

「…………」

「取り敢えず地べたにでも寝て考えろ、

 嵐魔法・吹飛旋風」

頭を持って扉に向ける。そして何度も殴った腹へ魔法を叩き込み吹き飛ばす。ついでに雷と加えたので数時間動けないかもしれないな。

「また…、」

「どうした?」

「なんでもない……」

「そうか…」

適当にギルド内の受付とここのギルドについて聞く。が差ほど変わりはないようだ。それも終わると俺達は酒場の方へ歩いていく。リリスには好奇の視線が、俺には畏怖と興味の視線が向けられる。

「兄ちゃんや、ようやってくれた!」

座った瞬間、若干酒の回ってそうな兄ちゃんにボンボンと肩を叩かれそんなことを言われる。

「締めたことですか?」

「そうそう。あの爺、つい最近きたばっかりなのにデカイ態度しやがって!」

相当嫌われていたようだな。兄ちゃんの言葉にそこの酒飲み達は皆が頷く。

「我等の方が古いと言うのにあの態度はなんだというのだ、けしからん!」

「御主もそう思わんか?」

「は、はい。それに……」

酒飲みとの話しの中、後ろで気まずそうに控えるリリスを横目で見やる。すると酒飲み達も気付いたようだ。

「災難じゃったな嬢ちゃん。あんな阿呆は気にせんでええぞ、」

一番歳の取った白髪白髭の老人がリリスをそうやって宥めようとしてくれる。しかしその様は実に不気味だ……。

「皆さん、私達はそろそろ御暇させてもらいます」

「まだ早いんじゃないか?」

「そうじゃそうじゃ、まだ早かろうに」

「いえ…、今日は見物しに来ただけなので」

丁寧に酒飲み達に礼をするとギルドを出た。正直、好きじゃないんだよな。

「ゴメン……」

ギルドを出た所で、俺にしがみついていたリリスは俺からパッと離れそう呟いた。

「どうした?」

「私のせい、私のせいだよ。私がいたから絡まれたし、それがあったから中で長居出来なかった。本当にごめん。私、ダメだね。」

初対面の時と比べ驚く程弱気だな。

ホント、こんな顔をさせる奴を見てみたいよ。

「謝るなって。リリスのせいじゃないから」

「嘘! 私がいなければ絡まれなかったじゃない!」

「そんなこと分からない! アイツは酔っていた。誰にでも絡む!」

「………」

ダメだ。余計に怖がらせてしまう。

リリスは気が強いように見えて中身は普通の14歳の女の子だ。あんな大男にあんな視線を向けられれば怖くて仕方ない。それに、そのせいでこんな事態になれば押し潰されそうになるだろう。

「ごめん、俺も言い過ぎた。取り敢えず何処かゆっくりできる場所に行こう」

「うん……」

リリス、深く落ち込んでしまったな。俺がもっとしっかりしてれば良かった……。

「気にするなよ?」

「………」

全くの無反応。

まあ、気にするなって言うほうが無理があるよな。今までは無かったんだろうか…、いや、あっただろうな。その度に内心怖かっただろう。

「ここでいい。」

やはり何処にでも静かで穏やかな公園と言うのはあるものだ。静かで冷えきった風が撫でる中、空に浮かぶ太陽が細やかな温もりを届ける。俺はリリスに聞こえないよう呟いた。

「好きなのに……」

冷えた風に掻き消されていった。

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