第50話
「そろそろ宴会も終盤じゃ。御主らは先に戻ると良い」
「いいのか?」
「御主は一応客人じゃ。そんな御主を残らせるわけにはいくまい。リリス、リョウを任せてもよいか?」
「な、なんで私が!?」
「御主しかいないんじゃ。妾もシリュウも宴会を閉めねば、」
「…………」
「頼りにしておるぞ、」
「………」
「それではリョウ。分からぬことがあればリリスを頼ると良い。妾とシリュウはここにて宴会を閉めておる。また明日会おうぞ、」
そう言い残すとエリスはシリュウさんを連れ舞台の方へ戻っていった。残されたのは俺達を哀れむような目で見るハンデスさんと、なんとも気まずい雰囲気をかもし出すリリスだった。
「ハンデスさん、行かないでいいんですか?」
「大丈夫だ。俺は一応エリス様の盾だが正直エリス様の方が強い。俺は実質リリス様の護衛なのだ」
「リリス、のか。近いうちにそれも無くなるかもしれませんね、」
「それは、どうゆう?」
「そのうち分かることですよ。」
不思議そうな表情をするハンデスを尻目にリリスの肩を抱き寄せると会場を出た。
「いつまでくっついてるのよ!」
「リリスが嫌がるまで!」
「…………」
それ以降はダンマリと何も話さない。因みに今居るのは客間。もう夜月が真上へ上がり夜も半ばに差し掛かっている。
「…………」
「私ね、ホントお酒が回ってるから言うけど、不思議な気分なんだよ!」
確かに酔っているのか口調も若干柔らかい気がする。それに顔も赤みがかり俺を見る目は潤んでいる。
「どうしたんだ?」
「リョウと会ったのって今日が初めてじゃない?けど、けど、何故かリョウを見てると嬉しくなって安心する。けど離れちゃうと寂しくなる……」
「…………」
「ごめんなさい。ホントバカね私。こんなこと言っても分からないよね。また今度話そうよ!」
フラフラとした足取りで立ち上がると部屋を出ようと扉の方へ向かおうとする。
バッ、
「まだいいじゃないか。それに、そんなことを言って放置とは卑怯じゃないか?」
「で、でも…。」
「でも、じゃない。リリスが安心するまで、リリスが落ち着くまでここにいろ。リリスが否定するまではここにいるから」
「………ありがと。」
「ん、」
立ち上がるリリスを再度ソファーへ座らせるとそうやって宥める。酒を飲むと過度に感情が高ぶる、または強くなる人がいるらしい。今は俺に出来ることをすればいいと思った。
「zzZ,」
「寝たか、」
本当に少しの間、抱き寄せながら静かにしていると寝てしまった。相当酒が回ってたな……。
「少し前なら、愛しく感じるかもしれない……」
恋情を知らない俺はこんな雰囲気やシチュエーションになると自分で言うのもなんだがすぐに好きになってしまう。これは実体験。自分を客観的に見た場合の意見だ。けど、今は何も感じられない。
「いや、感じてはダメなだけだな……」
強い喪失感を感じた俺はそれに似ている状況を2度と感じたくない。その為、いや、そう思っているからか何も感じなくなっていた。ただ、美しいと思うだけ……。
「…………」
なんとも複雑な気分だ。
夜も深く窓から見える夜月は曇り空に隠れてしまう。光さえ届かない。見えなくなった夜月があまりに哀れに思えた。
「ん…、ぅ……」
どうやら寝てしまっていたみたいだ。ソファーに座りながら眠っていたようで、向こうの世界なら風邪ひいたな…、
「ん?」
隣にいたリリスがいない。先に目を覚ましたのか。テーブルには走り書きのようなメモが残されていた。
「…………」
メモには「ありがとう」とだけ書かれていた。けれど俺からすればそれで十分。寝てたことでハッキリしない意識を振り払おうと頬を二回程叩く。
「よし!」
気合が入る。洋服掛けに掛けてある俺のコートを着るとメモを片付け部屋を出る。部屋を出た先には朝からメイドさんが扉の前に立っていた。
「リョウ様、おはようございます。御食事はどういたしましょうか?」
「朝は大丈夫だ。それよりも、リリスの居場所に心当たりはないか?」
「リリス様でしたら庭園ではないでしょうか? メイドの身で言うのもなんですが、リリス様はあのように見えて花等も嗜むのです」
「そうか。ありがとうメイドさん、」
礼を言いながら手を振って庭園へ急ぐ。特に理由もないが会いたいのだ。
「…………」
庭園についた。そこまで離れていないのですぐに着いたのだが、見渡す限り人影は見受けられない。その時、後ろから足音が聞こえた。
「リョウじゃない!」
振り向くとそこにいたのは他でもないリリス。どうやら俺の方が早く着いたみたいだ。
「どうしたんだ、こんな早くに?」
「リョウこそまだ早い時間でしょ!」
「昨日来れなかった庭園を見に来たんだ。一度見とかないとなって思ったから」
「なんだ、リョウもか。私もここを見に来たの!」
「そうか。いいよなここ。お兄さんがデザインしたんだろ?」
「そうよ………。」
「どうしたんだ?」
「リョ、リョウには関係ないでしょ!」
「まあな……」
「どうしたんじゃ、2人とも」
何か険悪な雰囲気になりかけた時、本当に計ったのかというほどのタイミングでエリスが話し掛けてきた。ついさっきまでは近くにいなかった筈なのに……。
「いや、なんでもない。それより、俺は町に出てくる」
「分かったのじゃ。そうじゃ! リリス、リョウについて参れ! 妾はついていけぬが、御主は行けるであろう?」
「け、けど、だからなんで私が!?」
「リョウは客人じゃ。しかし案内する者がおらぬのじゃ」
「………」
「任せてもよいか?」
「もう! 分かったよ、リョウも早く行こう!」
「あ、あぁ…」
俺は半ギレのリリスに引っ張られ城を出た。当のエリスはニタニタと意味深な笑みを浮かべてた。嫌な予感しかしない……。
「ねえ、町を回るって何をするの?」
「特に何も。1人だと思ってたから予定も何も考えてないんだ」
「だよね。けど、どうする?」
どうしようもない。何も考えず来ているのだから仕方ないだろ!
「取り敢えずは人の集まる所に行ってみよう。何か面白いものがあるかもしれない!」
「ならギルドね!」
「ギルド? 冒険者ギルドか?」
「そうよ。よく知ってるのね」
「まあな。これでも一応冒険者してるし、」
「そうなの!?」
「あぁ。ほら、」
アイテムボックスに入っている冒険者カードを取り出す。ホント、久し振りな気がするな。そう言えばギルドカードでスキル等は確認出来るんだった………。
「凄い…。これって、作るの大変なんでしょ?」
「そうなのか?」
「うん。確かひたすら特殊な魔晶に魔力を注ぎ続けてどうにかすって……、」
「そうか。ここら辺ではそうするんだな…」
「リョウはどうやって?」
「気になるか?」
「べ、別に!」
「冗談だ。俺は自分の血を使った。そうすれば効率良く情報を登録できるからな!」
「わ、私は別に……」
「そっか。ならこれ以上は‥」
「えっ?」
焦らされるような感覚はどうもむず痒い。誰でも経験したことのあるようなことだろうが、誰かにしていると案外面白いものだ。
「?」
「お、教えて、くれないの?」
「いらないんだろ?」
「…………」
「嘘だよ」
「えっ! リョ、リョウの意地悪~~!」
滅茶苦茶面白い。最高!
これからもたまには弄ってみてもいいかもしれない。最高に面白いぞ!




