第45話
「妻と娘がすいません。」
「大丈夫ですよ。短い間ですが性格は理解できますし。」
「恥ずかしながら私の妻も娘もこのような性格なのでこれからも御了承下さい。」
「こちらこそ、失礼な振舞いも御座いますが多目に見てくださると幸いです。」
やはり大人しい人でよかった。この人がいなければこの母子の睨み合いを眺めるはめになっていたかもしれない。
「そろそろ妾も入らせてはくれぬか?」
「君が娘と言い合う姿なんて客人に失礼ですよ。リリスも客人の前なのですよ!」
「んー、シリュウは分かっておらぬな。リョウは妾を救ってくたが妾もリョウを救った。命の恩人同士気なんて使ってられぬわ!」
「しかし……、」
「大丈夫ですよ。俺も名前で読んでますんで。」
「そうですか。分かりました。では私も少し砕けた口調で良いでしょうか?」
「はい。俺も敬語は苦手なんで、」
「ありがとうございます。私も妻の恩人には堅物と見られたくないですから」
「改めてよろしくお願いします」
深々と頭を下げ、笑みを浮かべる。
「リョウ、何日滞在するんじゃ?」
「明日、2日後には出ようかと、」
「早いのじゃ!もう少し泊まってまいれ」
「………。分かったよ。なら一先ず滞在時間は保留にしておこう。」
「分かったのじゃ。妾達は何時までも大歓迎じゃ。」
「礼を言う。シリュウさんも、」
「はい。私も大歓迎ですよ。見る所、リョウさんは魔族ではないのでしょう。この町も楽しんでくださいね。」
「はい。明日にでもまわってみます!」
「我が町をよろしくお願いしますね。」
メイドが持ってきた紅茶を一口啜ると、シリュウさんは席を立ち隣に置いてあるコートを手に取る。
「シリュウ、もうそんな時間なのか?」
「そうだよ。君に任せた仕事、まだやってないだろ。それが私に回ってきているんだよ。」
「………。」
「それじゃあリョウさんも、また今度。」
「はい。」
そう言うと部屋を出ていく。やはり政治家は大変なんだな。
「母さん、私も出るから!」
このような落ち着いた空間は苦手なのか、そわそわしていた。そして限界が来たのか立ち上がると瞬く間に部屋を出ていった。
「騒がしい娘ですまぬ。」
「大丈夫だ。あれくらいの子ならよく見掛ける。」
人の少ない山中ではそのような子はよく見掛ける。ただでさえ山近くお転婆娘が多かったのだから…。
「妾も行ってよいか?」
「手合わせのことか?」
「そうじゃ。出来れば妾も手合わせ願えぬか?」
「俺と?」
「そうじゃ。この町では妾と相手出来る者はおらぬのじゃ。」
「出来れば女性に刃は向けたくないんだが…、」
「大丈夫じゃ。責任は妾がとる。それでもどうしても嫌と言うのなら魔法戦じゃ!」
「仕方ないな。一戦だけだからな、」
「分かっておるのじゃ!」
「ならそろそろ行くか?」
「そうじゃな。先に行っておれ。妾もあとかはまいる。」
「分かった。」
ハンデスは領主の話と察しいつの間にか出ていっていた。場所は覚えたのでそれを辿って向かえばいいだろう。
「ここだ、よな。」
さっき曲がったであろう場所を曲がるとその先には石レンガの広場が広がり兵達が剣をぶつけていた。
「間違ってなかった……。」
広がる石レンガの広場には金属のぶつかり合う音や人の叫び声がなり響いていた。その中でハンデスは監督として兵達を監視していた。
「ハンデスさん!」
「おぉ、リョウ殿か。エリス様との話は終わりましたのか?」
「はい。では、」
「早速、」
予め周囲の兵達には言っていたらしく、俺とハンデスが正面に立つと他の兵達は引いていく。そして一人の兵がその間へ立つと…、
「始め!」
審判まで頼んでいたらしく、段取りがいい。まあ、審判として立った兵の顔は引き攣っているが……、
「っ!」
ガキンッ!
滅茶苦茶早い、はず。だけどやはり普通についていける。
下斜めの向きに切り上げの形で放たれる剣を魔力のコーティングによる蹴りでずらすと、その位置からの回し蹴りで頭を狙う。
「やらせん!」
剣から離した手で蹴りを受け止めると、蹴りあげた足を掴む。
「ふうっ!」
掴む手に紐付きの短剣を投げ付ける。当然それは避けられたが目的が違う。落ちる短剣がいい位置にいった時に糸を引き手に絡める。
「なにっ!」
「力で勝つのは正直簡単だ。だが技で勝つ方がいいだろう?」
油断した所から足を引き抜き一度下がる。短剣もしまい、大太刀と拳銃の2つ武器を構える。
「言ってくれるな!」
再び直剣を構えると隙のない構えで振り下ろしてくる。まあ…、
バンッ!
「なっ!」
刃に弾丸を当て怯ませた隙に大太刀を振るう。本当に余談にしかならないがこの武器達、自分の意のままに消せて出現させられる。親父さんはいい機能を付与してくれているな。
「危なかった。やはりリョウ殿、相手にとって不足はない!」
剣速が上がる。それに伴って威力も上がり本気で無かったことはよく分かる。けれど目で追えるな。
「はっ!」
「、」
ガキンッ!
「はっ!」
「、」
ガキンッ!
「はあっ!」
「、」
ガキンッ!
目で追えるのだから防げるのは当たり前だろう。それにスキル『豪腕』によって強化された腕力を使えばある程度は防げる。
「そろそろ攻めさせてもらう!」
左手に構えた拳銃を向けるとハンデスも警戒し剣をひく。そしてその動きは正しかった。俺は大太刀での攻撃を止め拳銃を連射した。
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
やはり慣れない武器相手には苦戦するらしく攻撃に移れずにいた。その間俺はと言うと…、
「………。」
最後の弾丸を撃ち終わった瞬間、拳銃を消し大太刀を深く鞘に納める。
「はっ!」
両足をしっかり地につけ、力強く踏み込む。そして目の前へつくのと同時にその勢いの込め大太刀を抜き去る!
「っ!」
ガキンッ!
そんな防御不能と思われる攻撃さえも受け止めたがそれでも衝撃はあったようで後ろに怯む。俺はそんな体勢の崩れたハンデスへ振り上げた大太刀を自身の体重も込めながら振り下ろす。
「ぐっ、、」
慌てて剣を構えたようだが、間に合わなくて刃はハンデスの肌を少し切り裂いた。
「まだやるのか?」
「やるさ!」
ガキンッ!
その状況からも大太刀を弾くと突きを放ってくる。けれどこの状況からなら負けることはない!
突きを飛び上がることで避けると、拳銃を向け引き金を引く。
「なにっ!」
弾丸が飛ばない。弾切れか!
「もらった!」
弾切れで戸惑う俺にハンデスは直剣を振りかざす。仕方なく俺は日緋色金の拳銃を取り出した。
バンッ!
これは魔力による弾丸の為、弾切れが生じない。不意を突かれたハンデスは銃弾を肩に受け衝撃に後ろに倒れた。
「俺の、敗けだな。」
「………。」
「この傷も数ヶ月すれば治るだろう。気にせずとも良い。」
「分かりました。」
俺がハンデスを助け起こしていると、横から誰か近付いてくる。
「お前!あの武器は卑怯でしょ!」
そう言いながら俺を怒鳴るのはエリスの娘であるリリス。まあ、予想内の反応だ。こんな熱血的な人からすれば拳銃なんて卑怯そのものだろう。しかし……、
「ならこれならいいか?」
短剣を取り出すと壁に向け狙いを定める。
バンッ!
短剣から飛び出した小さな弾丸は壁に当たり小さな風穴を開けた。
「なっ!?」
周囲はその光景に驚愕の表情を浮かべ少しの間言葉が出ないようすだった。




