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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
初まりの町
36/619

第36話

「騎士長、おじさんは?」

「おじさん、、いや、ルトラスのことか。奴なら死んだ。最後は戦場で人を斬った後、力尽きたようだ。」

「そうですか。ありがとうございました。」

やはりそろそろまた戻ったのかもしれない。これは仮説だが人は大きな消失感を味わうとそれ以降、それを越えない限り消失感自体感じなくなる。どうやらおじさんの死も今の俺には響いてないらしい。

「リョウ……。娘が一言だけ貴方に言い残したことがありました。」

「っ!?」

「口数の少ない娘でしたが最初で最後、私に貴方への感謝と好意の念を語ってくれました。そして最後にありがとうと…。何故こんな話をしたのかは知りませんが、貴方についていけると言われた彼女は喜んでいましたよ。」

「そう、ですか。」

今じゃないだろ。お願いだ。俺の心を抉らないでくれ。けれど、これを聞いて益々高まるものがある。それは奴等に対する殺意だ!

「ありがとうございました。娘を助けてくださって…。」

その場を去る。これ以上聞くとまた動けそうにないから。


「それでは進軍だ!我等の町を取り返す!」

『おおぉぉぉぉぉぉっ!!!』

進軍が開始された。ゆっくりジリジリと攻めるように全員が中心地へ向かって進む。

「我等も行くぞ!二人共、生きてあることを期待する!」

「はい!」

「あぁ!」

俺達5人も進軍を開始した。俺は右、仁は左へ進む。右側には俺の知っている場所が数多く点在していた。まず始めに…、

「くそっ!」

あの見慣れた公園。そこに張っていた薄い氷達はバキバキに砕け、紅く染まっていた。そして公園の端などに横たわる人々の中には、紙飛行機を持った子供さえいた。

そして次は…、

「ヒドい…、」

鍛冶屋。シュラと親父さんの店である鍛冶屋も崩れかけていて、店先には槍で肩を貫かれた親父さんが磔にされている。

「親父さん、大丈夫か!」

「リョウ、か。シュラは逃がした。どうか…、」

出血が多い。もう長くは保たないだろう。

「これが、俺の最後の作品だ。どうか、お前が使ってくれ…。」

「親父さん!」

既に息絶えていた。胸元から日緋色に輝く銃身が煌めいている。

「ありがとう親父さん。奴等は絶対に…。」

槍を抜くと、店の中へ親父さんを運び込む。中も滅茶苦茶に荒らされたようで、いつかのコップが地面に落ちていた。

次に訪れたのは宿…、

「リアス!ティナ!」

訪れた宿は二階部分が全壊。一階部分も瓦礫の重さで歪んでいた。

「くっ!」

急いで歪んだ扉を蹴破ると、中は様々な家具類が壊され散乱していた。そして二階から墜ちてきた瓦礫等も多数散乱していた。そしてその下には…、

「リンっ!」

「お兄、ちゃん?」

重い瓦礫の下敷きで今にも消えそうな声で答えてくれる。一階の調理場には大人二人が大きな切り傷がある状態で死んでいた。リンの両親だ。

「すぐ助けてやるからな、」

これくらいの瓦礫ならすぐに飛ばせる。もし俺がここにいれば守りきれただろうに。

「ありが、とう。お兄ちゃん…。」

リンに重なる瓦礫を吹き飛ばすが、リンには鋭い木片が突き刺さっていて、出血量も多い。正直言って助からない。

「リン、怖かったろ。ごめんな、ここにいてやれなくて…。」

「お兄ちゃん。怖かった、けど、お兄ちゃんが、来て、くれて嬉しい、よ。」

「もう喋るな。痛いだろ?」

「お兄ちゃん。私、死ぬ?」

「大丈夫、俺が助けてやる!」

「ありがとう。バイバイ…。」

そう言うと微笑みながら俺に伸ばした手が落ちた。

「ごめん、」

持っている毛布を被せると、魔晶を中心に結界を張り遺体を守る。これなら宿が崩れても大丈夫だろう。


「はあっ!」

ブシュゥッ!

宿の中で長居したせいか宿の周りは敵に囲まれこの様だ。本当に、本当に出てきてくれてありがとう。殺させてもらう!

「どうしたどうした?まだまだ死ねないだろ?」

「ぐぁぁっ、」

わざと武器は使わず素手で殴る。そして人差し指にだけ炎を宿らせると、体をなぞっていく。

「ぅ…ぁぁ……。」

「はあっ!『断絶ノ矛』」

スキルを使い思いっきり振り下ろすと簡単にその首は飛ぶ。断面は恐ろしいほど綺麗だ。

「はあっ!」

グサッ!

通り際に腹に手刀を捩じ込むと、スキルによって腹は容易く貫通する。そしてそれを抜くのではなく…、

「ぐぉっ、」

更に奥まで手刀を突っ込むと、それを回転させながら抜き去る。そしてもう片方の拳で殴り飛ばし、次の兵へ取りかかる。

「ぐぉぉっ!」

「ぅあぁぁぁ!」

「ぐはっ!」

「もう終わりか?」

俺の周りには腹に拳程の穴が開いた死体が横たわっている。本当に邪魔だ。

「よし、急ごう!」

目的は円の中心。敵将のいる所。殺すべき敵将がっ!


ガヤガヤうるさい。どうやら町中の方は見回っているようだが、本当に近い場所は誰一人見回りがいない。

「すいません、これは何の集まりですか?」

「占領した敵将の演説が始まるんだよ!ここにいれば命は助けてくれるって!」

「ありがとうございました。」

あまり目立たない方がいいな。『影移動』を使い崩壊しかけの店の屋上へ腰を下ろす。

「皆の者!よく聞け!ここは我等ラスベルト帝国が支配した!領民よ!我等に忠誠を誓え!」

一段と高そうな鎧を纏った男が叫ぶと、その声は魔法により遠くまで飛ばされる。そしてそんな演説を聞いた領民は片膝をついた。ホント、戦死者は報われないな。

「お主らの意思はしかと皇帝に伝えよう!しかしお主らと違い馬鹿な真似をした者達もいるのだ。見よ!」

そこには大きな鉄檻で囲まれた捕虜達が。その中には何度か見たことのある者達もいた。

「我等は敵対者には容赦しない!しかとその目に焼きつけよ!」

始めに引っ張られてこられたのは領主。情けない姿で愚王だということがよく分かる。

「見よ!これが最後だれ」

その言葉と共手を振り下ろすと、領主の首は飛ばされた。その血飛沫は地面を紅く染めた。

「次は‥、」

次に引っ張られてかたのは一組の親子。子供は見たことあるな…、あっ、ギルド前の奴だ!

「この者達も我等に逆らった者だ!」

次も手を振り下ろそうとしたが…、

「待って!」

その声の主はよく知っている。出来れば信じたくないが…。

「なんだこの小娘。誰がよこした!」

やはり。シュラだった。この中でも堂々と敵将の所まで歩くと、敵将と対面する。

「あたしは自分で来たのよ!貴方がこの親子を殺そうとしたのが見てられないから!」

「そうか…、」

その言葉のフレーズに嫌な予感がして俺は大太刀を構え走り始めた。

「なによっ!」

「殺れ!」

手が振り下ろされた。本当にギリギリだった。あと0.1秒早かったら助けられたのに…。

「うあああああああああ!」

ブシュゥッ!

敵将の振り下ろした手首を切り落とすと、痛みに歪む顔を切り裂き、腹へ刃を突っ込む。

「死ねっ!火炎魔法・放炎」

体内からも体外からも炎で焼き付くし息の根を止めた。そしてその大太刀も抜かずに倒れたシュラを抱き締める。

「ごめん、俺、守ってやれなかった…。」

「嫌だなあリョウ。あたし達は()()でしょ?そんなに泣いたら、変に、思われちゃうよ…。」

「っ、」

「ね、だからそんなに泣かないで。あたし、リョウがあたしの為に泣いてくれた、だけで嬉しい、から。」

「…。そんなこと言うなよ。俺が治してやる。こんな傷、こんな傷…。」

傷は肩から胸の方までを深く切り裂かれている。それは大動脈を斬っており、助からないことは分かっていた。

「大丈夫。あたし、幸せだったよ。好きな人の手の中だし、ありがとうリョウ。大好きだよ。」

一度俺を強く抱き締めると、一番の笑顔を見せたあと息絶えた。また、俺の手の中で。

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