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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
初まりの町
33/619

第33話

「遊撃隊隊長リョウ様。すっかり役職にはまってますな!」

「ありがとうございます。」

「今回の活躍、報酬は弾みますよ!」

「はっ!ありがとうございます!」

「引き続き遊撃隊隊長を務めてはくれませんか?」

「嬉しい話ですがお断りします。」

「理由を聞いても?」

「私には連れがいます。その子達を縛りたくないのです。」

「そうですか。残念です。」

「……。」

「けれど、明日まではしっかりと務めてもらいます。送別会も兼ねまして」

「ありがとうございます。」

「はい。こちらこそありがとうございました」

お互い礼を言うと俺は控え室へ、騎士長は騎士団へと戻る。また服でも変えるか。

今回暴れまわったせいで袴はボロボロ。羽織っていた物ではえ焦げていたところもある。

「『魔力錬成』」

前は袴と和風だったが今度は少し洋風感をプラスしてみた。錬成したのは黒いロングコートと黒い革手袋。それに藍色のパンツに濡羽色のベルト。完璧怪しい感じがするな。

「よし、完了!」

着替え用の魔法で袴から今錬成した服へ着替える。意外とこっちの方が普通かな。

「お前達、傷は回復したか?」

そう言いながら部屋に入ると中から血生臭い匂いが。嫌な予感がして入ると中では剣の交える音が聞こえた。

「おい‥」

いや、止めた。

『影移動』を使いながら情報を集めることにした。けれどベッドに寝かしたユウリがいないな。まあ、関係ないか。

「……。」

どうやら何やら揉め事のようだ。それも日常的に対象1人へ向いている。所謂イジメか。

「……。」

内容は剣での打ち合い。それも数十戦連続でだ。

「そろそろ見てみるかな、」

人に囲まれる中心の所謂対象の影まで移動すると、そこからコイツらの目の前へ姿を表す。

「なあお前達。俺の居ない間に何してるんだ?」

ニッコリとしながら話し掛けると全員が目を背け、その囲んでいる中心人物は冷や汗を垂らす。

「なあ、ギド!」

「え、あ、こ、これは……。」

ドンドンと顔が青ざめているな。どんな覚悟があってこんな仕打ちをしていたとは。

「火炎魔法・核爆破」

「そ、それは、それだけは!」

「まあ、取り敢えず死ねよ。言ったよな、それ相応の罰はするって…。」

「うわぁぁぁ!」

ドカーーーンッ!

威力は格段に抑えている。しかし撃ったのはギドでその周囲には結界を張り爆発を閉じ込める。まあ当然、死ぬよな?

「お前達、俺の本心としては全員を同じ目に遇わせたいが止めよう。主犯者はこうなる。お前達、しかと肝に命じろ!」

『……。』

「大丈夫かユウリ。」

そう。対象になっていたのはユウリだった。身体中傷だらけになり、血が滴っている。

「俺に触るな!」

助け起こそうとした手は血の滴る手で払い除けられてしまった。まあ、仕方ないか。それにあの憎しみに染まった目の色も納得出来るな。

「断る。これは命令だ。」

「……。」

「掴まれ。コイツらはお前を殺しかねん。」

「……。」

「お前達、明日は来なくていい。明日は俺1人で遊撃を担当する。コイツも借りていくぞ!」

納得のいかないユウリを片手に抱えると、控え室を出る。


「騎士長、部屋を1つ借りていいですか?」

「どうぞ。この部屋をどうぞ。」

胸元から鍵を取り出すと俺へ渡す。もしかして全部屋の鍵を持っているのか?

「ありがとうございます。騎士長。」

「はい。合わせてありがとうございました」

俺は無言で頭を下げ、部屋を出る。外にはボロボロのユウリが壁にもたれ掛かっている。

「行くぞ、」

「お前、俺をどうするつもりだ!」

「どうもしない。」

渡された部屋はこの階の端の部屋。まあ何処でもいいが…。

「入れ、」

「……。」

先に俺が入り、そのあとユウリが入ったのを確認すると鍵をしめる。

「……。」

「……。」

「座れ、」

少しの沈黙が続いた後、取り敢えずソファーへユウリを座らせる。どうにもやりずらいな。

「……。」

「お前は何故あんな境遇なんだ?」

「……。」

「ダンマリか。まあいい。少し染みるぞ、」

俺はもしもの時の為、向こうの世界で使う医療薬品やその他諸々の品は『魔力錬成』で作りアイテムボックスにストックしていた。

「うっ…。」

「消毒だ。ユウリ、今までも受けてたんなら何故黙っているんだ?」

意外なことにユウリは俺が部屋に入ってから一回も抵抗していなかった。性格上、やり返してもおかしくないように思えるのに…。

「……。」

「はぁ。痛かったら言えよ、」

この服のままなら治療には邪魔だ。そう言っても脱がす訳にはいかないし、取り敢えず袖の部分だけでも切る。そして定番の包帯を巻き傷口を保護する。正直もっと完璧な治療をしてやりたいが、知識の無い俺じゃ無理だ。

「……、」

やはり傷口が痛むのか縛るときには顔をしかめる。それでも声は押し殺すのがユウリらしい気がするな。

「これで終わりだ。他の所は俺じゃ出来ん。薬は置いておくし自分でするといい。」

これからは明日の打ち合わせだ。騎士長にでも会いに行くか。

「お前、何処行くんだ!?」

「んっ?」

「だ、だから何処へ?」

「騎士長の所だが。」

「……。」

「そう言えば騎士長との打ち合わせは済ましてたな。少しここにいていいか?」

「大丈夫だ!」

素直じゃないと言うかなんと言うか。まあいい。

「少しの間は安静にしろよ。」

「俺を舐めているのか!」

「そうじゃない。その傷、戦場では危ないぞ」

「……。」

これでもユウリも武人。戦場の怖さは俺なんかよりも熟知している筈だ。

「心配してんだよ。正直元は遊撃隊全員を守りたかったが気が変わった。なんともあの雰囲気は好きになれん。その分、お前を守ろう。腕の傷が治るまでってのも約束だったしな。」

「ありがとう…。」

「礼等いらん。それよりも早く寝ろ。疲れているだろう。」

「……。」

「何してんだよ!」

動こうとしないユウリを抱き抱えるとベッドへ運ぶ。

「俺は使わん。ユウリが使えばいい。」

「それは、悪い。」

「お前の為に借りた部屋だ。全てお前の物だ」

「俺は何をすれば…。」

「何をしなくていい。じゃあな、」

部屋の明かりを消すと、部屋を出る。今度こそ騎士長の部屋だ!


「騎士長、失礼します。」

「リョウ様ですか…。部屋はどうしましたか?」

「ユウリに鍵は渡しました。」

「そうですか。どうもユウリに目をかけてらっしゃる気がしますが…。」

「そうですね。あの目を見れば無下にはできないでしょう。」

「そうですか。ありがとうございます。」

「?」

「私からすると彼女は娘のようなものです。そんな彼女を心配して下さるリョウ様には感謝ですよ。」

「……。騎士長、明日はどうするのです?」

「今日のうちに敵陣は崩しました。残るは敵将の待つ一角だけです。それも今冒険者及び騎士達に包囲させています。明日はそれを私、仁、リョウ様で崩そうと思いまして。」

「分かりました。明日は激戦になりますね。」

「はい。私も心して掛かります。リョウ様も準備なさってくださいね。」

「はい!」

そう言いながら部屋を出ると、暗く光の無い廊下を歩いていく。風は冷たくて体の芯までも冷やしていく。

コンコンッ

「ユウリ、開けるぞ」

部屋は開いている。中には光は灯らず窓際の窓が少し開いているだけだ。

「寒くないのかよ、」

風の音をたてていた窓を閉めると、静かに寝ているユウリを眺める。

「こんな小さな体でよく耐えたな。」

あの遊撃隊は本当に劣悪な環境だった。それにその前にいた場所も。

「お休み、」

部屋を出ると屋根の上へ移動する。ここで風を遮断して熱を上げて寝よう。

「ふぁぁぁ。」

ユウリが嫌じゃなかったらついてきてほしいな。何故か見捨てたくない。

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