第32話
「隊長!」
「ギド、戻っていたか。」
「はい!」
「遊撃隊の者達はどうした?」
「ほとんどが無事です。数名負傷、1人死亡しましたが…。」
「そうか。仕方ない。戦なんだから…。」
「隊長。」
「ギド、お前はどうする?冒険者達に加わり攻め続けるか?」
「いえ。実は俺も武器なんてボロボロです。体も…。」
「そうだな。遊撃隊全員に回復ポーションを無料で配ろう!」
『ありがとうございます!』
「ギド、これを頼む。丁度全員に3つずつだ。」
「はい!」
遊撃隊の者達は全員がボロボロで、負傷している者も多い。やはり無理をさせたな…。
「ユウリ、お前はどうだ?」
塀にもたれ掛かり体を預けるユウリ。片手からは未だに血が滴っている。やはりなんの訓練もしていない俺の精霊魔法では回復しきれなかった。
「何故俺にそこまでする!?」
「俺が転生者だから。」
「転生者…。だからどうしたというのだ!理由にならん!」
「だろうな。けれど、分かってくれなくていい。これは俺の仁義だ!」
「……。」
「回復ポーションはここに置いておく。あと、爆発でダメージを受けた剣の詫びだ。『魔力錬成』」
日緋色金性の直剣だ。売れば金になるだろう。
「こんな物はいらん。その分…、」
「?」
「その分……、」
「?」
「なんでもない!お前、こんな剣はいらん。その分、俺の傷が癒えるまでは付き合え!」
「分かった。その傷は俺のせいだからな。すまん…。」
「俺はお前のせいとは言っていない!」
「すまん。いや、そうだな。」
「無駄に時間を使った。俺は少し休む。お前も休めよ……。」
相当疲れたようだ。壁にもたれながら寝てしまうと、バタンと横に倒れてしまった。
「今夜だな…。」
目線を戦場に向けた。人は入り交じり血飛沫が舞う。勝負は今夜。どれだけ攻めるかで敵将を討てるか決まる。
「襲うつもりですかい?」
ニタニタと笑いながら近付くギドを〆めると、ユウリを背負い控え室に戻った。
「期待しているぞ、」
そう言い残すと、俺は部屋を出る。また戦場に舞い戻る為だ。
「……。」
乱戦。その言葉が相応しいほど敵味方入り交じっている。けれどその中で一際人を寄せ付けぬ者もいる。1人は仁。もう1人は騎士長。そしてもう1人は…、
「おじさん!」
そう。現役を引退したはずのおじさんだ。それも現役の者と比べ物にならないくらいに暴れまわっている。
「俺も加勢するぞ!」
ここからは俺も1人の冒険者として。遊撃隊隊長ではなく1人の冒険者として挑もう。
「はっ!」
「ぐはっ!」
「なにを怯んでんだ?」
開始早々大太刀による突き。魔力を纏った突きは容易く人を貫くのだ。
「溶岩魔法・溶岩弾」
ヒュ!ヒュ!ヒュ!ヒュ!
ヒュ!ヒュ!ヒュ!ヒュ!
弾丸並みのスピードで飛来する溶岩。想像してくれれば分かるだろう。凶悪な溶岩が人を焦がしていった。
「はあっ!」
ブシュッ!
怯んだ敵ほど扱い安いものはない。俺を向いてない敵は簡単に首を飛ばされていく。
「掛かってこい!相手してやる!」
流石にここまで暴れれば警戒して近寄らない。俺の回り3メートルくらいを重騎兵が取り囲む。
「流石のお前と言えどこの数相手には敵うまい!大人しく降伏せい!」
「馬鹿が。相手を見ていえ!植物魔法・毒蔓」
「な、なんだこれ!」
「う、うわぁ。絡み付く…。」
「その蔓に5秒以上触れるなよ。死ぬぞ。」
「はっ、え…、っ……。」
毒蔓に触れた部分は紫色に侵食され、5秒経つ頃には身体中から紫色の発疹が見えた。
「だから忠告したのに…。」
人を先入観だけで考えてはいけない。毒も十分な武器なのだから。
「んー、暇だな。武器だけにするか。」
決めた。使っていいのは武器とそれに関するスキルだけ。これを使えば少しは暇潰しできるだろう。
「はあっ!」
ガキンッ!
剣と大太刀がぶつかり合い金属音を鳴らす。しかし威力の高い大太刀が押し勝ち相手を吹き飛ばした。
「ぐあっ!」
「はっ!」
ブシュゥゥゥゥ!
血飛沫と共に命の灯火は消えた。けれど大太刀は対多戦に向いてないな。
「んー、これにするか?」
一度でいいから使ってみたかったんだよな。大鎌。アニメとかで使ってるの見てたら格好いいし!
「はあっ!」
ゴウゥと風を切り裂く音がする。こんな大きな音からするに威力は絶大だろう。
「耐えろよ!」
ガキンッ!
切り上げの大鎌に直剣で対抗したようだが、刀身の真ん中から真っ二つに折れてしまう。
ブシュゥゥ!
直剣で受け止めきれなかった刃は相手の脇腹から入り肩から抜けた。
「んー…。違うな。」
確かに強力だが一気に一掃とはいかない。やはり使えるのはアイツだな。
「両刃剣!」
柄の部分を中心に上下にある刀身には左右両方に刃がついている。それにそれぞれ刀身は直剣並みの大きさだ。
「はぁ!」
縦向きに振り下ろし胸に大きな傷を与える。そしてそのまま後ろの刃で首をとばす。
「っ!」
後ろから襲ってくる敵に刃を浴びせ、飛んできた矢は刀身で弾く。
「これに決定だ。お前達にはこれを使おう!」
前から3人掛かりで襲いかかってくるものがいる。当然、加減無しでいいよな?
「おりゃぁっ!」
「んっ!」
振り下ろされた直剣を片方の刃で受け止める。そしてその間に放たれた槍による突きは刃を踏みつけることで防ぐ。そして飛来してくる矢には……。
「はあっ!」
両刃剣を思いっきり振り上げて相手の直剣を降り飛ばす。そしてクロス字で切り裂くと、踏みつけている槍の持ち主はそのまま脳天を潰す。そして一番ウザイのはその俺をひたすら狙い撃ち続けている弓兵。
「死ね!」
そんな奴の前へ『縮地』で近寄ると、首を一発で飛ばす。その時、軍勢の波が割れ1人の大男が俺の前へ立つ。
「敵将リョウよ。我と勝負せい!」
「望むところだ!」
それと同時に両手に構えた両刃剣をしまうと、素手になった。
「なんのつもりだ!ふざけけているのか!」
「大真面目にしてるつもりだ!掛かってこい!」
まあ相手からしたら挑発意外の何物でもないないだろう。けれど俺からすれば真面目の真面目、大真面目なんだがな。
「おおおおおっ!」
大剣使いの大男は軽々と片手で持つと、その重さに任せ一気に振り下ろす。
「『魔拳』、『縮地』」
炎を纏わせた拳は熱の上がりすぎで蒼く燃えたぎる。そしてそれに合わせた縮地の加速で大男の鎧にはくっきりとした溶けた拳の跡がついてしまう。
「ぐはっ!」
大男はそのあまりの衝撃に鮮血を吐くと、倒れ込んでくる。しかし…、
「はあっ!」
次に倒れ込む大男の顎を思いっきり殴りあげる。これだけで下顎は滅茶滅茶になる。
「最後だ!」
空に打ち上げられた大男よりも上へ飛ぶと、その場所から地面へと殴り飛ばした。
この衝撃により大男の体はそこらじゅうがボキボキ。表面も拳の炎で丸焦げになっている。
「俺の勝ちだ!」
風魔法で浮かびながらそう宣言すると、魔拳じゃない手には炎が渦巻く。
「火炎魔法・八龍乱舞!」
手から繰り出される炎はやがて一匹の龍となり地上に落ちる。それだけでも相当な熱なのだが凶悪なのはそのあと。爆炎から暴れ出た八匹の龍はそのまま敵兵の中を縦横無尽に駆け回った。
「行くぞお前達!戦はまだまだだ!」
あとで、蒼炎の炎と共に敵陣を暴れまわるお前はまるで鬼神のようだった。と言われた。




