第29話
「ここでいいのか?」
ギルドに行くと裏のギルドの闘技場へ行ってくれとのこと。しかしいざ行ってみるとそこには集められた冒険者でごった返していた。
「うるさいな、」
辺りを見回しても人!人!人!
疲れてくるんだよ。まだ血も浴びてないのに…。
「お、見っけ!」
闘技場ということで闘技場の周囲は若干の塀で囲まれている。そこなら少しはマシだ。
「よっと。ここなら、」
見渡しも良く、人もいない。上に来ているカッターシャツをしまうと、黒っぽい袖がはためいた。
「あーあー、聞こえるか冒険者共!」
一際高い台から声を飛ばすのは銀色の煌めく鎧を来た男。鑑定で調べると名前はグラシリク。称号に騎士長とあることから領主の手の者だろう。
「私は騎士長グラシリク。今回の敵軍進行及び我等のこの町を守る作戦の任を命ぜられた。」
そこで一旦話を切ると、剣を抜き放ち空に掲げる。
「私達と共に戦ってくれ!」
『うぉぉぉぉーー!』
「何をそんなに張り切ってんだ?」
こんなの単に集められたタダで働かされるだけなのに…。
「知らないのか?」
いつの間にか隣には仁が。何日ぶりだろうな。その顔色は何も変わっていなかった。
「なにがだ!?」
「この緊急要請で生き残ると報酬の額は意味のわからない大きさだ。それにもう自分が死んでも親族に金は送られる。」
「そうだったのか。俺の場合…。」
「お前、遼と言ったな。連れはどうした?」
「アイツらは宿に残してきた。」
「残してきただと?」
「あぁ。危ないからな、」
「そうじゃない。ほぼ強制的に連れてこられるだろう。」
「睡眠薬だよ。」
「……。」
「俺のスキルは記憶の中にある物を作り出せるらしい。それを使ったんだ…。」
「向こうじゃ犯罪だぞ?」
「まあな。こっちにはそんな法律ないだろ?」
「そうだな。お前はそれでいいのか?」
「なにがだ?」
「その二人を残していいのか。もしお前が死ねば身寄りを失うぞ。」
「……。」
「お前がそれでいいなら俺は口出ししない。その代わり、死ぬなよ。」
「あぁ。お前もな!」
「当たり前だ。」
仁は塀を飛び降りると何処かに消えた。因みに鑑定しようとしたが出来なかった。恐らくはスキルにより阻害だな。
「ホントに分からない奴だ。」
そして奴の顔を見るとどうにも酒が飲みたくなる。
「少しくらい…。」
アイテムボックスに購入していたビールを取り出すとジョッキで飲み干した。飲む量がおかしい……。
「ふぅぅ。これくらいじゃ酔わんな。」
ビールジョッキを投げ捨てると、再び騎士長の話に耳を傾ける。
「私達の計画を説明する。私達は東、西、北に分かれ門を守る。諸君達は3団に分かれそれぞれの騎士団に従ってもらう。分かれよ!」
その声と共に冒険者達は分かれていった。慣れてるみたいだ。もしかして……、
「今回もやってやるぜ!前年は来れなかったからな!」
やっぱり!何度も起こっていることらしい。本当にここの領主はクズだな。
「何処に向かえばいいんだ?」
そう言いながら取り敢えず闘技場内へ降りると、前で立っていた騎士長グラシリクが俺の所へ近付いてくる。
「大会優勝者リョウ様。我等騎士団に手を貸して頂き感謝致します。」
「ん、急に!?」
「これは失礼しました。私、騎士団騎士長を務めるグラシリクと申します。あのジーン選手を破ったお力、頼りにしております。」
「こちらこそお願いします。この町は好きですので、私も守りきりたいと思います!」
「意見はご一緒のようですね。では参りましょう。我等に付いてきてくださいませ。」
騎士長グラシリクと後数名の騎士が俺に頭を下げ付いてくるように促す。本当にどうしたものか…。
「ここが作戦本部でございます。ギルドの緊急要請は集まることであって出陣自体ではございません。あくまでも我等の演説を聞いて頂くのが緊急要請の内容でございました。そして改めて、どうか我等に強力しては下さいませぬか?」
「是非強力させて下さい。私は何をすればいいですか?」
「本当ですか!?ありがとうございます。それでは早速作戦の内容を説明させて頂きます」
「お願いします。」
「はい。簡潔に説明致しますと、まず騎士団、冒険者達を3団に分かれさせます。そしてそれらを東、北、西の門前に陣取らせ敵を迎え撃ちます。」
「ほうほう。そのあとはどうするのです?」
「敵の数が分からない以上予想し難いです。なので我等騎士団幹部とジーン選手等の精鋭はここで待機することになります。当然強制ではございません。リョウ様はどうするのですか?」
「出来るのなら私は先陣を切らせて頂きます。出来れば北門を…。」
「承知致しました。では北門遊撃隊はリョウ様に任せましょう。」
「良いのですか!?」
「どうぞ。ただし成果をあげてくださいませ!?」
「当然です!」
「では早速遊撃隊の者達の元へ案内致します。彼等は実力主義です。リョウ様なら認めて下さるでしょう。」
「認める、とは?」
「行けば分かりまする。」
「?」
何かありそうだな。まあ想像はつくけど…。
だって、案内された遊撃隊のいる場所ってのは外からでも重々しい緊張が漂う。
「ここが控え室になります。中には遊撃隊の者達が待ち構えてございます。」
「そうですか。入らなければなりませんか?」
「お気持ちは分かりますが、お願いします。」
「はぁぁ。」
引き戸である扉を開くと、中を見る前に驚くような出迎えが…、
「御大層な出迎えだな、」
飛んできたのは鋭利な銀色の短剣。絶対に俺の額を狙った一撃だ。
「頭、次の隊長さんはコイツかい?」
「そうだ。お前達も納得する奴を連れてきたぞ!」
やはり初めからコイツらの世話をさせる為に話しかけたんだな。まあいい。ありがたく使わせてもらう!
「なあ、新しい隊長さんよ。自己紹介の一つでもしたらどうだい!」
人は種族性別に関わらず多種多様。しかしそんな中で共通するのは、全員が人を含め沢山の生き物を殺しているという雰囲気だ。
「俺は前回サバイバルトーナメント優勝者のリョウと言う。お前達遊撃隊を任された者だ。よろしく!」
「頭、コイツでいいよかい!?弱そうだぜ!」
「手合わせしてみるか?」
「おうよ!」
「リョウ様、一試合頼めますか?」
「分かりました。」
「やろうじゃないか隊長さんよ!」
控え室の中には試合の出来るような闘技場が複数設けられている。それの上に相手と俺は上がった。
「それでは、始め!」
相手は上下黒の忍び装束のような姿だ。それに持っている武器は変な形をした短い両剣とそれっぽさが増している。
「っ!」
早い。早さで言うなら仁と同じくらいだ。けれど一撃の重さが全然違う。弱い!
「はっ!」
基本大太刀は片手で持つ。そしてもう片方の手には小さな核爆破の魔法が常備してある。
「っ!」
ガキンッ!ガキンッ!
ガキンッ!ガキンッ!
連続した両剣の連撃は休む暇も与えない。そして恐らくはスキルもまだ使っていない。
「はっ!」
両剣によって打ち込まれた剣を弾くと大太刀を横薙ぎに振るう。すると相手の体はボヤけると影の中へ消えた。
「貰った!」
初めて放った戦闘中の言葉。けれどまあ、俺も影移動は使えるし…。
「なにっ!」
後ろから現れた相手の影に忍び込むと、仕返しのように後ろへ現れ首に刃をあてる。
「油断したねっ!」
俺の拘束した体はボヤけながら消えると、目の前から両剣を振り上げた姿で現れた。
「俺の勝ちだ、」
完璧に当たると確信しているらしく腹はがら空きで狙いやすい。まあ、準備してなければ間に合わないが、俺の手には炎の核爆破が隙を狙っていた。
ーーーーーー!!!
大きな爆発と共に相手は壁を突き抜けその奥にある壁にめり込む。威力は抑えたがやはり強力なようだな。
「これで分かったか。逆らう者はアイツと同じ目に遇わせる!」
『っ!』
「こんな感じでいいですか?騎士長さん?」
「はい。まさかここまで統率出来るとは…。」
「それほどでも、」
ボロボロになった壁をくぐり壁にめり込んだ相手を眺める。
「お前はどうする?このまま殺してもいいが?」
「……。」
「まあいい。女を殺す趣味はない。」
大きな布を捨て置くと部屋の中へ戻った。ここにいる間は非道で強い俺でなくてはならない。正直今したような対応は心が痛むが仕方のないことだ。




