第27話
「疑似生命にやらせたいんだよな…。」
仕方ない。ミミズを使うか。
「やっぱり持ってかれるな…。」
俺の魔力自体は魔法を発動させる分しか消費されないが、周囲の魔力を吸収するこの魔法は使うと周囲の魔力を奪っていく。その為、魔力の回復スピードが下がる。
「!!!!!!!」
あの強敵だったミミズが再び姿を表した。地中へ隠れていない奴は本当に大きいな。
「ウオオオオオ!」
「!!!!!!!」
二匹の巨大な魔物同士が勢い良くぶつかった。大きな音と、おぞましいレベルの衝撃が空にいても伝わってくる。
「ウオオオオオオオオ!」
巨人の方がミミズを掴む。しかしミミズはその腕にしっかりと体を絡ませ…、
ボキッ、
体に比例する強い力で巻き付けた腕を締め上げると、肩の部分からもぎ取ってしまった。
「ウオオオオオオ!」
「!!!!!!!!!!」
「グロい…。」
痛みを感じないのか巨人は力いっぱい殴り付ける。けれど強い装甲に阻まれミミズには効かない。
「!!!!!!!!」
その仕返しと巨人へ巨体を叩き付ける。やはり巨大から繰り出される攻撃は巨人を吹き飛ばした。
「あ、終わった。」
骨がボロボロで鈍くなった巨人へ体を絡ませると、動けなくしてその頭に俺にも使った毒液を吹き掛けた。そして意識の飛んだ巨人を一気に締め上げて息の根を止めた。
「凄いなお前、」
ゆっくりと地上に降り立つと、その頭をポンポンと叩く。ミミズと言っても…、確かにキモいがヌルヌル感も無く、乾いた殻なのであの独特のキモさは無い。
「!!、!!!」
「ありがとな。」
ミミズを魔晶へ戻すとアイテムボックスにしまう。そして眺めるのはなんとも無惨な姿になった巨人。
「嫌だなぁ。」
嫌だ。けどまあ仕方ない。人を解剖してる気がしていい気持ちじゃないが、仕方ないよな。圧力で潰れた内臓を掻き分け心臓から魔晶を取り出した。
「一生やりあわない!」
俺は決心した。体は血塗れで顔までコイツの血で汚れてしまっている。絶対に、二度とやりあいたくない。
「ふぅ。終わったな。」
確認したいことが。たとえ疑似生命が殺しても俺に魔力及び能力は吸収される。これだけが確認したかったんだ。
「さあさあ、あとは純粋にやってこ。」
確認したいことも終わった。あとは魔物をひたすら狩るだけだ!
「ふわぁぁ。」
少し疲れたから見付けた洞窟に入り、休憩していた。涼しい風が戦闘に火照った体を冷やす。
150匹程を殺した頃、そろそろ疲れたので休もうと言うことで探しているとここを見付けたのだ。
「魔晶も集まったなぁ。」
何匹か運悪く魔晶ごと破壊したが、それでも100を越える魔晶が手の中にある。
「はぁぁぁ。」
これに疑似生命を刻むのは疲れるだろう。まあ仕方ない。ティナへの教授用と予備用の合計70個を除いた30個に色々な疑似生命を刻む。当然使う魔晶は低ランクのオークやゴブリン達のものを厳選して。
「まあ、始めるか!」
気合いをいれると、疑似生命を刻む作業を始める。
そして数時間後、
休憩しながらやっていたがだいぶとかかってしまった。まあ。その作業もついさっき終わり、あのチーズケーキを堪能してる最中だ。
「旨い!」
最高。疲れた後のスイーツってなんでこんなに旨いんだろうな?
「〈あー、リョウ、終わったよ。〉」
リアスからの通信があり終了の旨を伝えた。やはりリアスの方が早かったか。もう太陽も傾いて、夕方と言える時間だった。
「〈分かった。もう少しやりあっててくれ。俺が氷の柱を作ったらそこへ来てくれるか?〉」
「〈分かった。ねえ、どっちが勝ったの?〉」
「〈秘密だ!〉」
「〈わかったよ!〉」
若干拗ねたような声だったがまあ大丈夫だろう。そしてリアスからの通信が切れた頃…、
「〈リョウ兄、終わった~。〉」
「〈分かった。俺が氷の柱をたてるし、そこに来てくれ!〉」
「〈分かった!〉」
ティナは何を聞くでもなく通信が切れた。それにしてもティナは意外に早い。
「まあいい。二人共待ってるだろう。」
涼しげな洞窟から出ると、近くの木々が拓けている所を探し邪魔な岩などを破壊する。ついでにちょっとした広場になるように木々まで斬り倒して。
「氷魔法・氷柱」
魔力から冷気に変わり、一点に集中する。そしてそれが空に向かい放出されると共に氷のゴツゴツとした柱が形成された。
「これで二人も分かるだろう!」
白っぽい氷は冷気を放ち冬をもっと寒くしてる気がする。因みにこの氷柱は溶けることはない。何故なら魔法での形成だから。
「リョウ兄!やっと終わったよ!」
「おっと、、どうした、疲れたのか?」
ホントに疲れたのだろう。俺を見付けた瞬間、ジャンプして飛び付いてきた。
「疲れたよ~。ホント、無茶なこというよ!」
「ゴメンゴメン。けど、ホント頑張ったな。良くやった。」
今回ばかりは俺から抱き締めてやらなきゃな。ホント、俺のひょんな提案からこんな無理させて…。
「んー。リョウ兄~。」
「ティナ…。」
暫くそうしていると満足したようでニコニコしながら離れる。
「けど、ティナやってよかった。なんか、リョウ兄が素直に抱き締めてくれるなんてなかったし!」
「嫌みか?」
「そうだよ!いっつもティナをイジるのにはしてくれるけど…。」
「まあ、そうだったな。すまん、」
「大丈夫大丈夫。だからこそ、今のは滅茶苦茶嬉しかったし!」
「そっか。よかったな!」
「本当はいつもからしてくれてもいいんだけどね!」
「やっぱり皮肉かよ!」
その頃、遠くで大きな爆音が鳴る。
「リアスかな?」
「だろうな。ここの魔物はピンキリだからな。」
ここはゴブリンのような雑魚もいれば巨人のような強者もいる。ミミズのような奴は別格だろうが。
「どうするの?」
「向かおう。やられることはないだろうが、心配だ。」
「だね。」
風狼の魔晶を発動すると、ティナを後ろへ乗せ爆音のした方へ走る。
「大丈夫かな?」
「大丈夫だ。ティナだってそうだ。負けることはないさ。」
風を切りながら走ると、すぐに木々の切れ目が見え穴虎が襲い掛かるのが見えた。
「くっ!」
このままでは追い付かない。『縮地』を使いながら穴虎の前へ滑り込むと、リアスを庇うように穴虎へ背を向けた。
「ぐっ!」
「ガオォォォォッ!」
仕留められなかったと悟った穴虎は一旦引き下がり再び迫ってくる。
「っ!」
右手に構えた大太刀を前方で穴虎の爪を受け止める。
「ガォォッ!」
「はあっ!」
魔力で大太刀を覆い鋭さをあげると振り上げた腕を根元から切り裂く。
「ガォッ!」
「死ね!」
怯んだ穴虎を脇腹から肩にかけて切り上げる。血が吹き出し刃と俺を紅く染めた。
「ふぅぅぅ…。」
穴虎の爪撃を受けた背中からは血が滴っている。ホント、殺した時って血塗れになるよな…。
「リョウ!だ、大丈夫なの?いや、大丈夫じゃないよね!」
「大丈夫、だ。少し休めば…、」
ベトントラッキから手に入れた肉体再生のおかげで傷は少しずつ再生しているが、治るにはまだ時間が掛かるだろう。
「ま、また私のせいで…。」
「だから言うな。リアス、お前が泣いたら助けた俺はどうなるんだよ。助けた意味ないだろ!?」
「っ、」
「な、だから泣くなって。」
血に濡れていない方の手で涙を拭き取る。自分より、リアスが泣く方がどうも痛い。




