第26話
俺は思わず目を覆いたくなった。凍った体はバリバリに割れ、見分けがつかない。まあ、魔晶は凍らないだろうし…、多分。
「どうしたの?」
「俺は魔晶が欲しいんだ。疑似生命を作るときに必要なんだ。」
「あー、そう言えばくれたのも魔晶だったもんね?」
「そうなんだ。あれに魔法で細工すると完成する。今作ってみようか?」
「うん、見てみたいな!」
「分かった。ちょっと待ってろ」
粉々の氷の破片を掻き分けると、意外と早くに魔晶が見つかった。どうやら頭付近に心臓があったらしく、頭の部分に埋まっていた。
「それじゃあいくぞ…。土魔法・疑似生命刻印」
手の内から魔力が吹き出て魔晶に渦巻きながら吸い込まれた。
「これでいいの?」
「そうだ。コイツは姿を決めてないから元々の、だからさっきの気持ち悪いミミズみたいな姿の疑似生命が形成されるんだ。まあ、見たくないがな…。」
「そうだね。でも、見てみたいなっ!」
「そうか?なら…、」
魔力を注ぎ発動させる。やはり疑似生命自体が強大なだけに吸収する魔力も多く、周囲の魔力がゴッソリと無くなったのを感じた。そして魔晶が浮かび上がり魔晶を中心にあのミミズを形作った。
「うわぁぁ。凄い…。」
「だろ?勝負してみるか?」
「無理だよ。絶対に負ける……。」
「冗談だ。お前もそろそろ消えていいぞ。」
リアスへ笑いかけた後、ミミズにそう話し掛け魔晶へと戻す。
「もう!」
「そう言えばリアスは何匹倒したんだ?」
「えーとね、そろそろ50匹くらいかな。さっきティナと連絡とったけど、ティナもそれくらいだって。」
「そうか。なら引き続き頑張るといい。百匹になったら教えてくれ。あと、これ昼食な。」
「ありがとう。抜かり無いね」
「まあな!」
リンって子につくってもらったサンドウィッチの包みを渡す。意外と量があるな…。
「ティナの所に行くの?」
「あぁ。ティナは少々無茶をしそうだからな。全然休んでない筈だ。」
「確かに。早く行ってあげて。」
「あぁ。じゃあな。」
「うん!」
さっきと同じように風魔法を使って一気に飛び上がる。因みに同じように風を使える魔法使いが何故これをしないかと言うと単純に魔力消費の桁が可笑しいのだ。魔法はどれだけ削減した状態でどれだけ威力を出すのかというのが妙技なのだ。だけれど魔力の量を増やせば当然威力は上がる。と言うことで魔力を馬鹿みたいに使ってるのが俺だ。自分で言ってて悲しいが…。
「〈ティナ、何処にいる?目印をくれ!〉」
「〈ちょっと待ってね。今戦闘中だから〉」
「〈了解だ!〉」
指輪の向こうからは魔法や風を切り裂く音が聞こえ、いかにもという音が聞こえる。そしてそれが収まった頃、弓の音が聞こえると共にティナの声が聞こえた。
「〈どうしたの?〉」
「〈少し用事があるんだ。何か目印をくれるか?〉」
「〈分かった!〉」
その後、聞き取りきれないが詠唱が聞こえ、水の柱が空に届いた。
「あそこだなっ!」
残念なことに俺はまだ鳥系の魔物を殺していない。だから姿を変えることはまだ出来ないんだよな。
「よっと。」
俺を包んでた風が放散して木々を揺らした。まあ当然、そこにいる筈のティナもその影響を受けて…。
「ひゃぁ。ビックリしたよリョウ兄。もう少し安全に出来ない?」
「ごめんな。けど仕方ないんだ。また練習しとくよ。」
「うん。まあ、ティナが言えないけど…。」
「初めてにしてはさっきの柱は纏まってたけどな…。」
「そ、そう?そ、それより用事って?」
「あー、そうだった。そろそろ昼頃だろ?だから昼食を持ってきたんだ!」
「えっ、ありがとう。いいの?」
「当たり前だろ?仲間だし。」
「ふふ、言うと思ったよ。」
「…。」
「どうしたの?見透かされたから?」
ニシシと笑いながら肘でつついてくる。若干イラッとしたぞ。
「いいや。相変わらずだなって、」
「もうその手には乗らないよ!」
「そっかそっか。成長だな~。」
ポンポンと頭を撫でて、微笑みかける。少しくらいは効いたらいいんだけど…。
「もう、リョウ兄っ!」
「流石に効かないか。どうだ、一緒に食べるか?」
「っ!」
「そっか。まだまだ残ってるもんな。引き止めて悪かったな。」
咳払いをすると、風を纏い始めた。小石が風に巻かれ周囲を舞う。
「えっ!」
「どうした?」
「えっ、いっちゃうの?」
もじもじとして俺を見つめる。当然ながら俺からは何も言わない。滅茶苦茶話し掛けたい感じだけど…。
「まあ、な。」
「えっ、えーと…。い、一緒に食べようよ!」
言い切った。我ながら少し意地悪かと思うが、正直恥ずかしがるティナと可愛いからどうしてもイジりたくなる。
「分かった。ホント可愛いよな!」
「えっ、えーと…。」
オドオドしてる姿も可愛い。何、俺はどうゆう状況なんだろ。まだアルコール入ってないんだがな…。
「なあお前達。俺達に近付く魔物を狩ってくれ。」
「キュイ、キュィ~!」
「よし、行ってこい!」
10匹程の炎鳥を放ち周囲の魔物避けを作る。食事中に魔物なんて最悪だからな。
「ねえリョウ兄。あの子達ってティナにも作れる?」
「まあ、作れないこともない。なんなら今夜教えようか?」
「いいの?」
「あぁ。まあ、取り敢えずはその為の魔晶を回収しとけよ!」
「うん!」
「じゃあ食べよう。お互いまだまだ残ってるだろ?」
「そうだね。ティナなんてまだ半分しか…。」
「そっか。まあ、頑張ればいいよ!」
「うん!と言うか、リョウ兄もしてたの?」
「まあな。俺の場合魔晶集めの為にな…。」
「そうなんだ。じゃあティナも集めていこっと!」
「頑張れ!けど、その前に腹ごしらえだ。腹が減っては戦はできん。そうだろ?」
「うん!ちゃっちゃと食べちゃわないと!」
もうティナは魔晶収集に気持ちがいってる。これなら大丈夫かな。
「じゃあね、リョウ兄!」
「あぁ。また離れた場所から始めよう。戦闘中に遭遇だけは避けたいからね」
「そうだな。じゃあな!」
「うん!」
今度こそ風を纏うと空に飛び立つ。太陽はもう頂点に達し、完全に昼だな。
「何処かいないかな?」
せっかくなら魔物のとこに降り立ちたい。探すの面倒だし…。
「おっ、見っけ!」
そこにはノシノシと歩く二足歩行の魔物。恐らくじゃなくほぼ100%人型。ついでに肌色だし…。猫背で木の間を歩き回っている。
「んー、どうするか?」
確かに俺がいけば普通に遊べるだろう。けれど、あと一つ試したいことが。
「あの魔物を殺せ!」
穴虎にバイトハウンドに炎鳥。疑似生命に命令を与えると俺は空で観察することに決めた。
「ウォォォォォォォ!」
穴虎の爪撃に怒りを露にした魔物は咆哮をあげ、穴虎を払おうと手を振る。しかし穴虎は巧みに避け、その爪を突き立てる。
「ウォォォォ!」
運良く当たった。穴虎は吹き飛ばされ、木に勢い良くぶつかった。しかしそれの後ろにいた炎鳥と俺が属性を与えたバイトハウンドに…、
「ウォォォォォォォォォォォォォ!」
炎矢、炎爆、水柱、風刃、旋風。様々な魔法が魔物を襲う。しかしそれも効かない。けれど魔物の動きが止まる。
「どうした?」
念のため、新しく疑似生命達を投下する。嫌な予感がする…。
「ウオオオオオオオオ!!!」
嫌な予感は的中した。黄色かった目が赤色に変色すると、動きが普通の人くらいまで早くなり目の前の疑似生命を引っ掴む。
グシャッ!
魔晶ごと握り潰された。確かに魔晶が無くなれば再生はしない。まあ、偶然だろうが。取り敢えず疑似生命達を魔晶に戻し風魔法を使い俺の所へ戻す。
「うわぁぁ。面倒。」
対象である疑似生命が消えたのにも関わらず暴れ続けている。ホント、面倒だ。




