第25話
「ふぅ……。」
意外と風のごり押しで飛ぶと疲れる。闇でも扱えれば変わるんだろうが。
「俺もやろうかな。」
いざ、百連殺チャレンジ!百匹殺せば終了。逆に百匹殺さねば終わらない戦いを!
「『断絶ノ矛』!」
魔力の槍にスキルを使う。よくアニメとかで出てくる付与魔法にも見えるんだよな。
「さあさあ、何処にいるかな?」
狼(風)の魔晶を発動させ、その上へ跨がる。歩くよりもこの方が早いからな。
「ガルルルッ!」
可愛い。やっぱり自分の作ったものには愛着が湧くなぁ。
「ガルッ!」
目線の先にはノソノソとトロイと言わざるおえないスピードで歩くベトベトな魔物が。見た目は三メートル程で分厚い体液に覆われ歩いた場所は体液のせいで汚れている。
「『鑑定』」
固有スキルじゃないがスキルの欄に鑑定があった。自分が持っていたのと仁が持っていたのがあって、結合させると名前は変わらないが精度が上がるらしい。
◈種族
・ベトントラッキ
◈称号
・無し
◈固有スキル
・『力逃液』
◈一般スキル
・『液状化』
・『肉体再生』
・『強酸』
結果、魔物の名前はベトントラッキ。スキルから見るに物理は効かなそうだ。けど…、
「『断絶ノ矛』」
絶対に絶ち切る刃は液体の体だろうと両断する!
ブシュゥゥ!
切り口から吹き出た血液らしき茶色い液体が木々を汚し、ついでに俺も汚す。
「ーーーーーー!」
切り口が大きく開くと、俺を丸のみにしようと襲いかかる。
「はあっ!」
その馬鹿みたいに開いた所に斬撃を叩き込む。斬撃が放つ爆音が辺りを揺らし、ベトントラッキの体を真っ二つに両断した。終わりだな。
「なにっ!」
切り飛ばされた上側の体が俺を包み下側の体がそれをより包み込んだ。
「熱っ!」
びっくりした後は熱い。これはヤバいな。
「仕方ない。氷魔法・氷央爆」
俺を中心に放つ氷の礫は包み込むベトントラッキの体を突き抜け、中からも外から冷気の爆発を起こす。液体の体を持つこいつなら、冷やすのが一番だよな!
「ふぅ。危なかった。」
その時、何かが俺の体に流れ込み魔力が満たされ、何か他の物が俺に染み込んだ。
「これが意識した後のスキルの感覚か…。」
恐らくは『魂喰い』と『食物連鎖』による魔力回復と敵情報の吸収だろう。これで俺もベトントラッキと同じ種族になれるんだ……。嫌だ!
「次行こう、」
一瞬自分がベトントラッキになる状況を想像した。超キモい…。
「ガゥッ!ガウッ!ガウッ!」
「ホントにありがとな。お前がいなけりゃこんなに進まなかったよ。」
既に仕留めた数は七十を越えている。まあ、やろうとしてたことがあと2つだけ残っていた。
「ワォーーン!」
「『鑑定』」
もう面倒なので詳細は割愛する。あれの名前はムーンウルフ。影系のスキル持ちだ。
「ガルルルルルッ!」
見た目は灰色の毛皮に紅い目玉。普通の狼と大差ない気がする…。
「煩い、『魔力錬成』」
ゴロゴロゴロ…、ドカーーーンッ!
落雷。別に魔法を使わなくても現象を作れるんだからこれで構わない。それに現象だけしか使えないが、威力はこちらの方が上だ。
「ガルッ!ガルルルルッ、ガルルッ!」
「よく生きてたな。尊敬に値するよ。」
身体中から黒い煙をたてながらも眼はまだ死んでいない。足元の自分の影にムーンウルフの体が沈み始めた。
「逃がすかっ!『魔力錬成』」
魔力が手の中へ収まり、形作っていく。それは拳銃、デザートイーグル。映画などで聞き調べたことがある極めて強力な拳銃だ。
バンッ!
火薬の臭いが俺の鼻を刺激する。そして生臭い血の臭いも。
「ふぅ、、危うく逃げられるとこだった。」
スキルが途中で止まったことから普通に地面の中に足が埋まった状態になってしまった。まあそれも片手で引き出すと、魔晶だけを回収した。
「これで新しいのが手に入った。」
もう七十も倒したと言ったが被らなかったのは始めのベトントラッキとこのムーンウルフだけ。他は全部霊鹿や穴虎などの入手済みのものばかりだった。
「よし行くぞ!まだまだ残ってるんだ!」
ドカンッ!
「ぐわっ!」
「ガウッ!」
急に足元が爆発すると、地面から土の槍が俺達を掠めた。意外と深めに…。
「ぐっ、なんだ!」
ランクの低いバイトハウンドには耐えられなかったらしく、魔力の粒子と化し消え失せた。
「!!!!!!」
「キモっ!」
地面から五メートルは越える巨体を持ち上げたミミズのような奴が牙の生えた口らしき所を大きく開いてく。それも5メートルってのは見えてる分だけでだ。鎌首を持ち上げたような姿をして、体自体はまだ土の中にあるようだ。
「!!!!!!」
牙が煌めき口内から紫色の液体が俺を襲う。間一髪のところで避けたが液体の当たった所は煙をたてて溶けていった。
「危ね。当たったらタダじゃすまないな。」
冷や汗が流れてきた。あれが連続で放たれたら危ない。
「!!!!!!」
「なんだっ!」
体をうねらせたと思うと、地面が割れ俺の後ろから奴の一部が姿を表した。
「マジか…。」
出てきた体は約6メートル。それでもまだ土の中に残ってる部分がある。
「!!!!!!」
「負けるか!」
その大きな口を俺に向け飲み込もうと突っ込んできた。避けられない。
「ぐおぉぉぉぉぉぉ!」
武器を直すとその牙を掴み勢いを受け止める。はっきり言ってイノシシの数倍はあるかと思える力だ。全くもって抑えが効かない。
「!!!!!!」
ヤバい。口の中に紫色の液体が見えた。当たれば完璧アウトだ!
「火炎魔法・獄炎纏」
「!!!!!!」
ドス黒い炎が渦巻きミミズを焦がす。けれどそんな炎もミミズがジタバタとするだけで掻き消された。
「化け物が!『断絶ノ矛』」
向かってくるミミズの頭を力いっぱい殴り付ける。グシャッという音と共にミミズの表皮は砕け内部を抉った。
「!!!!!!」
ミミズは悲鳴をあげるように仰け反ると、そのまま体全体を表した。
「恐ろしい…。」
その巨体に愕然とした。その体は15メートルを越え、体の殻は太陽の光に不気味に煌めいている。
「!!!!!!」
滅茶苦茶怒ってるな。牙は4本。よく見えるようになった口内は毒液にまみれている。
「仁並みに勝てる気がしないわ……。」
いつの間にか奴の体は俺を包むように包囲していた。それも俺が逃げられないようにとぐろを巻いて…。
「!!!!!!」
逃げられない俺になった俺にその危ない口を開く。
「氷魔法・核爆破」
絶対に使いたくない技だった。冷気と氷を宿す爆風はこいつを殺し森を凍り付かせるだろう。それでも最大限の結界で俺達を覆い被害に備えた。
「!!!!!!」
一歩、俺の方が早かった。俺の手の中には爆発の余波とその圧力が渦巻いている。さあ、凍り尽くせ!
ーーーーーーーっ!!!!
音に感じられないような爆発が一気に放たれ周囲を必殺の冷気が吹き荒れる。
「少しは仕方ないか?」
結界の中にとどまったものの、やはり漏れ出た余波が周囲の木々を凍らせてしまった。
「……!」
まだ生きてるのか!と思ったが、ガサゴソとしたのは草村の中からだった。
「誰だ!?」
「私だよ、リアスだよー。」
そう言いながらヒョコッと頭を出すと、近付いてくる。
「少し手こずってな。ついやり過ぎてしまったんだ。」
「やりすぎじゃない?」
「まあな。コイツはそれだけ強かったんだよ。」
凍り付いたミミズをポンポンと叩くと、パキパキという音と共に崩れ去った。
「あちゃぁ。大変だ…。」




