第23話
「そんなこと言うなよ。俺だって会いたかったんだから!」
「リョウ…、」
ヤバい。抑えられない。今ここにいると感じられるだけで込み上げてくるものがある。
「急に、ごめん。びっくりしたよな?」
「大丈夫。嬉しかった。リョウがあたしのこと、ちゃんと見てくれて。」
「当たり前だろ。本当はあそこに居ときたかった。けれど、約束もあったし絶対に違えられなかったんだ。」
「分かってる。元々あたしとリョウはそんな関係じゃない。だからこれ以上踏み込むつもりはないの。けど、お願い。今みたいになるかもしれない。けど、たまには友達として、遊びに来て?」
「……。」
「ダメ?」
「いや、また来るよ。また…。」
次にここに来れるかさえ分からない。ここが戦場になるまでそう長くはないのだ。
「そう。またね、」
やはりその背中は悲しげだ。俺の心にチクチクとした痛みがはしる。
「またな。絶対にまた会おうな。」
今一度抱き締めると、その暖かさを感じた。本当に言葉では表せないな。この感情は……。
「ありがとう、会いに来てくれて。あたしちょっとだけだけど、ホントに……、よく分かんないや。けど、嬉しかったよ」
「…。じゃあな、」
スッキリした。来るまではドキドキしたけど会ってみると意外に大丈夫だった。本当にスッキリしたな。
場所は変わってアクセサリーショップ。店内に入ると店員1人いずに上への階段だけ扉が開いている。
「静かだな。」
防音対策かな。外で微かに響いていた飲み会の声は一切聞こえない。
キィィ、
蝶番の音が鳴り二階への階段が開く。階段はミシミシと音を建てる。店の外見とは違いこの階段自体は古い物のようだ。
「ここだな、」
中からは薄い灯りが漏れ出ていて、扉の前を微かに照らしている。
「失礼します。」
そう言いながら扉を開ける。すると中はベッド、本棚、机などの必要な物が置かれオシャレなカフェのような音楽が流れる。そんな部屋の真ん中に佇む黒いドレスを着た美しい人がグラスを傾けていた。
「いらっしゃい、転生者さん。私はダークエルフのシーラ。以後、お見知りおきを。」
「丁寧にありがとうございます。一応冒険者のリョウです。」
「リョウさんですね。それでは早速本題に入ってもよろしいですか?」
「はい。」
「単刀直入に申します。ここは数日のうちに戦場になるでしょう。今すぐ避難しなさい。」
「はっ!?」
「避難です。転生者はこの世界にとって大事な情報源です。そんな貴方をこんな場所で終わらせるわけにはいきません。」
なんか複雑だな。人として生きろではなく、情報源として生きろ=道具ではないのか?
「ご忠告感謝します。しかし自分は逃げません。それでは、」
「待ちなさい!」
そんな大声を無視し部屋を出た。実は少しイライラしている。道具、だもんな…。
「お止まり下さい!」
階段の扉を開けた所には槍を手にした店員達が。いつ、どうやって集めたのか…。
「分かったでしょう。言うことを聞きなさい。」
後ろからはゆっくりとドレスを揺らしながら歩いてくるシーラが。
「夜くらいなら御一緒しても構わないのですよ。今夜どうですか?」
「ちっ!喧嘩売ってるのか?」
もういい。人を道具のように思いやがって!
「何を怒ってらっしゃるのです?私が‥」
「黙れ。俺は帰らせてもらう。」
最近ではすっかり常用となった大太刀を振りかざし、真ん前にいる店員の武器を絶ちきる。
「ひやっ!」
「スマンが仲間以外に情けを掛けるつもりはない!」
こいつらも単に雇われているだけなのだろう。しかし、今の俺には関係無い。ただ前を阻む邪魔者達だ!
「じゃあな、」
店の扉をバラバラに切り裂くと夜の暗闇へと姿を消した。
「さあ、次だ」
今いるのは壁外の森の中。大体だがこうなることは予想していた。シュラに会ったのは嬉しい誤算だが。
「まずは‥、」
今夜しようとしているのはスキルの確認。一般スキル等は沢山あり調べていると面倒なので固有スキルだけを調べることにする。
「まずは…、」
俺の持つ固有スキルは以下の通りだ。
・『魂喰い』
・『魔力錬成』
・『食物連鎖』
・『無限魔力』
・『断絶ノ矛』
・『結合分裂』
全て意味のわからんレベルの高性能なのだが、まずは一番上の『魂喰い』から。
鑑定によると『魂喰い』は殺した相手の魂を自分の魔力に変えるらしい。俺が魔物を殺した時に感じる正体はこれだな。
そして次に『魔力錬成』。
こいつはまだ使ったことが無くて分からないが、魔力を使い知っている物を作り出せるらしい。チートだっ!
またまた次に『食物連鎖』。
こいつは殺した相手の能力を完全に奪う。俺の半端ない量のスキルもこれだな。
そして最後に『無限魔力』。
こいつは魔力の上限が無くなるスキル。だから時間のある限り俺の魔力は無尽蔵だ。
「ちょっと待て!最高じゃないか!?」
殺せば魔力と能力が手に入り、魔力の上限は無い。そして溜まりに貯まった魔力は錬成させられる。
「あとで試そう!」
心のメモにそう書き込むと、次の固有スキルの確認に取りかかる。残り2つなのだが、この2つは仁から譲り受けた物だ。
1つ目は『断絶ノ矛』。
これは付与系のスキルのようでこのスキルを使った者はどんな物でも絶ちきり破壊する。仁が最後手に使ってたのはこれか。
そして2つ目は『結合分裂』。
これは対象物を結合させたり分裂させたりすることが出来るスキルだ。例えばカフェオレを珈琲と牛乳に分けるだとか、珈琲と牛乳を結合させカフェオレにすることもできる。また、本来じゃ合わない出来上がってる剣と槍を合わせて矛にすることだって。
「これで全部だよな。」
固有スキルはこれで全部だ。まあ、固有スキル持ちの生き物を殺せば手にはいるだろうが、殺った時でいいだろう。
「さあさあ、それではお待ちかねの…。」
『魔力錬成』の出番だ!
取り敢えずは今目の前にあるこの大岩を…。
「『魔力錬成』」
目の前の開けた場所にイメージした。すると白っぽい粒子がその場所に集まり形を作る。そして目の前の大岩そっくりの大岩が作り出された。
「凄ぇ…。」
見た目形は全く同じ。欠けてる部分や窪みの深さまで同じ。こうなると記憶内の物はどうなんだろう。
「『魔力錬成』」
次に錬成したのはチーズケーキ。俺がこの世界で初めて食べたスイーツだ。
「旨いっ!」
深さのあるチーズ感と程よい甘さがたまらない。そしてこの舌触りも!
「あの時と同じだ…。」
変わらないあの宿の味だ。正直言って最高!
じゃあ見たこともない物は…、
「『魔力錬成』」
次に作ったのはこの世界のポーション。悪酔いした日に調べたアルコール分解剤だ。
「作れちゃった…。」
もしもの時の為にとっておこう。次だ!
「『魔力錬成』」
今度試したのは現象。取り敢えずは旋風だ。
魔力がイメージした場所に集まると渦を巻き旋風を作り出した。
「最強だな…。」
そして最後に試すのは禁忌と言わざるをえない。今でもするかは迷っている。
「『魔力錬成』」
イメージした場所には骨が形成され次に筋肉、内臓、血液、肌等々順に形成され作り出されたのは…、
「ワンッ!」
犬だ。この世界にいないであろう向こうの何でもない犬。元気に吠えると俺に近寄ってくる。しかしそんな可愛い犬をよそに、俺はこのスキルの恐ろしさに怯えていた。
「使いどころは考えなければ…。」
心は痛むがその犬を強制的に魔力還元すると俺の魔力へと戻す。言葉では言いたくないが、この言葉の意味、分かってくれるだろう?




