第22話
カランカランッ
「いらっしゃいませ!」
入った瞬間、店員の声に歓迎される。
中にいる客は俺達と数人だけ。ガラスケースの中に綺麗に飾られるアクセサリー。俺は店の清楚感に好印象を持つ。
しかし何故か二人共緊張していて、足が進まない。
「どうしたんだ、二人共?」
「リョウ、ちょっと緊張しちゃって…、」
「緊張、何処らへんが?」
「全部だよ。」
その時、店員の一人が俺に近付きお辞儀をする。
「わたくし、ここの店長補佐をしているアルルと申します。店長がお呼びです。一緒に来てくださいますか?」
あくまでも任意同行と言うことか。まあ俺に行く理由なんてないし、大切な二人との時間もあるしパスで!
「いや、また伺うと伝えてくれ。店長の名前だけ教えてくれるか?」
「はい。店長の名前はユウカ・ナカモトと申します。」
「分かった。では失礼する。」
「ごめん。独断で出てきてしまって…。」
「逆に私は助かったよ。あそこは緊張して疲れちゃうよ。」
「……。」
「さあ行くぞ。他の店もマークしてんだ。」
「手際良い~!」
「リョウ兄っ!」
「約束したろ?ちゃんと買いにいこう」
「うん!」
マークしてるのは合計三店舗。1つは嫌な予感がするから最後にするとして、まずは近い方から!
カランカランッ
「あら?いらっしゃいませ~!」
低いながらも粘りのある声が店内から聞こえた。その声と共に俺達三人の背筋はビクッと震えた。
「無理!」
「私も…。」
やっぱりそう言うと思った。
商品は悪くない。店の内装も。けど1つ欠点が。それが……、
「オカマなんだよな、」
聞いた通りそこの店主及び店員はバリバリの男性にも関わらず女装をしているオカマバーならぬオカマショップだった。それも完璧にするならいいのだが、脛毛も剃らず、髭も薄く残っている。正直キモいのだ。
「出よう、」
「出よう、」
「出よう、」
満場一致。俺達は回れ右をすると、店を出た。
「次は大丈夫なの?」
「あぁ。次はまともだ。その次はヤバいが…。」
「リョウ~!」
「仕方ないだろ。それくらいしか無いんだってよ。」
そんな愚痴を吐いてると、次の店につく。まともだと聞いたが、さっきの店を見た後では信用できない。
まず外装は普通。入っていく人も普通。外から見える様子も普通。
「大丈夫。入ろう」
「…。」
「…。」
「ほらっ、」
カランカランッ
店内は静かで雰囲気も悪くない。適度に広く、壁等に備え付けられている棚には整頓して商品が並べられていた。
「やっとまともな所についたよ…。」
「さっきの店といい、ここ以外まともな所がないよ。」
「まあまあ、そう言わず見てってみろよ。俺も少し見てるし。」
「分かったぁ。じゃあね。」
以外と広い店内を俺は右側を、ティナ達二人は左側を物色する。
そして数十分後、
「ティナはこれにする!」
持ってきたのは小さな髪飾り。白い羽がついていて、大人しい感じだ。
「分かった。じゃあ行こう。」
既に俺の買い物は済んでいる。あとはティナのアクセサリーを買って、公園にでも向かうかな。
ここまで来る間、妙に腹が減り時間を見るととうに昼は過ぎていた。ということで急遽近くの店で昼食を済ましここでノンビリしている。
「お腹いっぱい。こうやってノンビリしてるのもいいよね?」
「そうだな。俺はよくここに来るんだ。」
「そうなの?」
「あぁ。こんな雰囲気が好きなんだ。」
「じゃあまた私達も来ようよ。ここに!」
「そうだな。来れるなら、来よう!」
「来れるなら、来れるならってどういうこと?」
「……。」
「ねえっ!」
「ここはあと数日で戦場になる。そうなればこんな風景もボロボロに壊されてしまうだろう。」
「そんなっ!」
「リョウ兄、それは本当なの?」
「確定だ。信用できる奴からの情報だからな。」
「……。」
「ティナ達には…、ティナ達には何が出来るかな!?」
「分からない。けれどギルドからの召集はあるだろう。その時に駆けつけて大暴れすれば良い。なんてことない。相手は人だ。」
「そうだけど…。」
「……。」
「俺な、そんな時でも離れられないように、これを買ってきたんだ。受け取ってくれるか?」
『勿論!』
俺の手の中にあるのはシンプルと言わざるおえない指輪が2つ。本当に装飾の欠片もないが、その代わり、小さな魔晶が埋め込まれている。
二人はそれを手に取ると自分の薬指に嵌める。
「これは魔力を込めると他の2つと会話が出来る魔法具だ。けれど欠点として1つが壊れると他2つも壊れる。」
「いいじゃない!壊れるってことは何かあったんでしょ。危険信号にもなりそうじゃない?」
「そう、なのかな?」
「そうだよ!」
「そうだな。これは俺達が一緒の証だ!」
透明な魔晶がキラッと光る。
「置いてかないでね…。」
「あぁ。絶対にだ!」
静かな夜の風が俺を撫でる。
昼とは違う美しい月光が俺を照らした。あれから宿に戻った俺達は夜になり床についた。
当然ながら二人は俺の部屋で寝ている。
「そろそろ行くかな。」
昼間の店へ向かわなければ。約束は約束だ。
「それにしても静かだ、」
あと数日で戦場に変わるとは思えないほどノンビリしている。ここが壊されるのは、俺とて嫌だから。
「歩くか、」
いつもなら障害のない屋根の上を走っていくのだが、何故かノンビリしたい気分だ。ゆっくりと行こう。
「ん、?」
通りかかった店内からガヤガヤと騒ぐ声が聞こえる。中を覗くと宴会の最中だった。やはり領民に知らせる気などないようだ。くそっ!
「ヤバっ!」
何も考えずフラフラと歩いていると、鍛冶屋の近くだ。このまま通れば鍛冶屋にぶつかる。そして下がると滅茶苦茶遠回りになる。
「見付からなければ…、いいよな。」
暗い夜道を身長に進む。電灯もないこの町では数メートル先に人が居ても分からない。けれどそんな中を進み人を拐う奴等もいる。リアス達にも警戒させなければな。
「そろそろ通り越すか?」
武器の煌めく刃が俺を照らす。店先に並べられている武器類だな。
「リョウ…?」
「シュラか?」
目の前には人影。明かりもないこの状況では声だけが頼りだ。
「うん。元気?」
「あぁ。シュラも元気か?」
「うん。元気だよ。」
「そうか。良かった…。」
「……。」
「……。」
「なぁ。こんな夜更けにどうしたんだ?」
「えーと…、リョウはどうしたの?」
「俺は少し店に用があってな。そこの店長と話をつけにいくんだ。」
「そうなんだ。もう行く?」
「そうだな。行かなきゃな、」
「そう…。じゃあね、」
顔は見えないが悲しそうな表情、声をした気がした。まだ顔が見えない分マシだが、もし昼間に会ったなら俺もヤバかった気がする。
「またな…。」
そう呟き歩いていくと、後ろから衝撃が伝わる。そしてそれは俺に抱きついていた。
「ごめん。ごめん…。あたしやっぱり無理だったよ。」
涙声で頭を擦り付けてくる。俺もだ。俺も振り向けばシュラみたいになる。
「……。」
「あたし、手紙にはあんなこと書いたけど、無理しちゃってた。やっぱりあたし、リョウが好きだよ。耐えられなかったよ…。」
「……。」
「ねぇ、何か言ってよ。」
「……。」
「リョウ、リョウはあたしのこと嫌いなの?」
「……。」
「ご、ごめんね。急だよね。あたし1人で何言ってんだろ。ホント、ごめんね。」
急いで数歩下がる。けどその頃には俺なんて両目から涙が出ていた。ホントになんでこんなにも…。
「そんなこと言うなよ!俺だって、俺だってな…。」
思わず抱き締めてしまった。本当に耐えられなかったんだよ。声だけで分かるんだ。そんな悲しい声するなよな。




