第20話
それはそうとこんな練習が出来るのは闘技場を貸し切りにしているから。そしてそれに伴い他の人達は闘技場から出ていった。
「さあ、始めるか!」
二人の相手はゴブリン三匹。俺の相手は穴虎四匹。当然超ハードモードだ。
「ガオオォォォォ!」
「うおおぉぉぉぉ!」
ガキンッ!
牙VS刃の筈なのに金属音のような音がして、静寂が広がった。そしてぶつかった牙はバリバリに砕けた。
「ガオッ!」
「俺の勝ちだ!」
砕け驚いた穴虎の口へ刃を突っ込み喉ごと貫いた。そしてそれを脳天へと切り上げる。
「お前達はこないのか?」
残りは風と水と土だ。さあどう来る!
「ガオオォォォォ!」
「ふっ!」
虎というのは本来群れない獣だ。
そのせいか連帯性という言葉は微塵も無いような戦いをする。ホント、獣だな。
「ガオォッ!」
「!」
振り上げられた前足は後ろに下がり回避。その場所を狙う土の槍は大太刀の刃で切り裂き、向かってくる穴虎は顎を蹴りあげる。
「そろそろ攻勢に変わろうかな、」
流石に守ってばかりじゃ疲れる。
少しは息抜きだ!
「はっ!」
「ガオォッ!」
ガキンッ!
またしても爪と刃のぶつかり合う音が耳に残る。まあ、そんな音をいつまでも引きずる時間は無く、すぐに刃を突き立てる。
「これで二匹目。あとは水と風。」
水はさっきから隙を窺うような仕草を見せる。もしかすると属性の影響かもしれない。そして風は積極的に攻撃してきて、こちらが攻撃する前に攻撃してくる。鬱陶しい。
「先に水だ!」
刃を煌めかせ水に覆われた眉間へ刃を押し込もうとしたその時、隣から急速に魔力の反応が近付いてくる。咄嗟に避けたが、どうやら風の魔法みたいだな。
「止めた。先にお前にする!」
そう言って俺は鉄製の眼帯を外した。中には魔力を放ち紅く光る魔眼が…。
「ガオォッ!」
「散魔眼!」
「っ!」
風魔法とはいえ見えない物ではない。
なら簡単。散魔眼の効果で魔力を散らせばいいだけのことだ!
「ふっ!」
驚き動きの止まった虎へ短剣を投げ飛ばす。こないだまで使っていた武器だ。使わなくなったとは言え使えないわけじゃないのだ!
「あとはお前一匹だ!」
「ガオオォォォォ!」
最後まで諦めないとでも言うように大きな雄叫びを上げるとしなやかな体を使い瞬く間に俺の懐へ潜り込む。
「残念だったな、」
既に俺の手には短槍が握られており、しっかりと穴虎を貫いていた。
「じゃあな、」
槍を回しながら一気に引き抜く。それだけでも十分の致命傷だが、用心にこしたことはない。力一杯顎を蹴り飛ばした。
「ふぅ。疲れた。」
返り血が俺を濡らし刃を濡らしている。
まあ、それも数秒で魔力の粒子となって消えていった。
「さてさて、そっちはどうかな?」
場所は変わりリアスの所。
紅く炎を放つ手がリアスに触れようとした。
「っ!」
触れられたら当然熱い。だって、炎なんだから。ビクッと手を引くと、槍の穂先を眉間へ突き立てようと突きを放つ。けどまあ、変な体勢からの突きは殺すまでに至らず、防がれた手を使えなくするくらいしか出来なかった。どうやら殺すことに抵抗はないようだな。
そして少し離れた所。ティナは…、
ヒュッ!
「ゴブリンってこんなに弱いんだ。これならもっと増えてもいいけどなぁ!」
初めて持ったとは思えない程弓の扱いが上手く、もう達人の域ではないかとも思わせるレベルだ。当然殺すことに一切に躊躇も無い。
「じゃあもう少し増やしてやるよ!」
魔晶を追加で二匹。これで炎のゴブリンが五匹になった。まあ、大弓の的にはこれくらいが丁度いいだろ。
「リョウ兄ー!」
「怒るなって。増えてもいいって言ったのはティナだろ?」
「そうだけどー…。」
「頑張れ頑張れ。ほらっ。もう囲まれてるぞ、」
「えぇー!ちょっと大弓じゃあ無理じゃない!」
「そう言う時は?」
「リョウ兄ー!」
「炎魔法・炎嵐」
「グギャッ?」
「グギャギャ、グギャァァァァァァ!!!」
「流石リョウ兄!」
「まあな。あいつらはすぐ復活するし、次は遅れをとるなよ。」
「うん!」
ヒュッ!ヒュッ!
それからは矢が射られる音と、短い悲鳴が聞こえていた。
「はあ、はあ。疲れた」
「ホントに。手が痛いよ、」
「二人共頑張ったな。三十匹以上はやったんじゃないか?」
「えー、これでまだ三十匹!?」
「まあな。」
「……。」
「どうだ、武器は粗方馴染んだか?」
「嫌なくらいにね。そのせいで腕がパンパンだけど…。」
「そうかそうか。それはいいことだ。今日はしっかりと休めばいいさ、」
「そうさせてもらうよ。本当に疲れちゃった。」
「ティナも!弦を引きすぎて手がー!」
「擦れたか?」
「うん…。」
うわー、酷い。弦の跡がくっきりと関節の部分に擦り傷として残っていてる。
「薬だ。塗っとけば多少はましだろう」
これは武器全般に言えることだが、使いすぎると当然手は擦り傷等でボロボロになる。だから必要だろって親父さんがくれたものだ。
「ありがと。」
微笑みながら受け取ると、礼を言われる。改めて言われると照れる。
「俺はもう少しするが、二人はどうする。先に帰るか?」
「とんでもないよ!私はここで待ってる。」
「ティナもだよ!」
「ありがとな。じゃあここで待っててくれ。土魔法・製作」
石製の机と二人分の椅子を作り出す。本当に最近思うが、これって反則的だよな。
「凄い。反則的だよ…。」
「リョウ兄だし…。普通じゃないし…。」
リアスは素直に感心。ティナは複雑な表情で俯く。まあ、魔法を使う人からすれば、現代知識のある俺の魔法はどれだけ反則的か分かるだろう。
「まあいいや。始めるか!」
今回挑戦するのは核爆発に似た現象。その為二人には全力の土魔法による見えない結界を張る。
「リョウ兄?」
「危ないからな。待っててくれ、」
エルフであるティナにはこの結界にどれだけの魔力が込められているか、そしてそれが物語る魔法の危険性が分かるようだ。
「ふぅぅぅぅ。」
ひそかに流れる風の音が聞こえる。
集中した雰囲気が魔力への意識を高める。
「やるか!」
気合いを入れると核爆発の原理を再現し始める。まあ、再現すると言っても魔力による付与能力も込めているので、核爆発と言えるかも微妙だ。
内容はこう。比較的小さな属性球を一つ爆発させてその余波で他の属性球も爆発させる。この時の属性球とは炎ならば炎球を極上に圧縮した物を指す。そしてこの作業をある一点に加速させながら行うと、その一点を中心に魔法が発動。周囲へは属性球の属性による魔法が吹き荒れるということだ。
「…。」
取り敢えずやってみよう。やってみなきゃ始まらないから。
「ふぅぅ。」
再度深呼吸をすると、両手を前で合わせる。
その中では見えるか見えないか分からないような炎の属性球が次々と生成されている。ちなみに手の内側には魔力による結界が生成されていて、逃げようとする魔力の渦を空気中に拡散させないようにしている。
「第一段階…、」
次に生成した炎の属性球を爆発させた。すると結界内は一気に爆発が連鎖し瞬く間に豪炎が覆った。まだだ!
この結界を一ミリ程度に圧縮すると、爆発による起こる炎の圧力も無理矢理抑えられることになる。するとどうなるか…、
「爆発だ!」
圧縮した結界を一気に解放する。すると今まで押し込まれていた炎や爆発、その他諸々達は闘技場を瞬く間に破壊しつくした。因みに闘技場は壊れても弁償しなくてもいい!




