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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
暗躍の将軍
192/619

第191話

「どうぞ!」

「ありがとう。疲れたろ?」

「全然! これくらいどうっことないよ!」

そう言って大量の魔晶、宝石を抱え爽やかに笑うリアス。その後ろの皆も「うんうん」と頷いている。感謝、と言うかその心に感服だな…。

「本当にありがとな。何か‥」

「必要ないよ。早くここから出てまた遊びたいなっ!」

「……。ふっ、いいだろう。ユウリ、サン、行くぞ!」

「ん…」

「うん!」

まだ周囲に砕けた宝石が舞う中、魔力が俺達7人を中心に渦を巻く。そして俺達3人は一斉に呟く。

『影移動!』

跡形もなく消え去る俺達。そこに残るのは魔法によりボロボロになった洞窟を鮮やかに彩る宝石の舞だった。


「今更だけどユウリもつかえたんだ~」

「ん…。俺は刺客としての役割も担っていたから。影くらいは操れる!」

「そうなんだ。サンも?」

「サンは元々シャドーガルムだからっ!」

「そうなんだ。でリョウは?」

「シャドーガルムと殺り合った時に手に入れた。ん、元々あったかな?」

「そうなんだ…。やっぱりリョウだけは反則だね」

そうやって苦笑するリアス。他の皆も同意というようにうなずいていた。

「それにしてもどうして霊が現れたんだろ? 初めはいなかった筈じゃ‥」

「恐らくは初めからいたんだと思う。迂闊だった…。もっと確認すれば分かった筈だ…」

「仕方ないよ。私達も気付かなかったから…」

俺の言葉に即フォローをいれてくれるリリス。それでもこの中で1番の実力者である俺が気付かなかったのは油断だったな…。

「ねえ、それよりそろそろ帰った方がよくない?」

リリスの言葉に空を見上げると西の空が紅く染まっていた。木々の合間から俺達を照らす夕陽は美しく湖面を揺らしている。

「ここで野宿ってのは?」

「ダメだ。一応仕事だぞ?」

「んー、そうだね。じゃあ帰ろっか!」

「ん、皆はそれでいいよな?」

「ティナはいいよ!」

「俺は従う」

「サンはお父さんと一緒だよ!」

「1人じゃ帰れません」

全員の同意を得た俺はそのまま魔力を集め始める。それと共にサンとユウリも魔力を集め始めた。

『影移動!』

3人でやれば楽に魔法も使える。必要とされる精密さが下がるんだろうな。

ドサッ…

「どうして俺の部屋なんだ?」

「サンだよ。これが1番マシでしょ?」

「はぁぁ…。取り敢えず降りるぞ!」

俺はそう告げると部屋を出る。宿の部屋に人7人が入るなんてキツイ…。

「ねえ、今夜は誰?」

「人聞きが悪いぞ。基本的には1人だ!」

「えー、なら私が!」

「ダメだ。少し今日は疲れた…」

それでも食い下がってこようとするリアスにポンと拳を落とすと階段を降り始める。そういえば部屋って何部屋借りてたんだっけな…。

「明日は?」

「取り敢えずは騎士団の所へ挨拶だ。これでも将軍ということになってるからな…」

「いつの間に…」

「ケルベロス討伐ということで頼んでみた。俺がやりたいことには多少の権力が必要だからな」

「そっか~。ティナ達はリョウ兄についてくだけだからね~」

俺の方を見てニコッと笑うティナ。向こうの世界で俺にこんな笑みを向けてくれた者はいただろうか…。そう言えば2人だけいたな…。

「なにしてるの? 早く座ろう?」

「あ、あぁ…」

今はそんなことどうだっていいな。俺に必要なのは昔のことを思い返す時間じゃない。俺達を、コイツらを脅かす害虫を駆除する時間だ。

「どうしたの?」

「何でもない。明日から、大変だなと思ってな」

「そう? サンもユウリも増えたし仕事としては楽になるんじゃない?」

「まあな。けど…」

俺は一応クリスから位をもらっている。それは権力を行使出来る代わりにその分の仕事はこなさなければならない。と言うことは危険なモノも必然的に増えてくる筈だ。

「大丈夫だよ。なんとかなるって!」

「………そうだな。考えても仕方無いよな!」

逃げた感が否めない。が、これでいいんだ。これについて深く考えると俺は後悔してしまいそうだ。

「ふぅぅ。さあ、皆食べよう。腹減ったろ?」

「ふふ、そ、そうね!」

「何笑ってんだ!?」

「話変えたね?」

「………」

「ふふ、そんなリョウも大好きだよ!」

俺の隣でイタズラに笑うリアス。少し悔しい感じもしなくもないがまあいい。俺はその流れで夕食を済ますと足早に席を立つ。

「俺は先に上がらせてもらう。おやすみ~」

『おやすみ~』

俺は全員の声を背に受け階段をのぼる。今夜はやりたいことがあるんだ…。


翌朝…、

「くぅぅ。よく寝た~」

布団を弾きベッドから躍り出る。魔法で服を着替え大太刀を掴むとドアノブに手を掛ける。しかし…

「…………」

気配がして振り向く。するとそこには静かに丸まって寝転ぶリアス。俺、1人で布団に入ったよな?

「…………」

1度持った大太刀を机の上へ置くと物音も立てずにリアスへと近付く。幸せそうに寝転ぶ姿は確かに可愛いし向こうの世界での自分じゃ真っ赤になってただろう。しかし俺は…慣れすぎた。

「すぅ、すぅ、すぅ…」

「…………」

ここまで近付いても起きない。仕方がないので魔力を右手に込めていく。

「これで起きなかったら冒険者としてアウトだな。火炎魔法・水素性爆破」

バンッ!

理科でやった実験を再現してみる。魔力により水素を手中に押し込めそこへ火を引火。大きな爆発音は部屋の中を反響した。

「ふにゃ…。リョウ?」

「おはよう、リアス。さてどうしてくれようか?」

「お、落ち着こう、ね? リョウ、こ、怖いよっ!」

獲物を追うよりも速いスピードで背後に回ると腕の中へリアスを収める。俺の方へ振り向こうとしたが尻尾を撫でてやるとリアスの体からは力が抜けた。

「なあリアス、お願いだから勝手に忍び込んでくるのは止めてくれ…」

「………」

必死に我慢するリアス。しかし俺も引くわけにはいかない。ここはハッキリさせなければ…。

「仕方ない…」

「ひゃっ!」

今度は撫でるだけでなく指を立て髪を梳くように撫でていく。左手でしっかり体を支えているとリアスは俺から逃げられない。

「約束できるか?」

「……。私が、こうしないと、一緒に寝てくれないもん!」

拗ねるようにうつ向くリアス。それを論破することは容易い。論理的には圧倒的にリアスが間違っているから…。しかし俺にはそれを切り捨てるなんてことは出来ない。

「ふぅ。もういい。勝手にするといい」

リアスを話しそう告げると俺はベッドから立ち上がる。そんなことを言ってくれるのは男としては嬉しい。けど、仲間としてはケジメをつけなければならない。

「リョウ…。嫌だった?」

「………」

「ゴメンね。私の独り善がりなら謝るよ。だから‥」

流石にやり過ぎてしまった。こうなることは予想出来た筈だ。ホント、まだまだダメだな…。

「ど、どうしたの?」

「違うんだ。お前が嫌なわけじゃない」

「けど…」

「違うんだ。ただな、人として忍び込まないでくれって言ってんだ…」

「…………」

「…入ってくるなら先に言ってくれ」

本当はそれも止めて欲しい。論理的な部分でも駄目だし俺の理性ももつ自信がないから。けど…

「ありがとう! やっぱり優しいね!」

こんな純情で嬉しそうな笑みを浮かべられたら断るにも断れない。俺は弱いと思う。けど、俺はこの顔が悲しさに歪むところを見たくない…。

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