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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
不穏な兆し
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第189話

「へえ~。リアスはここでリョウとね~」

「リリス! 私達は何もしてないからね!」

「どうかな~」

「信じてよ!」

必死で抗議するリアス。しかしその意味を知るのは俺とリアス、そしてリリスだけだろう。

「リアス達どうしたの?」

「なんでもない。それより…植物魔法‥」

リアス達に構っている暇はない。一帯を魔力で覆いながらリアス達に視線を向けると既にそれは収まりつつある。

「草造!」

真ん中から小さな可愛らしい芽が生えてきてそれは瞬く間に小さな木へと化す。そしてそれは広く青葉を広げると岩石のように硬くなる。

「まだまだいくぞ!」

「ならティナも! 植物魔法・草造!」

複雑に蔦が絡まりそれぞれの高さに合う椅子が形作られる。そしえ最後に背もたれに金色の華の模様が這うと魔法は列記とした椅子として俺の支配下から離れた。

「やっぱりティナには敵わないな…」

「わざわざ華の模様まで入れたリョウ兄がいう?」

椅子の数は人数分、計7脚。

全員がそこに座ると俺は口を開いた。

「さあ、ここで丸1日いるわけだが何する?」

「泳ぎたい!」

「よしきた。お前達は?」

『勿論!』

「元気だな。行ってくるといい」

『うん!』

そう言って走り出す皆。残るのはユウリとレジェネータだけ。敢えて俺はサンにも楽しんでこいと伝えた。

「リョウはこないの?」

「俺は少し休んでからにするよ。少し眠くてな…」

昨日寝ていないせいか少し眠い。「ふーん」と水面へ潜ったリアスを見送ると俺は目を閉じた。

《随分と幸せそうじゃないか》

《そうだな…。けど明日からはまた血を浴びることになる。1日くらいはいいだろう?》

《そうだね。君は言わなければ壊れるまで無理をしそうだ》

目を閉じていても俺の対面にいると分かる。俺の魂の片割れである存在は俺が本能よりも強く感じるモノなのだ。

《そうかもしれない。俺はリアス達の為ならこの体を殺すことも容易い》

《既に妄信的だね。君の作られた愛情とは酷く偏りがある》

《作られた、か…。酷いな…》

《僕がいる限り君が本当の愛情を手にすることはない》

《………。お前を殺せば得られるだろうか?》

《僕を殺しても意味はない。君に愛情が戻っても今のままじゃ愛情を感じることはない》

《………。辛辣だな?》

《僕は答えを提示しているだけさ》

《……。もういい。しかし1つだけ質問してもいいか?》

《なに?》

《俺は既に何かを失ってしまったのか?》

《ふふ、そうだね。君が封じた記憶の中に答えがあるよ…ふふ…》

《なんなんだ? 何が言いたい?》

《それを知るのは君だけじゃないかな?》

裏背が消えたのが分かる。意味深な言葉を残した奴の謎めいた笑みが見えたようだった。

「ー!」

「ん?」

「リョウ、起きろ!」

「あ、あぁ。ユウリか…。大丈夫だ!」

どうやら俺は少しの間、意識がなかったようだ。心配そうに俺を覗き込むユウリに笑みを向ける。

「辛そうだ。何かあったのか?」

「大丈夫だ。心配してくれてありがとな!」

「っ! お、俺は単に‥」

「それだけでいいんだ。本当にありがとな」

「ぅ…」

まだ裏背については誰にも言うべきではないと思う。もしそれで昇華に失敗なんてすれば最悪だ。

「…………」

俺は自分の左手を見た。黒い手は未だに裏背がくれた時のままだ。これも自分で治してみたいな…。

「…………」

俺の考え事をする無言とは違い緊張感からの無言もある。目の前で体を強張らせながら机の一点を見つめるレジェネータはここに来てからも全くの無言だった。

「おいっ?」

「はぃ! なんでしょう?」

俺の声に体をビクッと震わせたレジェネータは首をカクカクに動かすと俺を見る。

「お前は遊んでこないのか?」

「………。主様方と共に戯れるなど…」

長い間奴隷であり、長い間虐げられてきた者にはそれが習慣となっている者がいる。コイツは典型的なそれだった。

「ユウリ、見ないでくれるか?」

「俺は何も見ていない」

そうやって顔を背けるユウリ。レジェネータへ視線を戻すと体を守るように両肩を抱いていた。

「レジェネータ、1つだけお前に言っておきたいことがある」

「はい…。なんでしょう?」

「俺達は対等の立場だ。お前はもう奴隷じゃない。単なる俺達の仲間だ」

「っ!」

「俺は奴隷なんてのは嫌いだ。お前が奴隷でありたいと言うならそのように扱ってやる。けどな、お前が少しでも人として扱われたいのなら自分が変われ!」

「……はい」

うつ向きながらも呟いたレジェネータ。本当に、奴隷なんて、嫌いだ…。

「さ、思い話は無しだ。レジェネータ、これからは俺のことをなんて読んでくれる?」

「主様、いえ、リョウ様!」

「様、ってのには少し気になるがまあいいだろう。俺はなんて呼べばいい?」

「なんでもいいですよ!」

「ならレジェ。この方が呼びやすいだろ?」

「っ!」

「どうした?」

あまりに驚いた表情をしたレジェ。そこまで驚くことはしてないんだがな…。

「ありがとうございます。そんなこと言ってくれた人、居ませんでした…」

「奴隷じゃないってのはいいだろ?」

「は、はい!」

弾けたような笑みを浮かべるレジェ。少しは慣れてないと聞き出すことも難しい…。

「なあリョウ、俺も、行ってきて、いいか?」

「ん、体は大丈夫なのか?」

「ん! 当たり前!」

「ふっ、なら行ってくるといい。レジェは行くか?」

「リョウ様が言うのでしたら…」

「行ってくるといい。俺も行こうか?」

「はい!」

ま、奴隷という境遇だったレジェからすれば仮にでも主人である俺よりも楽しむなんて難しいことだろう。そこは俺が退いてやるべきだよな…。

バシャーーンっ!

「ユウリ、お前、泳げたんだな?」

「ん…。水泳はいい肉体強化になる。鈍らないようにするには打ってつけだ!」

「お前って、ホント軍人だよな~」

真面目というかなんというか…。まるでアスリートみたいだ。

「ひゃっ、冷たい…」

最後に入ってきたレジェはその水温の低さに声を洩らした。そして俺達が入ってきたことに逸早く気付いたリアス達は俺達の方へと泳いでくる。

「もう大丈夫?」

「あぁ。少し眠かっただけだからな!」

前ここに来たのはリアスとのデートの時だった。町中より森の方が落ち着くというリアスの意に沿うように来た森の中ではここが最高の遊び場だった。

「じゃあ行こっか? リョウは着替えなくてもいいの?」

「俺は上を脱ぐだけでいい。それよりお前達は?」

「俺は防水性だ」

「奴隷服は水を吸いません!」

「また見事に…。まあ、今回は良かった、か…」

ティナとリリスは魔力を多めに纏い水を弾く。リアスは服を脱ぎ俺と同じ。と言うかティナとリリスの方法は才能の無駄遣いだ…。

「そんなのいいじゃない。行こうよ!」

片目を瞑り俺を誘うリアスは、ギュッの俺を手を握ると湖底深くへと潜る。水中はティナなのかリリスなのか知らないが明るかった。

「精霊魔法・環境適応。さあ、こないだ見たいに泳ごうぜ!」

呼吸が必要無くなる。スゥと軽やかに進んだ体を冷たい水が撫でた。そしてその後、俺は見覚えのある場所へと辿り着く。

「ここは…こないだの?」

「洞穴だな。入ってみようか?」

「待って、何か…」

リアスの指差す方向を見る。そしてそこには…

「魔物、か…」

「ふふ、これだけ集まってるのに勝てると思ってるのかな?」

暗闇から俺達を見つめる瞳が6つ。体長的には4メートル程の黒い影は俺達を威圧するように存在するが…、

『私達もいるんだよ?』

獲物は俺達ではなく奴だった。計6人のそれぞれの刃が輝いた時、奴の運命は決まった。

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