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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
不穏な兆し
182/619

第181話

「楽しかったね!」

「俺もだ。改めてお前に魅了されたよ!」

「魅了って…」

「おやすみ。また明日~」

「うん。おやすみ!」

そんな言葉を背に受け俺は部屋を出ていく。久し振りに俺もドキッとした…。

《白狩君、もしかしてこの休暇、全部をこれに使うつもりじゃないよね?》

《当たり前じゃないか。けどまあ、最終日は空いてるけどな!》

《………。なら今夜は僕に付き合ってくれないかい?》

《何をするんだ?》

《君の能力をあげるんだよ!》

《ほーう…》

廊下を歩きながらそんなことを話していた。そしてギシギシと軋む階段を降りていった。

《白狩君、何も知らない人から見れば不倫だよ?》

《………。歳上として相談に乗ってるだけじゃないか?》

《へーーえ》

思いっきり棒読みの裏背はその言葉を切らぬまま消え入った。そしてそれが消えた先には…

「藍夏?」

「リョウさん…」

時間は深夜。蝋燭1本の光を頼りに今日は酒さえ飲まずソワソワしていた。

「今日はどうしたんだ? 今日もアイツはいないようだが?」

「まだ帰ってきてないんです…」

「っ!」

「私心配で……。最近ずっと…」

「理由は知ってるのか?」

「………」

哀しげに顔を伏せる藍夏の顔は優司への愛情に満ちていた。と言うかこんな顔をさせる優司、1発殴ってやりたいな…。

「探しに行くか? ジッとしてるより動く方がいいだろ?」

「は、はい!」

思わず立ち上がる藍夏に微笑を浮かべ俺は扉へと歩いていく。俺の後ろにはいつの間にか藍夏に気付かれぬようサンが歩いていた。

バタンッ!

俺がドアノブに手を掛けると同時に勢い良く扉が開かれる。そこにはフラフラの優司が立っていた。

「あれ、リョウさん…。藍夏ちゃんも、どうしたん、ですか?」

「ね、ねえ優司、どうしたの!?」

「藍夏ちゃん! 僕、負けちゃったんだ…」

身体中に切り傷をつけ血に染まった優司は剣を杖にして帰ってきた。急いで優司に肩を貸す藍夏の顔には心配の念が色濃く張り付いていた。

「お前、何考えてんだ?」

「リョウさん! そんな言い方ないじゃないですか! こんなになってるのに…」

「お前は黙っていろ。優司、お前、何の為にそんなことしたんだ?」

傷を見るに魔物などに襲われた傷ではなく確実に剣等の刃による傷だった。そんな物が身体中についてるなんて答えは1つだろう…。

「すみません…」

ただ理由も述べずにそう話す優司。俺は無言でその胸ぐらを掴むとその腑抜けた顔を殴り飛ばす。

「リョウさん、何するんですか!」

床を転がり壁へ激突した優司。そんな優司へ急いで駆け寄った藍夏は俺を睨みながら鋭く叫んだ。

「黙ってろ…」

「………」

威圧を込め下がらせる。これは仁義の問題だ。

「リョウ、さん…」

「お前、今日俺が何故ここにいるか知っているか?」

「知りません…」

「ずっとこの藍夏が! お前を心配でずっと待ってだん! 分かるか、お前に!」

「…………」

ここまで堕ちたか。黙り込む優司はうつ向き加減に項垂れている。

「守ってやる筈のお前がどうしてコイツにあんな顔をさせるんだ!? お前はコイツの気持ちを考えたことがあるのか!」

「すみません…」

「お前が謝るのは俺か?」

「………。藍夏ちゃん、ゴメン…」

「そ、そんな、謝らなくたって良いよ。それより傷は大丈夫なの?」

「大丈夫。こんなの直ぐに治るからさ!」

「ダメ! 強がってもダメだからね!」

俺は静かに消えるとしよう。サンの頭へ手を起き合図すると俺はその場から消え失せた。


「まさかリョウがあんなことを言うとはね~」

部屋に戻るとリリスが椅子へ腰掛けそんなことを言ってくる。ずっと聞き耳でもたててたのか…?

「アイツは少し腐ってしまったからな。腐食部分を殴り殺しただけだよ…」

「それをリョウが言う? 私達の心配も気にしないでさ!?」

「………。すまん…」

「謝っても無駄だよ。今夜から明日は私と一緒だからね!」

「分かってるさ…」

その対面へ座り既に開けられていたワインの瓶をグラスへと注ぐ。真っ赤に輝くワインの色は実に深く美しい。

「ねえリョウ、今日はどこに行ってきたの?」

「ギルドで軽く模擬戦をした後、森の中まで行って水浴びだ。冷たいってのは気持ちよかったぞ?」

「いいな~。と言うかそれって裸ってこと!」

「まあな。けど森は深かったし問題ないだろ?」

「そういう問題じゃないよー!」

「リリスも行くか?」

「っ!」

怯んだリリスの手を取りベッドへと誘う。と言ってもヤラシイ意味はない。

「明日、楽しみだ…」

「リアスにも同じこと言ったんじゃない?」

「どうだろうな。ただこの言葉は本心だぞ!」

「その言い方はズルいよ…」

愚痴るリリスを優しく抱き締める。暫くした頃にはリリスはそっと目を閉じて寝息をたてていた。

「おやすみリリス…」

白銀の髪を優しく撫でると俺は部屋を出ていった。今度こそ1人だ…。

《で、裏背、何をすればいい?》

《そうだね~、まずは君のスキルを確認してみれば?》

言われるがままカードを確認するが特に変わった様子はない。固有スキルも上から…

《『魂能ノ匠人』ってなんだ?》

《『能力工学』の上位スキルじゃない?》

《あー、そういえば…。『能力工学』も消えてるもんな》

《そういうこと。で、それを見付けたから教えておこうかなって!》

《そうか。で、これで何を?》

《取り敢えず開いてみてよ!》

《押しが強いな…。『魂能ノ匠人』》

すると例の通り青白いパネルが現れる。しかしそこに浮かび上がる文字だけは違った。

《ね、変わってるでしょ?》

《そうだな。進化が増えている…》

《どことなくゲームみたいだね~》

《そうだな。まあ、俺の固有スキルだからってのもあるのかもしれないけどな…》

取り敢えず進化をタップ。するとやはり例の通り文字は霧のように消え去り、その代わりパネルには俺のスキルがズラッと表示された。

《折角だし『狂化』ってのやってみない?》

《結局お前の興味かよ!》

と言いながらも俺は『狂化』をタップ。すると『狂化』以外は霧のように消えて、パネルの上の方へ移動。その下には様々な選択肢が表示された。

《良かったじゃない。『人化』があるよ?》

《んっ! 裏背ナイスだ!》

選択肢の中には他にも『水化』や『炎化』、『獣化』や『霊化』等がある。その中で俺は『人化』をタップ。するとやはり例に習うように『人化』以外は霧のように消え去った。

《て、どういうこと!?》

残る『人化』はパネルの上部へ移動。そしてその下には再びスキル達が一覧として表示された。

《恐らくはこれだな…》

さっきと1つ違うところ。スキルの隣にはそれぞれ番号がふられ、『人化』と表示された隣には赤字で5と表示されていた。

《もしかして5になる分、スキルを消費するってこと?》

《かもな…》

俺は1番番号の小さい番号は1の『生命力』をタップ。するとやはり赤字は1減って4となった。

《まるでポイントだね…》

《そうだな。まあいい。折角なんだし作ろう》

と言ってもこの行程で使えそうなスキルは限られてくる。しかしそう言うことを全て考えたとしてもポイントは圧倒的に足りていた。

《出来た…》

これでサンとの約束が果たせる。俺は深呼吸するとそのスキルがあることを今一度確認した。

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