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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
不穏な兆し
174/619

第174話

「元気だったかサチ。少し来れてやれなかったからな」

「はい。リョウさんこそ元気でしたか!?」

「俺は……大丈夫だ!」

「な、なんですかその間は!」

サチの剣を拾い上げた俺の手には強い魔力が伝わってくる。ミスリルに残留している魔力なのだろう。

「依頼でケルベロスと殺り合いに行ってたからな。元気だったが無事では無かったんだよ」

「それって5日前のソラル平原のですか?」

「そうだ。よく知ってるな~」

「これでも貴族ですからね!」

そうやって胸をはるサチ。そう言えばまだケルベロスの魔晶の加工、まだだったな…。

「その剣はだいぶ馴染んだようだな?」

「はい。けれど魔力を込めすぎて無駄に拡散しちゃったりするんですよね~」

そう言って謙遜するが拡散してると言ってもある程度実力のある手練れでしか分からないような本当に微量なものだった。

「ならお前に1つ、技を教えてやろう」

「技ですか?」

剣を振る時、ある程度の手練れなら感覚で習得しているのだがまだ幼いサチではやはり実践は出来ていなかった。

「魔力で刃を作る、出来るか?」

指先へ魔力を集め鋭いナイフのような形へと変える。そしてもっと魔力を込めていくと半透明だったのが白っぽく変わる。

「それが魔力の刃ですか?」

「そうだ。これを剣に纏わせることができれば魔法も斬ることができる!」

「魔法をですか!?」

「そうだ。詳しいことを話すと難しくなるから止めておくが結論だけを話すと魔法以外に魔法への対抗策が出来るということだ」

「それは…独創的ですね」

「まあな。けど高ランクの冒険者は使ってると思うぞ?」

「そうなんですか?」

「あぁ。獣人はそもそも魔法なんて使えないからな」

「た、確かに…」

指先に纏わせた魔力の刃へさらに魔力を込めると普通の直剣程の長さまで伸びる。そして柄の部分を付け足すと俺の手には全て魔力により作られた直剣が作り出された。

「まあいい。これを教えるのはまた今度にしよう」

「今はダメなんですか?」

「言っておくが俺がしていることは不法侵入だからな?」

「あっ…そうでした…」

「だろ? まあ、俺は前言ってた宿にいるし来たければ来い」

「は、はい!」

1度試合をしようかとも思っていたが太陽も姿を現してきたので止めた。俺は大太刀を鞘へ納めると足元へ魔力を集める。

「そうだ、これはプレゼントだ」

「なんですか、これ?」

「俺特製の魔晶だ。魔力を流すとなんでも命令を聞く魔物になる!」

「そ、そんな便利な物を…」

「お前は俺の弟子の中でも優秀な方だからな。魔晶が壊れない限りは何度でも使える。修行相手にでもするといい」

「は、はい!」

「ふっ…。達者でな…」

《闇魔法‥》

サチへ渡したのは炎鳥の魔晶だ。足元の魔力を魔法へと変えると共に笑みを浮かべる。

《影移動》

スッと闇に呑まれた俺はその場から一瞬にして消える。また遊びに来てやろう。


「ふぅ…。まだ起きてないんだな…」

脇の木の影へと転移した俺。宿の中を覗いても誰一人目を覚ましてはいなかった。日が頭を見せているとはいえまだまだ早い時間のせいか人の声も聞こえない…。

「1人で修行でもしようかな…」

「なら僕が付き合いましょうか?」

驚いて後ろを振り向くとそこには直剣を携えた優司が薄い笑みを浮かべていた。そういえば優司と会うのも滅茶苦茶久し振りな気がするな…。

「俺と渡り合えるのか?」

「訂正します。修行をつけてください!」

「分かったよ。行くぞ」

雪が溶け湿った地面は歩く度に少し嫌な音がする。木々の道を通り裏庭へ向かうとお互いが得物を構え向き合った。

「お前と試合したことはあったか?」

「どうでしたっけ? 忘れました」

「ふっ、そうだな。行くぞ!」

「はい!」

ガキンッ!

俺の居合いを真っ向から受け止めた優司。その常識外れの芸当にも驚いたがその後の剣を引くスピードにも驚いた。

「スキルは使うか?」

「任せますよ。流石に魔法はダメですけど…」

「そうだな。なら俺は刀技だけにしよう」

「分かりました。では僕も同じ条件ですね!」

ガキンッ!

再びぶつかり合う刃。黒く輝く大太刀と金属特有の鮮やかさを放つ直剣。殺気がぶつかり合うそんな中でも俺達2人には笑みが浮かんでいた。

「畳み掛ける。刀技・牙狼刃」

「んっ! 素早いですね。剣技・爆烈刃」

大太刀には不向きの突きを放った俺に対し地面の爆破で応戦した優司。俺が試しに石を蹴りあげるとその石は綺麗に切り落とされた。

「随分成長したようだな!」

「それ程でも! 剣技・摩焔剣」

空気摩擦で赤くなる原理を元に赤くなりながら迫る剣。しかしそれは俺が少し避けることで躱さらる。それを見た優司は急いで剣を引くがその時には俺の刃は鞘に納められていた。

「油断したな…。刀技・弐ノ閃」

刀を抜き放つと共に放たれた斬撃は既に防御の姿勢をとっていた優司に防がれる。しかし同時に放たれた縦の斬撃は防ぎきれないようで右肩から右足にかけてもろに斬撃を受けてしまう。

「ぐはっ…。流石、ですね…」

「まあな。まだまだ負けられん。精霊魔法・蘇生」

手を取り助け起こしながら傷を治すと俺は落とした直剣を拾う。使い込まれたであろう直剣には所々傷も入っていた。

「ありがとうございます。リョウさんって今のランクってどうなってるんですか?」

「多分、Sだ…」

「S!」

「こないだケルベロス討伐に向かったからな。まあ、そのお陰で収穫も多かったが…」

「そうなんですか。それにしてもそんな依頼どこに?」

「騎士団長からの直々の依頼だ。少し知り合いでな…」

「騎士団長! そんな人と知り合いなんて…」

「今度紹介してやるよ。それにそろそろ俺達の連れが起きてくるんじゃないか?」

「いえ、昨日は…」

「酒か?」

「いえ…。少し遅くまで遊んでたんで…」

「ウチも昨日は知り合いの家で寝ちまったからな~。そして夜遅くにまた寝かしたから…きっと遅いぞ…」

「大変ですね」

「お互いにな」

そう言って笑いあってると足音が聞こえる。そしてその魔力はまた珍しい。

「おはようございます」

「キルさん…。お久し振りです」

「こちらこそ…。そう言えばリョウさん」

「なんでしょう?」

「実は宿の前に小さな子がリョウさんに会いたいって来ているのですが…」

「早いな…」

恐らくはサチだろう。と言うかそれ以外に考えられない。俺は2人を連れ木々の道を抜ける。

「おはようございます」

「さっき会ったばかりだろ? それにしてもよくクロス様はゆるしたな?」

「リョウさんに会いに行ってきますって言ったら行ってきなさいって言われたんです」

「そうか…。今日は俺も丁度休暇だし依頼にでも一緒に行くか?」

「はい!」

困惑する2人をよそに俺は宿の中へ戻る。中では既にティナ、リリスがテーブルに腰掛けていた。

「おはようリョウ!」

「おはよう。リアスはいつも通りか?」

「うん。あとユウリも…」

「アイツは昨日、酒で寝てるからな…」

「そうなの?」

「まあな。少し話を聞いてたんだ…」

「そっか。で、後ろの子は確か‥」

「サチ・デイアです。よろしくお願いします」

「俺に会いに来てくれたから今日は依頼を一緒に片付けようかと思ってな。そうだ、優司達ともどうだ?」

「僕は藍夏ちゃんに聞かないと…」

「私はエリちゃんの護衛です」

「分かった。ならサチ、飯は奢るしティナ達と待っててくれるか?」

「はい!」

素直な言葉にうなずくと俺はそのまま階段をのぼる。休暇は5日もあるんだ。1日くらい使ってもいいだろう。

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