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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
騎団の仕事
160/619

第160話

「悪魔のお出ましか…。リリス、ティナ、メア、フォール、魔法による牽制を。リアス、ユウリ、ユウ、ヨルソン、レイ、総攻撃だ!」

『はっ!』

「まるで本当の指揮官だね!」

「先に手を動かしてくれ!」

「わ、分かったよ…」

走り出すリアス達5人はそれぞれの得物を振りかざす。そして刃がその漆黒の毛皮に触れたその瞬間、

ドカーーンッ!

「なっ!」

刃が触れようとした瞬間、黒い瘴気が爆発するように吹き出しリアス達を吹き飛ばす。そして瘴気に当てられたその体には黒い奇妙な紋様が浮かび上がっていた。

「リョウ、ダメ。これ、変…」

「くそっ! 呪いか…」

「ガアアウウウウウウウウウウッ!」

「ぃっ…」

ケルベロスが雄叫びをあげると紋様が怪しく光る。そしてそれと共に皆の顔には苦痛の表情が浮かんだ。

「対峙できるのは俺だけか…」

《光魔法・解呪光》

淡い光がリアス達へ降り注ぐ。それだけで苦痛に顔を歪めたがその後には例の紋様も綺麗に消え去った。

「リョウ?」

「お前達、騎士達も全員下がれ」

「リョウ、俺は残る!」

「ユウリ…、お前も行け!」

「………承知した…」

サッとリアス達へ追い付いたユウリ。そして遠くの岩影へ体を隠したのを確認する。

「それでいい…。光魔法・聖域結界」

俺以外の9人を遠くへ逃がし、瘴気による汚染も結界により退ける。その瞬間…

ドカッン!

右半身に強い衝撃を受けたかと思うと俺は地面を抉りながら近くの岩へと体をぶつけた。今ので肋骨数本、肺も1つ潰れたかもしれない。

「ぐはっ…。やってくれるじゃないか!」

「ガアアウウウウウウウウウウッ!」

手についたのは真っ赤な血だった。咳き込む度に出てくる血。やはり肺がやられたんだろうな。

「精霊魔法・蘇生。化け物が…」

粗末な魔法になるが潰された肺を機能だけでも回復させる。鞘に納めたままの刃を抜き放ちフラフラの体のままケルベロスへ切っ先を向ける。どうやら骨も折れているようだな。

「ガアウウウウウウウウウッ!」

ドカーーーッ!

「相変わらず素早いものだな…」

ギリギリの所で腕を避けたが爆風により俺の体は塵のように吹き飛ばされた。早く体勢を立て直さなければ…。

「ガアウウウウウウウウウッ!」

大きく雄叫びを上げると真っ赤な瞳が輝いた。すると俺の体は強張りそこから動けなくなった。

「支配系統の能力か…。小賢しい…」

俺の苛々する気持ちに呼応するように黒い魔力が眼帯を含め周囲の岩や草花を破壊した。そしてそれと共に現れた紅色の眼は立ち込める瘴気を散らし俺を拘束する呪縛をも破壊した。

「ガアウウウウウウウッ!」

「『生魂支配』。聖炎魔法・聖清炎」

淡い橙色の炎がケルベロスを包む。瘴気はそれを浄化する聖炎には敵わない。奴の鎧は砕かれその体は強力な炎に焼き焦がされる。

「ガアウウウウウウウウウッ!」

しかしその一声で炎は掻き消されてしまう。それに俺が密かに張っていた魔力の糸も切り裂かれた。

《『絶炎ノ矛』、『雷鳴ノ瞬撃』》

ガキンッ!

「この化け物がっ!」

殺気を込ると溢れだす黒い魔力を込め刃を振り下ろす。が、まるで鉄を叩いたような金属音と共に刃は弾かれ逆に俺へはその鋭い牙が迫る。

「『忍ノ道』」

その瞬間、俺の存在が消えた。と言うよりも認識出来なくなった。気殺や隠密、消音により完璧に隠蔽した俺の存在は奴でさえ一瞬だが姿を捉えられなかった。しかしその一瞬があればいい。十分だ。

「ガアウウウウウウウウウッ!」

「これが俺の全身全霊だ!」

魔力、いや魔力だけじゃない。様々なスキルのパッシブ効果と生魂による純度の高い魔力が大太刀の鋭く細い刃を渦巻いた。日本刀固有の波紋が魔力により鋭く光る。

「ガアウウウウウウウウウッ!」

ガキンッ!

「なっ…」

刃は受け止められた。漆黒の毛皮に防がれた刃は込めていた魔力を全て失い爛々と輝いた刃は光を失った。

「ガアウウウウウウウウウッ!」

俺と奴の目があった。その目は優位な今の立場に余裕が浮かんでいる。俺はその目に無性に腹がたったがどうしようもない。その時…、

ダッーーンッ!

「っは!」

景色も音も何もかもが無くなった。ただ視界は黒く暗転し、魔力操作もままならない。俺はどうなったんだ。ただ目の前に鋭い爪が見えただけだったんだが…。

「ガアウウウウウウウウウウウゥゥッ!」

奴は死んでないんだな。ギリギリ動く瞼を上げると俺の大太刀はいつの間にか手から離れ、遠くの岩の上へと突き刺さっていた。

「ぅん…ぅ……」

手を動かそうとするがどうにもならない。胸は3本の爪により深い切り傷が入っていた。血はドクドクと流れ続け意識も朦朧としてくる。

「ガアゥッ!」

俺を見て興味は失せたのか俺に背を向けギリギリで維持されている聖域結界の方へ足を進める。

「やら、せるか…」

もう1歩。指が動かせる。奴を睨むがもう俺に興味を失った奴の歩みは止まらない。その時、ふと俺の隣へ…、

《死にたい? 生きたい?》

《裏背、頼む…》

《僕に体を委ねてくれるの? 怖くない?》

《今はお前以外に信用できない…》

《ふっ、始めて受け入れてくれたね。いいよ、僕の精神があれば5割は耐えられるからね!》

その瞬間、俺の視界は黒い霧に閉ざされる。そして次にその霧が晴れた時には…、

「傷も治っている。ふ、ふははっ、最高だ!」

「ガアアウウウウウウウウウウッ!」

俺の変化にいち早く気付いたケルベロスは本能に従い大きな腕を思いっきり振り下ろす。初撃ではその手に体を潰された。が、今は全くのダメージを受けないだろうな。

ドカーーーンッ…

もの凄い勢いで振り下ろされた腕は俺の片手に容易く受け止められる。俺の身体からは常時黒い魔力が漏れ出していた。

「ふっ!」

ケルベロスの目の前へ飛び上がる。その瞳は先までの虫けらに受け止められたこと、俺みたいな小さな者に受け止められたことにより動揺していた。

「ガアウウゥゥッ!」

「複合魔法・魔槍アラドヴァル」

手に現れたのは黒い魔力を纏う赤黒色の槍。獄炎が宿った魔槍は黒い魔力と精密な魔力操作があって出来る業だ。

「ガアアウウウウウウウウウウッ!」

「………」

ザクッ…、ザクッ…

ボトッと2つの頭が地面へ落ちた。炎により黒焦げになった傷は再生を遅らせていた。

「ガアアウウウウウウウウウウッ!」

「その1つの無能な頭でどうするつもりなのかな?」

自分でも分かる。冷酷な感情の宿った目は俺の瞳はケルベロスの心の芯へ確実に語り掛けていた。

「ガアアウウゥゥッ!」

その視線に耐えきれなくなったのか明らかに恐れた表情を浮かべたケルベロスは素早く後ろへ下がる。そして真っ赤な瞳を恐怖の色に染めながら牙を剥いた。

「私に逆らうのかな?」

「ガ、ガアゥゥ…」

槍を投げ捨てゆっくりと手をかざし魔力を纏わせる。そう言えばこの状態では自然的に黒い魔力が使えるんだよな。まあいいか。黒い魔力により形成された真っ黒の刃は殺すような威圧感を放っていた。

「この刃に斬られたいのか?」

「ガ、ガアウウゥゥッ…」

「私に従え。拒否は許さん!」

「………。ガアウウッ!」

俺から目を逸らさずにしゃがみこんだケルベロスは服従の姿勢をとったかのように見えた。しかし…、

「私を騙そうなど烏滸がましい!」

「ガ、ガァゥ…」

しゃがみこんだ姿勢のまま突っ込んできたケルベロス。もういいだろう。飼い慣らせばいい戦力になると思ったのだが仕方ない。牙を折り口を裂き眼を貫く。コイツはもう何の役にもたたんな。

「大人しく死んでくれ。私が怒らぬまにな!」

ブシュッ…

最後の頭が飛んだ。吹き出す血の雨に濡れながら俺は黒い瘴気にまみれた空を静かに見上げていた。

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