第16話
「ふわぁ、満腹~」
「ティナも~」
「二人共食べ過ぎだぞ。大丈夫か?」
発展した町の中にでも日本と同じように自然と触れあう公園らしき所があった。
「無理~。苦しい、リョ~ウ~、」
「自業自得だ。ほら、水だ。」
「ありがとう、」
「ほらティナも、」
「リョウ兄ー、」
公園のベンチに俺達三人は腰をかける。お腹一杯で動けないって言う二人は苦しそうだ。
「ねえお兄ちゃん、あれ取ってくれない?」
駆け寄ってきた子供の指差す方向には紙飛行機が。紙飛行機、紙飛行機…、、そうか、転生者の遺物だな。
「分かった。少し待ってろ、、風魔法・微風」
公園を吹き抜ける微風は木々の葉っぱを揺らし、紙飛行機を風に乗せ俺の元へ運ぶ。
「お兄ちゃん凄い!」
「そうか?こんなこともできるぞ。水魔法・七色光」
所謂虹のこと。弾けた水は細かく細かく飛び散り虹のアーチを作った。
「綺麗、」
「ほら、おいき。」
「うん!」
持っている紙飛行機を渡すと、手を振りながら見送った。
「二人共、そろそろ落ち着いたか?」
「うん。やっぱりリョウは優しいよね、」
「そうかな?」
「うん。それに子供の扱いも慣れてるよ、」
「まあ、それはそうだな。子供は嫌いじゃないし、」
「そうなんだ。私達も元は子供扱い?」
「どうだろうな♪」
「もう!教えてよ!」
その晩、例の通り俺の部屋で二人が寝たことを確認すると、部屋を出た。当然俺が寝るのはもう片方の部屋。二人共気にしてないが、流石に俺も含め年頃なんだが…、
「心地いい、」
夜の風はなんとも心地いいな。冷たい風が刃のように凍みる。
「ふっ、」
近くの屋根に飛び乗ると、辺りを見回す。明かりはそこまでついていない。その中で灯るのは大通りを見回る憲兵の松明だけだ。
「…、」
走る中感じる風は冷たくて指先の感覚が無くなり掛けるのを感じた。滅茶苦茶寒い。日本で言う冬に値するのか?
「ここだったよな、」
もう陽が暮れて数刻経っていて、他の民間や店が明かりを消す中、その鍛冶屋だけは爛々と光が灯っていた。
スッ、
静かな足音が鳴り、鍛冶屋の中へ入っていく。シュラに会うわけにはいかない。慎重に、慎重に、、その時、明かりの中に影が見えた。その影は大きくシュラではない。
「親父さん、」
「リョウか。どうしたんだ?」
珍しく開発にもつかず自分で入れたであろうホットコーヒーを飲んでいる。
「シュラ、どうしてます?」
「それ、聞いていいのか?」
「あぁ。」
「気丈に振る舞ってるよ、」
「振る舞っている、か…、」
「なあリョウ。一度でいいんだ。シュラに会ってやってはくれないか?」
「……、」
「俺だって分かってんだ。シュラもお前に会ったら大変だろうし、お前だって事情はあるだろう。けど、お願いだ」
今の親父さんの目はこないだの強い目じゃなく、娘を想う父親の目だった。
「親父さん。俺もシュラには会いたいんだ。」
「っ!」
「けど、今会えばお互いにダメな気がするんだ。」
「…、」
「分かってくれるだろう?」
「あぁ。けど、父親として今のシュラは見てらんねえんだ。」
「……、」
「リョウ、お前はシュラが嫌いじゃないんだろ?」
「あぁ。絶対にだ。」
「……、」
「……、」
「アイツ、今日の朝なんていつもより笑ってたけど、朝なんて泣いてたんだぞ、」
「……、」
「これ以上言っても無駄だよな。すまん、無理を言ったな、」
「親父さん、これをシュラに渡してくれるか?」
「これは?」
「手紙だ。直接会うよりはマシだろう。」
「そう言うことか。お前も始めからそのつもりだったんだな、」
「あぁ。最悪の場合、店先に置いておこうかとも思ったが、」
「俺がいたと、」
「そうだ。」
「リョウ、俺は確かに預かった。」
「あぁ。頼む。」
俺が帰ろうと後ろを向くと…、
「お前、武器が欲しいんじゃないのか?」
「ん、何故分かった?」
「勘だよ勘。これとこれは別だ。欲しい物があるなら言ってみな、」
「じゃあ、一通りのこの世界での武器を頼む。」
「了解だ。じゃあ取り敢えずは直剣、長槍‥‥こんだけだ。」
「買った。それじゃあな、」
「あぁ。」
結局買ったのは、
・直剣 ・大剣 ・短剣
・双剣 ・曲刀 ・太刀
・大太刀・長槍 ・短槍
・双槍 ・弓 ・大弓
・手弩 ・半輪 ・円輪
・手甲 ・刃手 ・飛刃
・鉄鞭 ・鉄槌 ・戦斧
・鉄球 ・両刃剣・大鎌
っていう膨大な武器達だ。
それも全て日緋色金の残りで作ったという最高級品だ。意味分からん。
「本当にいいのか、いや、本当に!?」
「いいんだいいんだ。また手紙でも送ってやってくれ。」
「あぁ。この鳥に手紙を持たせてやってくれ。そしたら俺の所まで運ぶ。」
「分かった。本当にお前は日本人らしいな、」
「そうか?」
「あぁ。優しく仁義にあつい。ほらっ、そんなお前にプレゼントだ」
「これは……直剣?」
「そうだ。最上級に丹精込めた奴だ。初めに渡した奴も合わせて神の域かもな。それ、大事に使えよ」
「ありがとな。じゃあ…、」
鍛冶屋を出るとフッと飛び上がった。
冷たい風が俺を包む中、俺の目からは熱い涙が一筋流れていた。
仕方ないじゃないか。あそこまで行ったのに、一言も話さずに帰ってきてしまった。
「会ってしまったら、絶対に耐えられない。」
恋愛感情なのかもしれない。今までここまで夢中になったことはなかった。けど、叶えられない夢だろう。もしこの気持ちに任せれば、シュラは絶対に悲しむ。
「帰ろう。俺には帰る場所が在るじゃないか。」
俺を慕い付いてきてくれる人がいる。今の俺にはそれだけでいいんだ。
カランっ、
宿の扉を開けると鈴の音が鳴って俺を出迎える。一階のカフェにいるのは一人の男。会ったことはある。そして名前も知っている。
「ジーン、選手、」
「リョウ…、」
それはトーナメント決勝の相手だったジーン選手だった。
「ジーン選手、」
「敬語はいい。」
「ならジーン、いや、仁かな?」
「そう言うお前はそのままか?」
「あぁ。」
「取り敢えず座れ。金は俺が出す。」
「礼を言う。」
「まず俺がここに来たのは礼を言う為だ」
「礼、だと?」
「あぁ。お前が俺を降したおかげで、長年の重荷が降りた。」
「そう言うことか、」
「そうだ。そして次に、お前の求める物を与えに来た。」
「俺の求める物だと?」
「そうだ。その前に、もう少しでここが戦地になるのは知っているか?」
「戦地!?」
「どうやら知らなかったようだな。」
「あぁ。」
「ここはあと数日も経たぬ間に戦地と化す。領主の事情でな、」
「くそっ!何故!」
「貴族間で領主がやらかしたようだ。領主は領民には知らせる気はないようだがな、」
「行ってくる、」
「止めておけ。奴が死んでも変わらん、」
「……、」
その頃、無言で店員がカクテル真珠色のカクテルを運んでくる。
「そして次に、お前に与えるのはスキルだ。」
「スキルだと!?」
「そうだ。俺はもう疲れた。そろそろ重荷を譲りたい。」
「どういうことだ!?」
「お前はどうやら守りたい者がいるな。」
「そうだ、」
「なら其奴らを守る力をやろう。」
「お前にどんなメリットがある!」
静かにカクテルを傾ける。俺もそれにつられカクテルを口へ運ぶが、そのあまりの強さに意識が飛びそうだった。
「言った筈だ。俺のスキルをやる代わりに、俺の重荷を受け取ってくれ、」
「重荷とはなんなんだよ!」
「それはお前自身で探してくれ。俺の持つ重荷はお前自身がやがて手にするだろう。その時には…頼む。俺の名は白狩仁だ。」
「ちょ、ちょっと待て!」
男の目には俺に対する期待と遺憾の念が込もっていて、俺を襲う手刀には強い悲しみが哀れみが宿っていた気がした。
「ん、、」
そこには空のカクテルと丁寧な文字で書かれた置き手紙があった。
「なんなんだよ、」
そこには俺に渡したスキルと鑑定で調べた俺のスキル。そして俺への謝罪が認められていた。
「ちっ!」
分かんない奴だ。アイツは何を知っているんだよ!
◈名前
・リョウ
◈種族
・人間
◈加護
・女神の加護『大』
◈称号
・なし
◈固有スキル
・『魂喰い』
・『魔力錬成』
・『食物連鎖』
・『無限魔力』
・『断絶ノ矛』
・『結合分裂』
◈一般スキル
・『鑑定』
・『偽装』
・『言語理解』
・『四大魔法』
・『パッシブ(豪腕、毒牙、爪、)』
・『戦技(縮地、共有、魔拳、)』
・『武器術(短剣、糸、棍)』
・『圧迫』
・『微回復』
◈耐性
・痛覚耐性ー肆
・諸毒耐性ー参
・火炎耐性ー参
・麻痺耐性ー参
・幻覚耐性ー参
・魔法耐性ー参