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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
騎団の仕事
158/619

第158話

「えーと、さ、3人共その視線はなんだ?」

『その子!』

《裏背、助けてくれないか?》

《無理だね。完全に君が悪いよ》

スラム外で合流、訓練所から帰る、宿へ帰還。その瞬間、3人に詰め寄られた俺は例の少女と共に3人から尋問っぽいのをうけていた。

「…………」

「リョウからちゃんと説明してくれるかな?」

「は、はい…」

逆らえない。もし逆らえばどんな仕打ちが待っているのか想像したくないレベルだ。隠すつもりもないのだが俺はその濃厚なまでの圧力に体を強張らせながらスラム街での話をした。

「へぇ…。で、どうして連れてくる必要があったの?」

「………。似てたから、かな」

「似てた? 誰に?」

「俺達と目が似てたからだ」

「目、目ならむら‥」

「リアスストップ! リョウ兄の言いたいことも分かるけどこの子に親はいるの? いるとしたら大変だよ?」

「ーー、ーーー!」

「な、なに!?」

動揺する3人。まあそうなるだろう。そしてリリスが始めにその原因に気付く。

「もしかして、喋れないの?」

「そうだ。それに喋れないってのは受ける立場だ」

「………。分かったよ…」

「礼を言う」

思わず心の中で胸を撫で下ろした。人と違う者は周囲から迫害を受ける。それは周知の理であり喋れないという謂わば障害を持つ少女はスラム街でも一際不幸な目に逢うのは明白だった。

「それにしてもその子、連れていくの?」

「まさか、そんな危ないことさせられないだろ?」

「ーー、ーーーー!」

その瞬間、隣の少女から抗議の視線を向けられる。再考を願うようなその視線を俺はどう処理すればいいのだ。

「んー、困ったな。お前を連れていくとなると声が欲しいな…。やはり無理か…」

「…………」

意外に声とは大事なものだ。戦闘面では勿論。コミュニケーションから何まで様々な所で声は必要とされる。それに連帯を取れない者を仲間にした場合、動き辛いのは明白だった。

「ん、どうした?」

3人に見つめられながら考え込んでいると少女が近くの紙に文字を書き俺の方へ渡してきた。それには…

[2人だけにしろ]

「人払いか…。3人共、少し外へ出ていてくれるか?」

「えっ…。私達が?」

「そうだ。ゴメンな…」

「……。分かったよ…」

意外に素直に納得してくれたリアスはそう言うと2人を連れて外へ出た。残されたのは俺と少女の2人だけ。何を始めようというのか…。

「で、お前は何を始めるんだ?」

問い掛けるとさっきの紙に再び文字を書き綴る。そして書き終わったのはその紙を俺の方へと突き出してきた。そこには…

[私は死する者]

[私はお前の仲間となる者]

[お前の戦友なる者]

「っ!」

この文章に驚愕した。この文章の意味が本当だとしたら当てはまるのは1人しかいない。紫の髪、紫の眼、俺の手の中で死に自分を戦友と称した。

[久し振りだな。隊長!]

確信した。その時には既に俺は少女を抱き締めていた。凍り付き単なる記憶と化していたのがドンドン色を取り戻していった。

「会いたかった。ずっと後悔してた。お前を救えた筈なのに…。ゴメン、ゴメンな…」

「………」

何も言わず俺の背を叩く。その行動に俺の記憶は止まることなく溢れてくる。

「どうして記憶が残ってるんだ。記憶は消える筈じゃ?」

[声の代わり]

確かにそう考えると辻褄が合うかもしれない。声を代償に記憶を残すというのは等価交換としては良い等価になるだろう。

「なんでもいい。良かった。もう2度と会えないと思ってた…」

神とは実に悪戯好きだ。残酷なまでに奪ったかと思えば不思議な程の幸福が舞い降りてくる。

「……………」

「そうだ。やはりお前には声を取り戻してもらおう。精霊魔法・欠損甦元」

声が無い=声帯の欠損

ならばこの魔法で大丈夫な筈だ。声帯が無いならば声帯のある状態へ戻してやればいい。記憶の代わりに声なんて言われるからもしかすると神レベルの呪縛なのかもしれないが試してみる価値はあるだろう。

「………た」

「どうだ?」

「戻った…。声が戻った!」

「よっしゃ!」

声が戻った。元の、俺のよく知る声だった。歓喜に包まれたのも束の間。バタンッと開かれた扉の先には驚いた表情の3人が立っていた。

《あっ、これヤバいな…》

《御愁傷様~》


「もしかして仁さんの言っていたユウリさん?」

「お前、俺のことを知ってるのか?」

「うん。仁さんがね、リョウ兄がその晩はクズになってたって!」

「アイツ…、なに喋ってんだよ…」

「ふふ、私達に言っても何も変わらないってわかってるからじゃないかな?」

前も言っていたがティナが俺について色々と聞いて回っていたのは知っている。その中で仁もいたのだろうが、どこまで喋りやがった!

「クズって…仕方ないじゃないか…」

「他には‥」

「言うな言うな! どうせ録なことじゃないだろう!」

「ふふ、リョウ兄にはいつもやられてるからね!」

もしかすると1番怖いのはティナなのかもしれない。隣ではリリス、リアスの2人が苦笑してもう片方のユウリはうつ向いたまま何も話さない。

「それはそうとユウリ、これからどうするつもりなんだ?」

「身体能力もスキルも消えていない。出ていけと言われれば出ていくし共に来いと言われればついていく所存だ。俺はお前の部下にして戦友。リョウ、お前の言う通りにするつもりだ!」

「………。なら、戦友としてよろしくな!」

「はっ、仰せのままに!」

ここで選択を違えていればどうなったのだろう。けれど確実に言えることはある。この結果が間違いじゃないと言うことだ。

「リョウ、新しく仲間が増えたね!」

「だな。今度の報酬で全員が集まれる場所でも作ろうかな?」

莫大な面積の土地と資金。ユウリを含め多くなってきた仲間を集めるには宿じゃ少し狭い。また安定すれば来る人間を集めたいものだ。

「ふぅぅ。今日は疲れたよ。帰るとリョウがまた知らない人を連れてたんだもん!」

「言うなよ。いいじゃないか!」

「ずっと言うから! リリスの時もそうだったけど急に連れてこられたら不安になるんだから!」

「………。ゴメン…」

「けどまあ、今回は事情も分かったしいいよ。けど今度からは絶対にダメだからね!」

「あ、あぁ…」

言えない。今度、いや近い内にシュラや親父さんを招待するなんて…。絶対に言えない。言ったらもう泣き出しそう、いや大激怒、なレベルまで来ているから…。

「それはそうと今日の部屋割りはどうする?」

「それは勿論‥」

「部屋を増やすからお前達4人はどうにか分けてくれ。流石に全員が同室なんて無理!」

「んー、分かったよ。なら私とユウリ。ティナとリリスでいい?」

「ティナは大丈夫だよ!」

「私も大丈夫よ!」

「ユウリは?」

「俺は武人だ。関係無い」

「そ、そう…」

イマイチ馴染めない感が半端じゃない。と言うかユウリの孤立っていうのは自分の性格も関係してるんじゃないか。

「なら俺は自分の部屋をとってくるから今の部屋は4人で分けてくれ」

「分かったよ!」

「仰せのままに!」

「あと俺はこのまま部屋に行くからな!」

これ以上あそこにいるのは嫌な予感しかしない。と言うことで俺は大太刀を持つと密かに俺の方へ視線を向けたユウリの頭を撫でると受付へと移動した。

「女誑しが!」

「婆さん酷いですよ。部屋をもう1つお願いできますか?」

「けっ、分かったよ!」

不機嫌に投げ飛ばされた鍵を寸での所でキャッチすると俺は階段を上る。リアス達とリリスの時みたいな修羅場が生まれなくて助かった。俺はそのことにただただ感謝しながら階段を上った。

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