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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
騎団の仕事
157/619

第157話

「ふぅ…一服~」

昼食を終えて暫く。

追加で紅茶を頼むと他が食べ終わるのを静かに待っていた。とは言え、他とは騎士達のことなんだが…。

「お酒がいいな~」

「リアス、お前昼間っから酒か?」

「だって…」

ねだるように俺へと視線を向けるリアス。しかしダメだ。昼間っから酒なんて堕落人生真っ逆さまだ…。

「それにしても皆食べるの早いな~」

「早く食べなきゃ捨てられてたし…」

「ティナも…」

「私は遠征も多かったから…」

それぞれ理由があるよな。俺の場合、どちらにも当てはまらないが早く食べなければ獣の対処が出来ず大変だった。

「アイツらってその遠征はしないのか?」

「ここは安全だからね…。相手にするのもきっと暴漢くらいだろうし…」

「俺達は今からその暴漢を仕留めにいくんだよな~」

「殺しちゃダメだもんね…」

「そうだな。殺せばそれは罪に問われる…」

例えば素手で俺を殴ってきた奴を殺すのは犯罪だ。他にも人質を取られている状態で殺しても犯罪だ。しかしそんな中で殺しても罪に問われないものがある。

「けど、相手が刃を向ければ?」

「殺せる」

正当防衛というやつだ。相手が武器を持っているのに加減して殺されては話にならない。それに騎士は始めから武器での応戦は認められている。

「今回の依頼、計10人捕らえれば報酬はでる。なら手分けしてやるってのも手だと思わないか?」

「だね。なら入ったら騎士と私達でコンビを組むのはどう?」

「ん、どうしてだ?」

「騎士がいなきゃ捕まえられないんじゃない?」

「あー、そうか。そうだな。なら俺はレイとユウを連れていこう。お前達は?」

「ふふ、優しいね。私はフォールを貰うけど?」

「なら私はヨルソンを貰おうかな?」

「じゃあティナはメア?」

「決定だな。なら後で事情を話した後、スラム街へ行こうか」

『うん!』

コップの中の溶けた氷が日光を反射して俺の顔を照らす。その後、再び位置を変えた氷は光を乱反射させ俺達のテーブルを明るく照らした。ふと感じたその幻想的な風景に俺は思わず笑みを溢した。


「手分けして、捕らえるですか?」

「そうだ。わざわざ固まっているより少数で動いた方が警戒もされないだろう。それに俺達がいれば負けることはないだろ?」

「そうですね。皆はどうです?」

「俺は賛成だ!」

「私も!」

「僕もです」

「私は…従います」

「そうか。ならユウとレイは俺に付いてきてくれ。他はリアス達各個についてもらう。いいな?」

『はい!』

もう先に伝えた俺はユウとレイ、2人を連れ先にスラム街の中へと入っていった。この2人には照れているような距離がありお互い嫌いじゃないことはよく分かった。

「なあお前達、何黙ってるんだ?」

「い、いえ…。僕は…」

「わ、私は仕事をこなすだけです!」

明らかに焦っているレイ。俺も受けた謂わば実体験だが孤高の狼のような人間は優しく包み込んでくれるような優しさに触れると直ぐにその殻は砕かれてしまう。レイのように事情があり周囲から離別的立場にあった者からすればそれを認め好いてくれる人間に会えば心を動かされて当然だ。

「なあお前達見えるか?」

「な、何がですか?」

「ん?」

建物の影に忍び込むようにに他の影が隠れている。その形からして間違いなく人だ。早速1人目となるか?

「行くぞ。見とけよ」

《植物魔法・縛捕蔦》

手を翳し握り締めるとその場所へ近くの草花が鋭い蔦となり影の持ち主を雁字搦めにして捕らえる。キツく強く頑丈に捕らえた蔦は影の持ち主を喋ることさえ出来ぬ程、締め付ける。

「捕らえたんですか?」

「まあな。あれがゴロツキならいいが…」

歩いて近寄っていく嫌な予感がする。俺の魔法特有だが俺は魔法から受ける感触を情報として知ることが出来る。これは魔法を魔力で操作し続けているからできる所業なのだが…と言うのはどっちでもいい。蔦から伝わる感触、形が明らかに人を襲うようなクズには感じなかった。

「リョウさん…、ドンマイです」

魔法に掛かっていたのはまだ年端もいかない少女。雁字搦めの少女は口を縄で塞がれ声を発することもままならない。しかしその必死な様はよく伝わってくる。

「まあいい。解いてやらなきゃ」

魔法を解いた瞬間、持ち上げられていたにも関わらず器用に着地すると俺の服へすがるように抱き付いてくる。何かを言っているようだがその声は俺には聞き取れない。

「何か言ってますね?」

「そうだな。ユウ、聞こえるか?」

「いえ…。レ、レイさんは?」

「私はなにも…」

コイツら…。こんな時にも関わらず…。

「まあいい。ゴメンな。名前は言えるか?」

「ーーー、ーーーー!」

何かを言おうとしているのは分かるのだが声にならない。紫色の眼が必死そうな色に染まるがそれを改善してやることも受け止めてやることも残念ながら俺には出来なかった。

「仕方ないな。お前、俺と一緒に来るか?」

「ーーー、ーー!」

再び声にならない声をあげる。しかしそれに気付いたのか遣り難そうに深呼吸すると大きく頭を縦にふった。

「そうか。俺は今仕事中だからその間俺の近くを離れるなよ。分かったな?」

再び頭を大きくふる少女。と言うか少女と言っても俺より少し小さいくらいなんだよな…。

「リョウさんって優しいんですね?」

「んっ? まあな。俺が酷い境遇だったから助けてやりたくなるんだよ。それにコイツも大変だったろうしな…」

改めて確認するとその服はボロボロ。鮮やかな紫の髪も今は色を失っている。

「さあ行こうか。俺の手を離すなよ」

庇うように少女を後ろへ回すとその手を握り先へ進む。誰か1人を庇うとなるとやはり動き辛い。

「リョ、リョウさん、あそこ…」

先の方で数人の男達が建物の影に潜んでいるのを見付けた。その内3名が剣を持ち周囲を警戒しているようだ。

「いたな。まずは無効化だ。俺が行ってくる!」

「は、はい!」

ユウへ少女を任せると俺は大太刀を抜き去ると走り出す。その時に少女が手を伸ばし俺を掴もうとしたがその真意は俺には計り知れなかった。

ドーーンッ……

「ようお前達。捕らえに来てやったぞ!」

「な、なにを! 掛かれ!」

中央の男が叫ぶと左右にいた剣を持つ3人が俺に向かい走る。しかし所詮はスラムのゴロツキ。剣筋も甘々でこれならユウでも勝てるな。

「こんなので俺に勝てるわけないだろ?」

手を無造作に振るうと大量の魔力が風のように吹き付け男達を吹き飛ばす。そして久し振りの登場。拳銃を取り出すと男達へその銃口を向ける。

バンッ!バンッ!

    バンッ!バンッ!バンッ!

非戦闘員を含め全員の肩から赤い血が溢れだす。遅れてやってきたユウ達はその惨状を目の当たりにして固まっていて。唯一変わらないのはユウの後ろにいる少女1人だけだった。

「お、おのれ、死ね!」

咄嗟に振り向くと剣を持った男が剣を振り上げていた。少し角度が悪い。1度受けてやるかな。そう言って手を広げたその時…

ガキンッ!

目の前を何かが走ると剣を振り上げた男はよろめき倒れ付した。その首からは赤い血がドバドバと溢れだしていた。

「ん? お前…」

何か、の方へ目をやるとユウから奪ったのだろう剣を持つ少女。その手には返り血が飛び散り折角の白い肌が赤く濡れていた。

「…………」

喋れないと理解したのは少女は何も言わず剣を返してくる。とは言えコイツは何者だ。男の剣を弾いた姿はまさに達人の姿だった。

「まあいい。ありがとな、助けてくれて」

何はともあれ助けてくれたのだ。その体を優しく抱き締めるとポンポンと頭を撫でる。

「…………」

何処か懐かしい笑みを浮かべる少女。俺は、本当に初対面なのだろうか。

「リョウさん、すみません…」

「いいんだ。結果的に俺を助けてることになったからな」

「は、はい…」

俺を剣を返すと申し訳なさそうに片膝をつくユウにそう話し掛ける。とは言えこれで5名。捕らえすぎたか?

「ふぅ…。そろそろ戻ろう。もう充分だと思うからな!」

「そうですね。レイさんも、行きましょう?」

「は、はい」

ホントに雰囲気を撒き散らしてくれるよ。前を歩く2人に呆れの表情を浮かべる俺をよそに2人はこの雰囲気をスラム街を出て訓練所へ帰るまで続けるのであった。

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