第151話
《ふっ、結局壊れたか…》
《壊れても魔法で治したくせに…》
《お前もな!》
《ふふっ、きっと僕もリアスちゃんが死んだらまた今日みたいになっちゃうよ…》
《アイツは死なせない…》
《………》
目の前で死んだように四肢を壊され横たわる肉塊。それは生きていながら心を壊された愚かな生き物だった。
《さあ、始めよう。つい本来の目的を忘れてしまっていたな…》
《そうだね。始めよっか。スキル改変を!》
そもそもこんな胸糞悪い奴を転生?させたのはスキル改変を試すためだ。本当に…俺達は憎悪に呑まれてしまっていたな。
《何はともあれ、スキルを見ようじゃないか》
《だね! 鑑定を!》
《あぁ。『魔ノ賢者』&『能力工学』》
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名前
・ギド
◈種族
・ゴブリン
◈加護
・なし
◈称号
・なし
◈固有スキル
・『暗足静歩』
・『万物幾倍』
◈一般スキル
・『棍術』
・『繁殖』
・『剣術』
・『剣技・斬』
・『火魔法』
・『共鳴』
・『衝打』
・『縮地』
◈耐性
・痛覚耐性ー参
・諸毒耐性ー壱
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《ふっ、なんとも仕様もない奴だ》
《だね。まずは一般スキルから行こっか!》
《だな。『能力工学』》
スキルを奴へ仕様した瞬間、転生時のパネルのような物が目の前に現れた。それは裏背にも見えるらしく、驚きの表情を浮かべていた。
《これを操作するのかな?》
《それしかないだろ。取り敢えずは、合成、だよな?》
《そうじゃない? 押してみれば?》
トンッと合成の書かれた部分をタップした。他にも分解、と、調査、があったのだが先ずは合成だろう。
《これは…、ステータス?》
《それもスキルだけだ…》
そこには固有スキル、一般スキルが一覧として表示されていた。それは奴の持つスキル全てだった。
《取り敢えずタップしてみたら?》
《だな。『棍術』でいいか?》
『棍術』をタップ。するとパネルの中には『棍術』だけが残り他のスキルは霧のように消え去った。そして上方へ大きくなりながら移動するとその下方へ大量のスキルが表示される。
《これなんだと思う?》
《合成できるスキル達じゃないか? 違和感のない物ばかりだからな!》
《そう、だね。なら1つタップしてみようよ!》
裏背に促されるまま一覧の中、『衝打』をタップする。するとやはり『衝打』と『棍棒』以外が霧のように消え去るとその2つの間にプラスの記号、その先に表示されたイコールの先には『烈棍衝』という表示がなされる。そして下方には『OK』&『NO』という表示がなされた。
《これで『OK』を押すと合成されるのか?》
《十中八九そうでしょ! やろうよ!》
《んー、そうだな。実験だしな!》
俺は『OK』というボタンに手を当てる。するとその指先から意外に大量の魔力が吸いとられると共にパネルが消えゴブリンの額へ吸い込まれる。
《成功、なのかな?》
《鑑定してみる!》
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名前
・ギド
◈種族
・ゴブリン
◈加護
・なし
◈称号
・なし
◈固有スキル
・『暗足静歩』
・『万物幾倍』
◈一般スキル
・『烈棍衝』
・『繁殖』
・『剣術』
・『剣技・斬』
・『火魔法』
・『共鳴』
・『縮地』
◈耐性
・痛覚耐性ー参
・諸毒耐性ー壱
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《成功してる~》
《いいじゃないか。他も試してみよう!》
と言うことで少し気分の良い俺達はコイツのスキルを片っ端から合成していく。当然、合成出来ない、と表示されない物もあるが大抵は1つくらい当てはまった。
《ふぅ、少し疲れたね~》
《お前は何もしてないだろ!》
《君の心労は僕に直結してるんだけど?》
《そういえばそうだったな。それよりも、意外に面白いな!》
《だね。今度は分解を試してみたいな~》
《少し休憩したら始めよう》
俺はそう言うとアイテムボックスから水の瓶を取り出すと一気に喉へ流し込んだ。そしてその瓶は裏背の方へ投げ飛ばした。
《ふぅ、休憩完了!》
《続けようか?》
《だね!》
《『能力工学』》
すると再び目の前にパネルが現れる。そしてさっきと同じように、分解、合成、調査、の三択が表示された。さっきのもあるので同じ要領で大丈夫だろうと分解をタップした。
《分解、ならこうなるんだね~》
《らしいな。適当にタップしてみよう!》
分解、をタップしてみるとズラッとスキル一覧が表示され、一部の物は明るく光っていた。
《ん、押せない?》
《どうしたの?》
《反応しないんだ…》
一番上にある『剣術』をタップしても何も起こらない。仕方ないのでその上で光っている『烈棍衝』をタップした。
《こういうことね!》
《分解できる奴は光ってるんだな…》
そう考えると一般スキルは分解出来ないのかもしれない。一般スキルの中でも分解できるのはこの『烈棍衝』だけだった。
《じゃあ…固有スキルは?》
《あー、試してみようか!》
幸いなことに固有スキルは2つ中どちらも光っていた。と言うとはどちらも分解出来ると言うことだ。
《どっちにする?》
《『暗足静歩』の方でいいんじゃないか?》
《だね!》
『暗足静歩』をタップ。すると、合成、の時と同じように『暗足静歩』意外は霧の如く消え去り、スキル名自体の表示は上方へと移動した。そしてその下にスキル名が2つ表示され、その下にはまたもや『OK』&『NO』と、二択で表示された。
《『隠密』と…『忍足』…。この2つで出来てるということか?》
《そうなんじゃない。取り敢えず分解してみようよ!》
《そうだな。考えても仕方ない》
俺は例にならって『OK』という表示へと手をのせる。するとさっきと同様に魔力を大量に持っていかれる感覚と共にパネルはゴブリンの額へと吸い込まれていった。
『さあ確認!』
『分かっている…』
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名前
・ギド
◈種族
・ゴブリン
◈加護
・なし
◈称号
・なし
◈固有スキル
・『万物幾倍』
・『確定殖生』
◈一般スキル
・『烈棍衝』
・『火炎剣』
・『縮斬剣』
・『隠密』
・『忍足』
◈耐性
・痛覚耐性ー参
・諸毒耐性ー壱
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《改めて見るとやり過ぎたか?》
《大丈夫でしょ! それに意外と使えそうな者もあるし!》
《そうだな。スキルは奪うか?》
《だね。いいんじゃない!》
《ん、『奪者ノ頂点』》
スキル発動と共にスキルがスッポリ消えた。それだけじゃない。耐性も全て消えてしまった。
《今思ったんだけど君の固有スキルって改造するの?》
《いや…固有スキルは弄らないでおこうと思う。実は魔力消費が少しキツイ…。これで『永久炉』まで消えれば俺は絶命ものだ…》
《ふふっ、よく分かったじゃないか。懸命な判断だと思うよ!》
《素直に受け取っておくよ…》
これで俺達の用事は済んだ。しかし目の前ではスキルも耐性も奪われ、しかも心が壊れた俺達の標的がビクン、ビクンと体を痙攣させていた。魔力摂取の反動か?
《ねえそれよりさ…》
《用事も済んだし…》
《《再開しよう!》》
俺達は互いに笑みを浮かべると魔力剣を愚かで醜いその生き物へ突き立てた。