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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
初まりの町
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第15話

「そんなこと言われちゃ、会わない訳にはいかないじゃないか。」

シュラの切なる願い。初めから分かっていた上で、この数日を過ごしたのだろう。本当に俺は考えの浅い奴だ。

「ごめんな、シュラ……。」

誰に言うわけでもなくそう呟くと、手紙を暖炉の中へ捨てた。手紙なんかは大事に持つ物じゃない。

「リョウー、早く行こうよって、あれ、どうしたの?」

「ん、何の事だ?」

「やっぱりなんでもない。」

考えを振り払うように首を振ると、早く行こうと俺を引っ張っていく。

「そう言えばリアスは荷物とかないのか?」

「あると思う?」

「ごめん、」

「いいよ。行こう!」

「あぁ!」


「リョウ兄、さっきはごめん。」

「俺もな。けど、嘘じゃないからな。」

「もういいよ。ティナも同じ気持ちだもん!」

「二人共、イチャつきすぎ。」

「焼きもちか?」

「そんなことないよ!」

「ははは、さあ行くぞ。二人共、今日はやることが沢山あるだろ?」

『うん!』

「じゃあ行こう。無駄に使う時間なんてない、」

本当に。無駄に使う時間はないんだ。


「ここで買うの?」

「いや。先に冒険者登録を済まそうかなって。」

「分かった。じゃあ早く入ろうよ!」

「あぁ。」

ここで定番なのは酒臭いオッサンが絡んでくる。なんだが、流石にそんなことは……、

「おいおい、朝から奴隷二人なんて贅沢だねえ。金は払うし俺にも抱かせろよ、」

「あっ!?」

「リョウ…、」

「リョウ兄…、落ち着いて、」

「あぁ。十分落ち着いてるさ。その結果、こいつを殺すべきっていう判断に至った。」

「殺すだぁ?出来るもんならやってみな!」

「リョウ、殺しちゃダメ!」

「そうか。なら片足片腕くらいなら奪っていいよな?」

「それもやり過ぎ!」

「出来るもんならやれって!」

「だってよ、」

「けどダメ!」

「分かったよ、」

「くそっ、いつまでもコケにしやがって。覚悟しろよ!」

フラフラとした足取りのまま殴りかかってくる。なんでただの中学二年生がこんな物騒なことをしてるんだか…、

ドゴンッ!

「ぐはっ!」

「なんだなんだ。覚悟しろよなんて偉そうなことを言って、弱いな」

「なにを!」

鳩尾へ入った拳のダメージを無理矢理押し殺すと、俺の顔へ狙いを定めた。

「ん!」

「どうした?」

力の入っていない拳を握り締めると、力を込め骨を砕く。

「、!」

「どうしたんだその手は?」

「こ、この!」

「足まで失いたいのか?」

蹴りあげる足を抱えると、膝の関節を上から肘で破壊する。

「ぐぅ、」

「そろそろ酒も飛んだだろう。これで終われ、」

右手に左足。どちらも砕かれた男は立つこともままならない。そんな男へ一発。

「じゃあな、」

ギルドの外へ狙いを定めながら蹴り飛ばした。男は数回バウンドし、壁にぶつかり止まった。

「処理完了。二人共、行くぞ」

辺りは今の状況に唖然。二人でさえ固まってしまっている。しかしそんな中で…、

「うん。リョウ、後で分かってるよね?」

全くもって笑っていない目で笑われても恐怖しか感じないん。


「冒険者の登録規約を説明します。

第一にギルドは常に中立を保ちます。

第二に罰則違反の場合冒険者資格を剥奪します。

第三に緊急要請時は理由の無い限り強制的に集まってもらいます。

第四に依頼失敗時は報酬の半額を納めることとします。

第五にギルドは冒険者同士の争いにも中立を保ちます。

そして冒険者は自分の一つ上までの依頼しか受けられません。説明は以上です。」

「これだけ、ですか?」

「はい。」

「じゃあ、二人共分かったか?」

「う、うん。」

「ティナも。」

「それでは冒険者カードの発行を開始します。冒険者カードは身分証明書にもなり、リアルタイムで冒険者の能力を更新します。」

「分かりました。」

「冒険者カードの精製には本人の血液が多分に必要です。失礼ですが、この銀皿へお願いします。」

「分かりました。二人共、」

渡されたナイフで手首を傷付けると、流れ出す血を銀皿へ流し込む。

「ありがとうございます。ギルドには回復系の精霊魔法を使える者がおります。回復は無料で行っています。」

そういうとギルド職員の後ろから女の人が出てきて、俺達三人の傷口を蘇生する。

「それでは冒険者カードを発行してまいります。少々お待ちを、」

入ってそうそう荒々しい真似をしたせいか、周囲からは警戒の視線を向けられそれと同時に畏怖の視線も混じっていた。

「冒険者カードの発行が完了しました。」

渡されたカードをそれぞれが受け取ると、ギルドを出た。今日は準備だけだから依頼は受けるつもりは無い。

「もうー!リョウったらなんであんなことするのよ!」

「いいじゃないか。いい薬だろう?」

「そうじゃないよ!あの人、もう手も足も使えないよ!」

「だからどうしたんだよ。アイツは完璧に断罪対象だぞ。」

「なんでよ!」

「価値観が違うようだな。俺の育った世界ではあんな発言、絶対に憲兵に連れていかれるレベルだぞ!」

「えっ、」

「そうだ。」

「じゃ、じゃあリョウがしたことは?」

「完璧アウトだ。」

「じゃあ同じじゃないのよ!」

「まあ、それは…、」

その時、嫌な音がして目の前の看板が店から外れた。そしてその下には子供が!

「危ない!」

間一髪の所で滑り込み子供も一緒に脱出した。ギリギリだった。もう少し遅ければ看板の下敷きになっていたかもしれない…。

「リョウ大丈夫!」

「大丈夫だ。それよりもこの子は?」

「お、お兄ちゃん!」

「大丈夫か?」

「う、うん。」

「良かった。次からは気を付けろよ。怪我してたかもしれないだろ?」

「うん。ごめんなさい、」

「謝らなくていい。次から気を付けろよ、」

そう言ってポンポンと頭に手を置くと、送り出した。

「そんな優しい所があるのにどうしてあんなことしちゃうのかなあ?」

「性格かな?」

「じゃあそんな性格は直さなきゃね。」

「そうだな。二人に嫌われないように、」

走っていく女の子を見ながら、そんな言葉を交わした。


「で、武器系統はどうするの?」

「そうだなあ。取り敢えず二人は何が…、」 

『分かんない!』

「だよな。なら今夜俺が武器を基本的な種類調達してくる。明日、それを使って使いやすいものを選べばいい。どうだ、これでいいか?」

「私はそれでいいよ。」

「ティナも!」

「よし。ならもうすることは終わった。パーとこの大通りを楽しもう。」

俺がこの世界にきてビックリしたこと。それは大通りサイドには屋台が立ち並んでいること。そしてそれが年中。

「ねえリョウ、あれ食べよう!」

「分かった分かった。だからそんなに引っ張るなよ、」

すぐ近くに焼き鳥の匂いがして、嗅覚の強いリアスには耐えきれないレベルなんだろう。滅茶苦茶スピードを上げて引っ張られた。

「美味しい、」

「芳ばしいな、」

「ティナもこれなら食べられる!」

「美味しかった、」

「早いな!」

そしてそれから…、

「じゃあ次はティナ!ティナはあれがいいな!」

「分かったって、だからティナも引っ張るなよ!」

ティナも好きな所を見つけ俺を引っ張る。

二人共、長い間の束縛され自由を奪われた奴隷生活からの反動なのだろう。意外と落ち着いているように見えがちな二人が年相応の無邪気さで笑顔を見せていた。正直俺はこの笑顔を見られるだけで嬉しい。

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