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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
騎団の仕事
140/619

第140話

「リョウさん、我々ともう1度勝負してくれませんか?」

「ふっ、いいぞ!」

『おりゃぁぁぁー!』

《闇魔法・影移動》

懐の中のリアスをティナ達のいる物陰に移動させる。そして自分は『永久炉』により生成される魔力をリアルタイムで全方面へと放出した。

「お前達が立っていられるか! この魔力に!」

高密度かつ大量の魔力が吹き荒れると半分物質化した魔力により騎士達は立っていられなかった。そしてそれに慣れてきた彼等の中にはそれに耐える者が出てくる。

「リョ、リョウさん! シねー!」

「死なねえよ。それでも騎士か?」

ただでさえ動きが制限される中、俺は隙だらけの腹へドンッと拳を入れると顎を打ち上げる。それだけで騎士の意識は空の彼方へ飛んでいった。

「不意討ちなんて効かねえよ!」

後ろから飛んできた矢を掴むと放ったであろう相手へ投げ付ける。肩から鮮血を飛び散らせた騎士はその場で体を磔にされた。

「化け物が…」

誰が呟いたのか分からない。けれど確かに間違いじゃないな…。もう人じゃないんだから。

「その化け物に負けるんだよ。闇魔法・意刈ノ霧」

その瞬間、訓練所の中は真っ黒な霧に包まれた。放出された魔力に伝染した魔法は騎士の意識を刈り取ったのだ。そして結果、訓練所の中には意識を失った騎士の体だけが残った。

「おつかれ様!」

「大丈夫だ。それよりリアスは怪我とかしてないか? 少し強く攻撃してたけど?」

「だ、大丈夫!」

そう言って右腕を庇うリアス。そう言えば深々と切り裂いた記憶がある…。

「んなわけないだろ。あからさまに隠し過ぎなんだ!」

右手首を強引に引っ張ると肩から肘下にかけて深い切り傷が走っていた。滴る血が床に血溜まりが出来る程だった。

「大丈夫だって。これくらい…」

「遠慮する必要ないだろ。精霊魔法・蘇生」

白い魔力の粒子が傷口に集中していく。原理的にはいまいち理解不能なのだが、たしか魔力が体の再生機能により回復するまでの代わりをする、もしくは諸器官と変貌するんだったと思う。ホント、便利だよな~。

「ありがと…」

「傷は治っても失った血は回復しないんだ。もっと早く言えば良かったのに…」

「疲れてるでしょ?」

「……。気にすんなよ…。家族って言ったろ?」

確かにリアスの言うことにも一理ある。連戦で体力を削られている筈の俺には頼めなくても無理はない。けど…、頼ってほしい。

「どうしてそんなに優しいの?」

「どうして、だろうな…」

不思議そうに俺の顔を覗き込むリアス。その様子がやけに可愛く見えておもわず笑みが溢れてしまった。

「私は…、そんなリョウに恩返しがしたい…」

「恩返し?」

「例えば……、やっ!」

「そんなこと考えないでいいんだよ!」

周囲から見ればホントに触れずらいだろう。ティナやリリスでさえ物陰にまで下がっている程だ。

「リョウ…」

「俺が勝手にしてることなんだから、リアスがどうこう考える必要はない。だろ?」

「うん…」

軽く涙ぐんできたリアス。そんな姿が可愛くておもわず抱き締めてしまう。

「さあ、今日はそろそろ帰ろう」

「うん…」

俺のその言葉にティナやリリスも自分の武器を持つと石段から腰をあげた。それと共に走ってくる気配を感じる。折角いい雰囲気なのに…。

バンッ!

「なんて雰囲気の読めない奴なんだろうな…」

「全く…酷いですぞ…!」

額を擦りながら立ち上がる兵長。ホントこの世界の兵長ってまともな奴がいないな。

「で、用件はなんだ?」

「団長が御呼びです」

「俺が行く必要は?」

「行かなければ不敬罪となります…」

「仕方ない。リアス、お前達は‥」

「お連れ様もお連れになれとのことです」

「はっ?」

目の前の兵長へ首を刃を当てる。それと共に3人には強力な魔力壁により外部との接触を遮断した。

「リョウ殿、1度落ち着きましょう、ね?」

「わざわざアイツらまで呼び寄せる必要はないよな? どうなんだ?」

「…………。しかし!」

首筋から赤い血が流れ出す。それでも変えない表情に少し驚きながらも俺は刃を離さない。

「ソイツを、読んできてもらおう」

有無を言わせない言葉で命令する。騎士は勿論、リアス達もその言葉に体を強張らせた。

「その必要はありませんわ!」

「誰だ!」

速攻で刃を声の主に向けると魔力の刃を纏わせる。その間に兵長はサッと移動すると主を護衛するように剣を構えた。

「私は憲兵団団長、クリスティアン・ラウンダーと申します。クリスと御呼びください」

「ほう、その団長が俺になんの用だ?」

「いえ、ただあまり床を壊さないで欲しいとだけ」

「………」

周囲を見回すとボコボコになった床とバキバキに割れた床。魔法の余波により破壊された柱が音をたてて崩れていった。

「いいですね?」

「はい。すいませんでした…」

「ふふ、物分かりが良くて助かりますわ。お茶を振る舞いましょう。どうぞ!」

優しい笑みを浮かべたクリスは兵長を連れると建物の中へと戻っていく。心配そうな視線を向けるリアス達の結界を解くとクリスの後へついていった。

「リョウ、私に任せてくれる?」

「頼む。俺は警戒にあたる」

「ありがと」

恐らくは俺を雇いたいのだろう。正確には俺達、かもしれない。こんな取引のような話し合いに経験ゼロの俺が出るのはリスクが高い。

「こちらです。どうぞお連れ様も御一緒に、」

通された部屋に入ると向かい合うソファーがあり、その真ん中には低めのテーブルにお菓子が並べられていた。

「それで、御用はなんでしょうか?」

座るのと共に話を切り出した。兵長は部屋に入らず外で待つようだ。と言うことで中にいるのは計4人ということになる。

「アナタを私が個人的に雇用したいということです」

「ほう、で、何故?」

「最近は何かと町人達の間で悪行が蔓延っているそうなのです。それに関して‥」

「俺が潰せと?」

「ふふ、よくお分かりで」

「で、対価は?」

「土地を、差し上げましょう」

「ほう…」

確かに俺が今欲しいのは土地だ。流石、権力者というかその情報力には感服だな。

「いいですね?」

「そうですね。了解しました」

「良いお返事、ありがとうございます。それではまた明日にでも私の所へお越しください」

「はい。それでは後日…」

感情を読めない眼。クリスという女は優しそうな笑みを浮かべているが何故か恐ろしい。下手をすれば俺より強いかもしれない。

「リョウ、気を付けてね」

「分かっている。勝てるかも怪しい…」

「リョウ兄でも!?」

「あぁ。分かりにくい目をしていた…」

「皆、要注意よ?」

「だね!」

「うん!」

建物の中を歩いていても緊張を感じるくらいだ。そして恐らくはクリス、あの女も俺と同じ昇華しているのだろう。ジリジリと感じる魔力がリアス達の比じゃなかった。

「それはそうと、約束したからな…」

「土地の代わりに悪行改善?」

「そうだ。悪い話じゃないだろ?」

「そうだけど…。危険じゃない?」

「大丈夫。俺は死なない」

「………」

何処にそんな確信があるのか、と聞かれてもおかしくないような言葉。しかしリリスはそんなこと聞かなかった。助かる…。

「さあ帰ろう。最後に、凄く疲れた…」

「そうね。きっとこれからほぼ毎日会うよ…」

「マジかよ…」

考えずとも憂鬱だ。確かに綺麗な人だったし悪い人でもないだろう。けど恐い…。

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