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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
騎団の仕事
131/619

第131話

「リョ、リョウさん!?」

「怖かったろ? ごめんな…」

「い、いえ…。と言うより、皆さん知ってたんですか!?」

「ん。私達は知ってたよ!」

「僕達もです!」

「………」

「と言うことだ。皆、これの為に来てもらった!」

「ホントですか!?」

「本当だ。あとサチには渡したい物がある」

「渡したい、物?」

アイテムボックスから取り出したのは美しい青色に輝く剣。流石親父さんだ!

「これだ。お前の為に特注でつくってもらったんだ!」

「と、特注…」

「受け取ってくれるか?」

「は、はい!」

「ふふっ、それを使いこなせるようになったらまた勝負しような!」

「はい!」

立ち上がり周囲に目を向けると皆が温かい視線を向けていた。何がいいたい!

「送っていく。全員掴まれ!」

「は、はい!」

大事に剣を抱えるサチを微笑ましく思いながら俺は全員が俺に触れているのを確認すると、

「闇魔法・影移動」

と唱え貴族街のデイア家まで送っていった。すると門の前にはクロスさんが待っていた。

「お久しぶりですね。リョウさん」

「そうですね。きっちり依頼はこなしましたよ」

「ありがとうございます。報酬はギルドで受け取ってくださいね」

「はい!」

「サチも、」

「ありがとうございました!」

「いいえ。これからも頑張れよ」

「はい!」

俺はそう言うとそこにいる全員を連れてその場を後にした。

「いつも思うけどリョウ兄のこれって反則的だよね~」

「まあ、闇魔法だしな~」

ギルドに戻り報酬を受け取った俺達だったが今日は酒を飲まずそのまま宿へ帰った。明日からも用事は沢山あるからな!

「それでは僕達はこれで、」

そう言うと優司は先頭で頭を下げると藍夏、エリ、キルを連れて階段を上がっていった。下に残るのは俺達4人だけだった。

「明日はどうするの?」

「確かリリスの所の人達が俺と手合わせしたいって言ってたんだっけな?」

「あー、そう言えば!」

「だから明日はそっちに向かおうと思う。ティナも一緒にくるといい!」

「いいの!?」

「リリス、いいよな?」

「勿論!」

2人は一緒に依頼をこなしているし、俺がそっちへ行ってしまうとティナだけ1人になる。それは避けてやらねば可哀想だろう。

「よし、なら今日は早めに寝ようじゃないか。明日も大変だろうからな!」

「だね。行こっ!」

俺が1歩先に歩き始めると腕を組むようにリリスが隣へ来る。今度また、依頼を止めてデートでも行こうかな。

「さあ、リリスは向こ‥」

「嫌!」

「はっ?」

「私も!」

「ティナも!」

「………。はぁ、好きにしてくれ」

ガチャリと扉を開けると当然のように3人がその後に続く。傍らの大太刀を片付けコートを掛けると俺はベッドに倒れ込んだ。天井を見て出来るだけ部屋の中を見ないようにしているが、隣で聞こえる服の擦れる音等はなんとも耐え難いものがある。

「ねえリョウ?」

「ん、なんだ?」

声のした方へ振り向くとシーツだけで体を隠したリアス。取り敢えず魔弾を生成するとリアスへ向けた。

「タイム! 待って待って。すぐ着るから!」

「はぁぁ…」

魔力を散らし再び天井を見上げる。久し振りに感じる、体をフンワリと受け止めてくれる感触が実に心地いい。最近は忙しく意識していなかったから余計にそう感じた。

「リョウ~兄!」

いつの間にかモゾモゾと布団の中が動いたと思うと俺の隣へ潜り混んできた。俺の手の上で笑みを浮かべた姿を見ていると何を言う気も失せてくる。

「もう寝る…」

《雷魔法・神経電》

視覚、聴覚、触覚、魔法で操れる五感は全て遮断し俺は強制的に睡眠へと追いやる。流石にこの状況でこれ以上自我を保つ自信は無い。俺だって数週間前まではただの中2だったのだから。


「んぅ……。朝か…」

スゥと吹き抜けた風が俺の真っ黒な髪を揺らす。傍らであどけなく眠るティナに笑みを溢した俺はゆっくりとベッドから抜け出した。

「あれ、今日は早いんじゃないか?」

引っ掻けてあるコートを着て大太刀を手に取った頃、ガチャリという音と共に扉が開かれ紅茶を手にリリスが部屋に入ってくる。

「ふふっ、久し振りに2人っきりの時間が欲しくって!」

「嬉しいこと言うじゃないか。そう言えば最近は中々時間が取れなかったからな~」

「そうね。けど私はそこまで苦しくなかったの…」

「そうなのか?」

「うん。2人とも思ってた以上にいい人で…、それにリョウだって私のことちゃんと見てくれてたから!」

その銀髪の髪にはいつかの髪飾りが朝の日差しを受け光っていた。

「今度、いや、明日2人っきりで遊びに行かないか?」

「え、それって!?」

「一緒に来てくれるか?」

「勿論!」

パッと花が咲くように笑みが弾けた。随分と前から行こうって言ってるのに中々行けてなかったからな~。

「コイツらに、なんて説明しようか?」

「普通に、いいんじゃない?」

「そうだな。わざわざ隠すともないしな!」

「そうよ。もう家族同然だしね!」

まさかリリスからそんな言葉を聞けるとは…。

リリスがそんな捉え方をしてくれるなんて嬉しい限りだ。

「そうだな。あと、コイツらって起こしてやった方がいいだろうか?」

「辛そうだね…?」

俺がベッドを抜けたことで空いた場所にはリアスがつめてティナを抱き枕にしていた。力も体も自分より大きなリアスに抱き締められたティナは心なしか苦しそうだ…。

「あぁ。少し早いがいいかな?」

「いいんじゃない。だってもう普通に朝だしね!」

確かにその通りだ。部屋に差し込む光は俺が起きた時よりも強くなっていて十分朝と言える。

「ならリリス、そっちを頼む!」

「いいよ。じゃあリョウはそっちからね!」

リアスの手を丁寧に外そうとするが力の入れられた手は簡単に外れない。仕方ないので魔力も少し使うとやっと片手だけだが外すことができた。

「ふぅ…。一苦労…」

「大変ね。私はこっちから引くから!」

片手が外れたことで引っ張れるようになったティナを引くと懐に抱く。リアスも抱き枕が無くなって起きそうになったが近くにある布団を見付けると次はそれを抱き枕にして夢の世界へ戻っていく。

「んぅ…、リョウ兄?」

手の中からそんな声が聞こえる。取り敢えずベッドに座らせた。

「おはようティナ。起こしてしまったようだな」

「う、うん。大丈夫。ずいぶんと寝てたから~」

クゥっと伸びをしながら欠伸をするティナ。ピョコンと跳ねた髪が妙に愛くるしい。

「そっか。あいにくリアスは起きないらしいな…」

「あはは…。リアスはそんな人だから…」

リリスがそっと山吹色のリアスの髪を撫でていた。こう見るとリアスが凄く幼く見える。

「はぁ。俺が起こしてやるよ!」

「どうするの?」

「リョウ兄?」

まだ寝惚け眼のティナを抱え椅子に座らせると布団に抱き付くリアスの後ろへと回る。

「さあ行くぞ!」

構えると体に流れる魔力をわざと空気中へ漏れ出させる。1番始めに気付いたのはティナ。その時、目はカッと開かれ俺を慌てて凝視した程だ。

「な、何してるの!?」

「起こしてるんだ!」

「…………」

魔力の量をドンドン増やしていく。ティナと数秒差で気付いたリリスも同じように止めようとしたがティナに静止された。

「んにゃ?」

そんな声と共に片目を開けるリアス。それの共に魔力を止めると一気にリアスを起き上がらせる。

「起きたかリアス?」

「リョウ~?」

甘えるように抱きついてくるリアスにピンっとデコピンを喰らわせるとその勢いで倒れないように抱き寄せる。

「起きろ。さもないと~」

ピョコっと小さく生える尻尾を撫でる。するとリアスはビクッと震えると俺に視線を向けた。

「リョウ~」

「起きたか?」

「うん~。だから~」

「止めるよ。いい加減朝くらい起きれるようにしてくれよ?」

「分かったよ…」

半分涙目になったリアスに少しだが申し訳無く思いながら俺は軽くキスすると部屋を出ていった。

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