第13話
「いぇい!私の勝ち!」
「くっ…、」
「どうだ、二人共決まったか?」
「うん!」
「うん、」
「で、どうなったんだ?個別か?それとも二人合わせてか?」
「二人だよ、私とリョウがね!」
「はっ!?」
「(^-^)!」
「いやいや、何でだよ!分けろよ普通!そんなニコニコしても無駄だからさ、」
「いいじゃない!隔たりは無しだよ!」
「……。」
「ねっ!?」
「はぁ。ティナは一人で大丈夫か?」
「うん、」
「そうか。まあ、二人の間で決まったのなら俺は文句は言えないからな。」
「じゃあ、私が部屋とってくるね!」
「頼む、」
「オッケー!」
部屋の広さは五畳半程だ。暖炉が取り付けてあり、机、ベッド、小さなソファーだけが置いてある。
「ふぅ。もうこんな時間だったんだな…。」
「だね。私もそろそろ、眠い……、」
「先に寝てもいいんだぞ?」
「うん、、けどいい。折角リョウといられるのに…。」
なにがけどいい、だ。既に眠気でフラフラなのに。
「そうなこと言わずに早く寝ろ。これから嫌ってくらい一緒にいるんだからな、」
「そう、かな。じゃあ、おやすみ。」
「て、おい。」
この部屋にベッドは一つ。本来はキツキツにでもベッドで寝るべきなんだろうが、流石に…。
コンコン、
「いいぞ、」
「リョウ兄、眠れない、」
「はぁ。仕方ないな。こっちにこい、」
「うん、」
座っているソファーにティナを招くと、膝の上にのせる。
「こっちで寝るか?」
「いい。一人で寝るって言ったもん!」
「そうか、、まあいいや。眠くなれば戻ればいい、、」
まるで妹を見てるみたいだ。
俺の住んでた地域は極端に子供も人も少なくて、血の繋がらない子でも兄弟みたいに親しい。
「前から気になってたけど、リョウ兄ってどうしてティナ達に優しいの?奴隷だよ?」
「俺達転生者の世界に奴隷なんて居なかったからな。だから非人道に扱われるのは耐えられないんだよ、」
「そうなんだ、、けど、他の転生者の人もいっぱいいるのに…、」
「まあ、そうだよな。なんで、だろうな、」
俺にだって自分が二人を助けた理由なんて分からない。ティナにはこう言うが、本当は気紛れだったから…。
「リョウ兄、これからどうしようかな?」
「ん?」
「これからだよ、」
「付いてくるんじゃないのか?」
「そうだけど、やっぱり本当にいいのかなって思って…。」
「俺は来てほしいな、」
「来てほしい?」
「あぁ。さっき、リアスとティナと俺、三人いて楽しかっただろ?」
「うん…、」
「じゃあそれでいいじゃないか。迫害とかそんなのどうでもいい。俺達三人で行きたい所に行って、やりたいようにやればいい。そう思わないか?」
「そうだね…。そんな風になればいいな、」
「心配なのか?」
「うん。リョウ兄のことは信じてるよ。けど、奴隷から解放されても奴隷印は残る。いつか、いつかまた捨てられるんじゃって、怖くなるの。」
「考えすぎだ、」
俺はティナを抱き寄せ、静かに言い聞かす。
「今すぐに信じてくれなくても構わない。お前達が俺の元を去ろうとするまで、俺はお前達の家族であると誓おう。絶対にだ、」
「絶対、か…、」
「エルフであるティナと俺には圧倒的な寿命の差が存在する。いつかティナを残して死んでしまうかもしれない。けれどティナが俺の前から消えるまでずっとティナはずっと俺の家族だ。」
「リョウ兄…。ありがとう、ティナもリョウ兄の家族だよ!」
「ありがとな…、」
俺には家族なんて者はいなかった。
母親はとうの昔に蒸発。二年に一回程度しか帰ってこない父親も既に死んだ。祖母も俺の為に早朝から深夜まで働き詰めだ。確かに感謝してる。けど、決して家族なんて言えなかった。
「どうしたの?」
「ん?」
そんなに顔に出てたか。
確か、リアスにも言われたな。
「ずっと悲しい顔してるよ。どうしたの?」
「小さい頃を思い出してな…、」
「それは向こうの世界のこと?」
「あぁ。二人には悪いが、奴隷なんかよりも劣悪な頃だったよ…。ごめんな、暗い話して、」
話題を変える為、少し考えていると…、
「そんなこと無いよ!ティナはリョウ兄が心配してくれて、相談にのってくれて嬉しかった。ティナはリョウ兄にも教えてほしい。ティナが嬉しかったからリョウ兄のことも教えてほしい。」
「……。」
「ダメかな?」
「面白くもなんともないぞ?」
「いいよ。知りたい、」
「そうか。何処から話そうか‥‥、」
それからは俺の身の上話をティナへ聞かせた。その間、ティナはずっと真剣に聞いてくれて、俺も少し嬉しかった。
「ありがとな、聞いてくれて。」
「ティナだって、聞けてよかったよ。」
「そうそう、私もリョウの身の上話、聞けてよかった。」
『リアス!』
「あれ、ばれちゃった。」
リアスはニシシッと笑うと、ベッドから出てきて、腰をおろした。
「いつから起きてたんだ?」
「リョウがお前達の家族であると誓おうって言った頃から!」
「普通にはじめの頃だぞ!」
「そんなこと言われても、、それにしても、リョウ、私は違うの?」
「当然!」
「っ、!」
「リョ、リョウ兄……、」
「冗談だ!」
「もう!リョウが意地悪する~!」
「リョウ兄にもそんなとこあるんだ…。」
「当たり前だろ。」
「ねえリョウ。私のことどうでもいいの?」
「そんな分けないだろ!リアスもティナも、二人が俺の前から消えるまでは俺の家族だ。俺から二人を遠ざけることはしない。」
「リョウ…、」
「リョウ兄…、」
「もう寝よう。俺も一応お前達二人と同じ年齢だぞ。滅茶苦茶恥ずかしいんだが…、」
「頼りにしてるよ、リョウ!」
「リョウ兄、信じてるよ!」
「お前らなぁ……、」
「二人共、寝ちまったな。」
雑談、本当にそんな言葉でしか表すことが最適な時間が過ぎた。そして時間が過ぎると二人共、眠気と言う魔物に襲われ眠ってしまった。
「俺は、どうするかな?」
リアスはベッドの上でコテンと倒れていて、ティナの場合、俺にもたれるように寝ている。
「よくこんな体勢で寝られたな、」
取り敢えずはもたれる体を抱き上げるとベッドまで運ぶ。
「んっ、、」
無意識なのだろう。
けど、しっかりと俺の手を掴んで離さない。
「はぁ。分かったから、ここで寝ればいいんだろ?」
俺がそう言うと、若干力が弱まり外れた。
「ティナの無意識、恐るべし。」
二人共、本当にそれぞれ考えてるんだろう。
そう言えば商人の書類に記載されていたが、二人共俺と同い年らしい。それなのに奴隷なんて劣悪な境遇を受けていたのか……、くそっ!
「何故だろう。何故、俺はこの二人に執着していまうのか?」
分からない。それに冷静に考えたら出会ってまだ一週間も経っていない。けれど…、
「守ってやりたい、」
この気持ちは確かに俺の中にあった。
絶対に、俺の命の炎が燃え尽きるまで、守りきって見せる。
「止めよう、」
思考がグルグルと無限に終わらない。
俺はリアスとティナへ布団を被せると自分はソファーに座りパチパチと燃える炎を見つめる。
「何をしてるんだろな、」
頑張って戦って、女の子を助けて。
日本じゃありえない状況で、ここに来なければ絶対に出会わないであろう出来事と人々。
「寝よう、」
考えても仕方ない。もうここは日本じゃないんだ。今はこの助けた二人を大切にすることくらいしか出来ない。