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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
運命の収束点
122/619

第122話

「出来たぞ!」

「早いな!」

バタンッと開かれた扉。出てきた親父さんの手には青白い剣が輝いていた。

「すまん遼。ここに構えて長くないからミスリル位しか使えなかったんだ…」

「大丈夫ですよ。子供ですから強過ぎる武器なんて与えられません!」

「そういってもらうとありがたい…」

テーブルへ置かれた剣には青白い光が宿り不思議な程綺麗に磨かれていた。

「お代はいくらになる? もうプレゼントなんて言うなよ?」

「ふっ、言ってくれるじゃねえか。これ1本2万Gだぞ?」

「余裕だ。これでいいか?」

「ふっ、しっかり受け取ったぞ!」

「じゃあな…」

椅子に掛けていたコートを羽織ると残っていたココアを飲み干し部屋を出ていく。

「またね!」

「あぁ。またな!」

笑顔で見送られた俺は作ってくれた直剣をアイテムボックスへ仕舞うと武器屋から離れた。夜になったが依頼を精算しなければ…。

「それにしても長居しすぎたか?」

空は既に真っ暗。日常生活の光だけが街中を照らしていた。

「絡んでくるなよ…」

ギルドの前で祈るように呟くと俺はゆっくりとギルドの扉を開ける。するとモワッとアルコールの匂いがぶつかってきた。

「良かった…」 

ギルドの中には誰かさん達がが酒盛りをしてるのと、数人の冒険者が依頼ボードを眺めてるだけで他に絡んでくるような人はいなかった。受付へ直行した俺は依頼を精算し酒場へ腰を下ろす。

「ホント酒好きだな~」

「そんなこと言わないでよ。私達だって毎日じゃないでしょ!」

「ここ1週間で何度飲みに来た?」

「リョウがイジめる~」

「はいはい、リアス。リョウにも飲ませちゃえば?」

「だね!」

「おい!」

「ふふ、2人共ダメだよ。これ飲んだら終わりだからね!」

「お酒飲めないからって~」

「もう、言わないでよ!」

「ふふっ、ティナ面白ーい!」

仲良くなれて良かったと思う。第三者視点から見ると初めはリリスが孤立しそのあとは急激に仲良くなった2人にティナが孤立していた。

「ねえリョウも飲もうよ!」

「仕方ないな。一杯だけだからな!」

「やった!」

「さあティナも来い」

「うん!」

1人卓上の料理をつまんでいるティナを隣へ招くとリアスに勧められた酒をグッと傾けた。

「あー、ティナズルい!」

「ティナのだもん!」

「今回は勘弁してやってくれよ、」

「リョウが言うなら…」

「リアスも来たいのか?」

「そ、そんなこと…」

「面白いな~」

「だね~」

「んー、リョウが意地悪する~」

賑やかな夜。皆が仲良くなった今の状況を代表するような今夜に俺は歓喜した。


「ん、朝、か…」

布団をめくると弱いながらも確かな陽光が俺を照らしていた。するとワサワサと俺の手の下で何かが動く。咄嗟に大太刀をもう片方の手で掴んだ。

「て、エリか…」

被さっていた布団をめくるとその下には丸くなって俺にしがみつくエリ。安心して大太刀を元に戻すともう一度布団を被せ俺はベッドを抜け出した。

「そう言えば優司らもいるんだよな、ここ…」

最近は早くに出て遅くに戻るから2人を含めエリとはなかなか話せてなかった。リアス達2人のことも紹介するべきだな…。

「まあいい。降りよう…」

鏡を見てボサボサになった髪を整えるとコートを羽織り大太刀片手に部屋を出た。

「あ…」

「あ…」

部屋を出ると隣から出てくる優司にバッタリ会った。噂をすれば影がさす、まさにこの事だな…。

「お久し振りですね、」

「だな。最近会わなかったがどうしたんだ?」

と言うことでまあ、転生者同士ってのもあって俺達2人はそのまま下の酒場へと腰を下ろすと朝食を頼んだ。

「えーと、僕は藍夏ちゃんと一緒に冒険者登録してコツコツと…」

「そうか。どれくらい貯まったんだ?」

「680000Gくらいですかね!」

「多いわ!」

「そうですか?」

「あぁ。俺なんてまだまだ…」

「もしかしてリョウさんって低ランク依頼ばかり受けてるんじゃないですか?」

「低ランク依頼?」

「知らないんですか? 依頼はF~Sランクまであって、低ランクの依頼ボードにはF~Dまでの依頼しかないんですよ、」

「そ、そうだったのか…」

「そしてC~Aは奥へ進んだ部屋にありますよ。またランクに関係無く危険な依頼は2階にあります!」

「どうしてそんなに詳しいんだ?」

「受付嬢さんと仲良くなっちゃって、色々教えてくれますよ!」

「そ、そうか…」

藍夏も苦労が絶えないな。あれだけテキパキして業務用スマイルの受付嬢と仲良くなるなんて絶対気がある筈だ。

「今度一緒に依頼でも片付けませんか。リリスさんもいるんでしょ?」

「あぁ。まあ俺の所には少し仲間が増えたがな…」

「そうなんですか? もっと早く紹介してくださいよ!」

「悪かったよ。1人はすぐ降りてくる筈だ」

「そうですか…」

運ばれてきた朝食とは言えないようなおつまみ同然の朝食をホチホチと食べていると案の定、ティナが翡翠色の髪が少し跳ねたまま階段を下りてきた。

「おはようリョウ兄~」

「おはよう。先に顔でも洗ってこい、」

「うん、」

「あの子ですか?」

「まあな。あぁ見えてしっかり者なんだが…」

「分かりますよ。これでも人を見る目には自信があるんです!」

「そうか。まあ、自己紹介でもさせるよ…」

「はい!」

戻ってきたティナは不思議そうな顔をしていた。ちなみに髪は綺麗に整えてあった。

「リョウ兄に似てる…」

「そうですか?」

「あ、す、すいません。初対面なのに…」

「自己紹介といこう。優司からな、」

「はい。僕は橋本優司。よろしくお願いします!」

「こちらこそ。ティナです…」

俺の隣へ腰を下ろすティナは少し困惑していた。優司を眺めてその黒髪へ目を移した。

「僕の顔に何かついてますか?」

「い、いえ。もしかして転生者さんですか?」

『っ!』

俺達2人はビクッと震えた。まだティナを含め2人には何も話していない筈。何故だ!

「どうしてそう思うんだ?」

「黒髪黒眼でここじゃ珍しい名前だから…」

「あ、そ、そうか…」

そう言えば俺が見てきた転生者はみな黒髪黒眼だった。確かにそう考えると十分転生者と断定できる。

「は、はい。僕は転生者です。それにしても小さいのに賢いですね…」

「小さい? お前よりも年上だぞ!」

「えっ!?」

驚いたような顔が面白い。確かに背の高い優司から見ればティナなんて小さく見えるだろうな。

「ティナの種族はエルフ。いわゆる長寿なんだ!」

「そうなんですか…。流石はファンタジー…」

「まあそういうなよ。リリスだって魔族なんだぞ?」

「そ、そうだったんですか!」

「そうだ。因みにお前達にも見せたかも知れないが俺も人間じゃない!」

「………。驚きの連続ですよ…」

「まあそう言うなよ。なあティナ、」

「うん。ティナ達から見れば人である優司さんも珍しいんですよ?」

「た、確かに…」

「そう言うことだ。そろそろ他の皆も降りてくるんじゃないか?」

「あ、いえもう少し掛かるでしょう…」

その顔には苦笑いが浮かび呆れも混ざっているように見えた。

「どうしたんだ?」

「昨日、お酒に挑戦するって言ってここのお婆さんのを貰ったんですよ。そしたら…」

「そう言うことか…」

「はい…」

「お互い大変だな、」

「お互い、リョウさんもですか?」

「まあな。リリスも昨日飲みすぎたらしくてな…」

「御愁傷様です、」

「こちらこそ、」

男2人の連れへのため息は深く感情がこもっていた。そんな姿は見てティナは苦笑いするしかなかったらしい。

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