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種族絶戦 ◈◈◈人の過ち◈◈◈  作者: すけ介
運命の収束点
120/619

第120話

「死ね!」

「○△□○△□○△□○△!」

絶炎の危険性を察知したのだろう。俺の飛ばす絶炎を必死に避ける魔物の目にはもう余裕等感じられなかった。

「そろそろ終わりだな?」

俺の攻撃を転がり避けた所を思い切り蹴り飛ばすと弾丸状に小さくした絶炎を次々に放っていく。しかしそれは己を守るかのように作られた魔物の鱗の壁で相殺されてしまう。

「○△□○△□○△□○△!」

自分が互角に殺りあっていると思ったかのか、魔物は俺を威嚇するように吼えるとその馬鹿みたいなスピードで瞬く間に俺の懐へと忍び込む。しかし…

「言ったろ? 終わりだって…。土魔法・鋭槍」

手を振り下ろすと共に墜ちてくる土魔法による槍は『絶炎ノ矛』の影響を受け深紅の絶炎をまとっていた。そしてそれを諸に喰らった魔物はというと…

「………………」

物言わぬ死骸と化していた。大量の鋭い槍に貫かれた魔物は白目を向き舌を垂らしながら死んでいた。つい今までの強敵だったが死んでしまってはもうただの屍だ…。

「ん?」

戦闘中でも聞こえていた鳥達の鳴き声が一斉に止んだ。そして一瞬の内にバタバタという羽音と共に鳥達は飛び立っていった。

「……………」

鳥だけじゃない。何となくだが近くにいた気配も遠く離れていっている。そしてそんか中近付いてくる大きな気配を感じた。

「ゴオォォーー!」

「うわっ!」

ソイツは急に現れた。真横から尋常じゃないスピードで大きな口を広げながら現れたソイツの牙を寸でのところで躱すと受け身をとりながらその姿に視線を向けた。

「ゴオォォーーーーーー!」

「ワニ、だと!?」

ソイツは体長10メートルを越えるような化け物だった。鋭く血塗れの牙に黒光りする鱗。ギョロギョロとした大きな目玉はしっかりと俺を捉えていた。

「ゴオォォーーー!」

「危なっ!」

少し驚く時間もくれないようだ。ソイツは助走無しに物凄いスピードで突っ込んできて下手をすればそのまま呑み込まれてしまっていたかもしれない。

「ゴオォ‥」

「うぉぉぉぉー! 俺だって負けてままじゃないんだ!」

俺の叫び声に異常を感じたのか一瞬隙を見せたワニ。その間にワニの顔の前へと走ると付近の小石を大きく振りかぶりその大きな眼球へと投げ付けた。

「ゴオォォーー!」

今度は威嚇ではなく悲鳴の声。体と同じくらいの長く太い尻尾をバタバタと振り回し周囲の木々を片っ端から薙ぎ倒していった。

「行くぞ! 『雷鳴ノ瞬撃』!」

目が見えなくなり暴れ回るワニにはスキルが発動したのも関知できないようだ。雷鳴と同等のスピードで迫った俺はその加速と共に硬い鱗へと大太刀での一閃をくわえた。

「ゴオォォーー!」

再びの悲鳴。深く斬り裂かれた体から飛び散る血が俺の体を真っ赤に染め、周囲を血の海のようにしていった。

「利用させてもらう。『鮮血覚醒』!」

浴びた血の分、身体能力が上がるという破格のスキル。体が大きい分、吹き出す血の量は多くなり『鮮血覚醒』を強めているだけだった。

「ゴオォォーー!」

「はははははっ! お前の血は強いな!」

元々強い魔物の血だけあって強化される幅も大きい。魔力の濃い鮮血はスキルにより俺に吸収され俺の身体能力を化け物を越えた化け物へと導く。

「ゴオォォッ!?」

「こんなものなのか?」

突進してきた鼻先を腕1本で受け止めると、思いっきりその鼻先へ蹴りを喰らわせる。

「ゴオォォーー!」

それでもダメージは皆無といえるだろう。しかしそれでいい。怯んだワニは一旦引き下がると改めて俺を見据えた。

「掛かってこい!」

「ゴオォォーー!」

サッと飛び上がって突進を躱すと背中を走りながらその鱗に大太刀による切れ目を入れていく。それと共に吹き上がる血飛沫は俺をより強くしてくれる。

「おりゃっ! もう1度!」

尻尾の方まで走ってくると再び血の吹き上がる背中を切り裂きながら走る。

「ゴオォォーー!」

「死ね!」

《『絶炎ノ矛』・『雷鳴ノ瞬撃』!》

鮮血による俺の身体能力は既にコイツの背骨を叩き割れる程に達っしている。それに加え必ず燃やし斬る絶炎と雷鳴のスピードを重ねた拳。お前は耐えられるか!

ドカーーーンッ!

グチャっというグロい音と共に頭の骨は砕け余波によって頭を貫通させた。降りしきる血飛沫は俺の体を更なる高揚感へと招いていく。

「ふぅぅ。強かった……」

このままではその高揚感に意識を持っていかれそうなのでスキルを解消した。それと同時に体から溢れるように吹き出す魔力等も収まったが若干寂しい感じがしないこともなかった。

《よく僕の力を借りずに勝てたね?》

《これくはいなら勝てる。まあ、コイツの体がデカかったってのもあるかもしれないがな…》

もしこの強さで体まで小さければ俺が浴びる血も少なかっただろう。そうなれば俺のスキルによる強化率も落ちていた。

《まあ、良かったんじゃない。魔晶は?》

《当然回収する。折角倒したんだしな!》

まあさっきまで生きていただけあって血の吹き出しようは凄まじかった。心臓を探そうと胸の辺りを切り裂いたがその拍子に体全体が血塗れになるなんて…。

《あった…》

《へえ、いい色じゃないか!》

暗めの色だが深さを感じ、濁っている暗さではないその色は不思議と引かれるものがあった。やはり強い魔物程いい魔晶なのかもしれないな。魔晶をアイテムボックスへと片付けその場を後にしようとした俺。しかし…

「ゴウッ! ゴウッ!」

いつの間にか囲まれていたようだ。その数はザッと50匹は越えていて、木々の隙間から見つめるその目玉は気持ち悪ささえ感じてしまう。

「ザッと70か。雑魚が集まっても意味なんてないぞ。闇魔法・高重力×50倍」

単に魔法を使うだけでは俺も潰されかねないので自分のいる場所だけは魔法を解く。しかしその外にいる木々や岩、魔物達は煎餅のようにペシャンコに潰れてしまった。

「ヤバ…」

これじゃあ魔晶を回収できない。少しの後悔を抱えた俺は魔法を解きながら、その中でも辛うじて形を保っている個体へと近付く。

「あ、終わってるな…」

やはり予想通りその体の内臓類は全滅。骨なども複雑骨折のような状態で見てなければなんの死骸かさえ判別できないだろう。

「それにしても…」

一言二言で十を越える生き物達を一掃できる程の能力。そして血塗れの自分。やはり何か変わってしまったんだろう。

《なあ裏背、これからどうしようか?》

《どうしよう…。どういうこと?》

《特にやりたいことがない…》

《あー、そう言うことね。なら竜次君達でも探してみれば?》

《竜次…。あー、アイツらか!》

《忘れてたの!?》

《あ、あぁ。最近、前世の記憶は残っているが単なる記憶というか…、自分がいた感覚じゃないというか…》

俺の中では既に前世の境遇や竜次、桜咲、婆ちゃん等の人々は単なる記憶と化していた。自分が過ごしていた実感がなく、単なる映像を見せられていた気分だ。

《ふーむ…》

俺が物思いに耽っていると珍しく裏背が真剣な様子で俯いている。その理由は分からないが裏背がこうなるなんて…、異常だ。

《取り敢えず今は関係ないな。俺は先に行くぞ!》

《分かったよ…》

いつもならそう言うとスッと消えるのだが、裏背はそこで立ったまま動かない。まあ、今問い詰めても答えは出ないだろう。俺は不思議に思いながらもその場を後にした。

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