第12話
「旦那、よくいらっしゃいました。」
「あぁ。二人を買おう。」
「分かりました。」
商人が二人を呼びに行ってる間、俺は鍛冶屋でのことに頭を巡らせていた。あの時、ちゃんと別れる気になれなかったのは何故だろう。
「リョウ!」
「リョウさん!」
「旦那、連れてきましたよ!この二人、締めて5500000Gになります!」
「なに!安くないか?」
「はい。エルフの方は元々家の商品ではありませんし、多少値引き対象になりますな」
「そうか。わかった。」
俺はアイテムボックスからその分を取り出すと、机へ置く。
「まいど!支配権は買った旦那にあります。エルフの方もです。それではご自由に、」
商人は札束を纏め中へ運び始める。
「二人共、行くか!」
「うん!」
「はい!」
「あっ、、リョウさん、これお返ししますね」
使わなかったのだろう。ティナは魔晶を返す。
「確かに返して貰った。けど、これはティナにやるよ、」
「え、いいんですか?」
「あぁ。もしもの時は使ってくれ」
実は今回のトーナメントで出さなかったのだが俺の頭の中にはもっと強力な疑似生命のイメージがあり、ティナに渡していたのはその強力な疑似生命を刻んでいた。
「ありがとうございます!」
「あと、リアスもな。ごめん、思っていた以上に長くなってしまった。」
「いいんだよ。私、信じてたから!」
「嬉しいことを言うな。」
嬉しいな。本当に。
リアスがこうやって笑みを見せてくれるのが♪
「これはリアスの分だ。」
リアスにも属性は違うが同じレベルの魔晶を渡す。
「いいのリョウ。私、何もしてないのに!」
「いいんだよ。そうだ、二人共奴隷から解放しなきゃな、」
俺がそう言い奴隷権を行使しようとすると…、
「ねえリョウ。私達を奴隷から解放したらどうするつもり?」
「特に考えていない。それに二人を連れ回すのも悪いし好きにすればいい。」
「そんなの嫌だ!」
「!?」
「私も嫌です!」
「!?」
「私を連れていくって言ったじゃない!」
「私もです!」
「では逆に聞く。本当にいいのか?」
『当然!』
「分かったよ、じゃあ取り敢えず奴隷からは解放するぞ?」
「うん!」
俺が触れながら奴隷権を使い奴隷から解放する。奴隷は主人に絶対服従だから、解放も出来るのだ!
「これでいいぞ。これで二人共、奴隷じゃなくなった!」
「ありがとうリョウ!」
「ありがとうございますリョウさん!」
「どういたしまして。それはそうとティナ、敬語は止めてくれないか?」
「いいよ!」
「ありがとう。敬語は苦手なんだよ。」
「リョウったら、始め私にも言ったよね?」
「まあな。敬語なんて中々使わないからな…。」
それは仕方ないことだ。
取り敢えず俺が敬語を使う相手なんて中学の先生くらいしかいなかった。
「それはそうと、目的はあるの?」
「無い。けど取り敢えずは資金を集めよう。その後はそれぞれの大陸を回ろう。」
「そうだね。私の故郷も行きたいな。」
「リアスの故郷?」
「うん………。あっ!そうだいい忘れてたね、私、これでも獣人だよ!」
「!」
「ごめんね、言うの忘れてたよ。」
「まあ、それはいいんだが、この世界に獣人っているんだな。」
「うん!いる大陸には一杯ね!」
「そうなのか…。」
「そう言うリョウの正体って何?」
「転生者だ。」
「やっぱり、そうだと思ったよ。」
「そうなのか?」
「うん!勘だけどね!」
「そうか。凄いな!」
「まあね、野生の勘ってやつかな?」
「ねぇぇ。ティナはそれ入れないんだけどー!」
「あっ、ごめんごめん。ぷっ。そんな顔するなよ、」
頬を大きく膨らませ拗ねたような顔をして俺を睨む。けど、それは悪戯したくなるだけなんだが…。
「私もごめんね、」
「もうっ!」
「さっ、さっ。今日は宿に泊まるし早く行こう。またそこでゆっくり話せばいいだろう。」
「確かに、道端での立ち話も可笑しいしね、」
「あぁ。ティナも行くぞ」
「うん!」
「話は反れるんだけど、リョウのその右目の眼帯って何?」
「これか?これは、オッドアイを隠す物だ。オッドアイって言ったら嫌われがちかなって思って。」
「そう言うことね。ねえ、、眼帯の下、私達といる時は見せてくれない?」
「ん、どうしてだ?」
「仲間じゃない。仲間なら隔たりは無くしたいなって、」
「そうか、そうだな。ティナもオッドアイは大丈夫か?」
「うん!」
ティナは意味深げな笑みを浮かべ頷く。
仕方ない。ここ数日つけていた眼帯を机へ置いた。
「これでいいか?」
「うん!やっぱり隔たりなんて物は無い方がいいよ!」
「そうだな。二人に言っておいて、俺が隔たりを作っては意味無いよな」
「そうだよ。そのオッドアイだって、何か意味がある筈だよ!」
「そうだよ!」
「えっ、」
「えっ、」
「ティナ達エルフは人間よりも魔法学が進んでるんだ。だからそのオッドアイの意味も知ってるよ!」
「そうなのか!?」
「うん。オッドアイ、それは魔眼って呼ばれる能力だよ!」
魔眼。異世界小説等で出てくる異質な能力を持つ眼のこと。
「魔眼か…。」
「どうしたの?」
「俺の転生する前の世界には、空想の物としてあったんだよな。」
「そうなの?」
「あぁ。特別な能力を持つ眼として…。」
「凄い。それ、合ってるよ!」
「えっ、ホント!?」
「うん。魔眼は魔力を使って能力を使うんだ。例えばリョウ兄の眼なら魔力を散らすことが出来るんだ!」
「なあティナ、色々と聞きたいんだけど、取り敢えずそのリョウ兄ってどうした!?」
「ダメ?」
「問題は無いけど…。」
「じゃあいいでしょリョウ兄!」
「はぁ。」
「で、さっき言ったみたいに魔眼は魔力を流すと能力が使えるんだよ。だから人間が忌み子って言う意味なんて分かんないよ!」
「そうだったのか。まあ、人はそれを知らない。眼帯は着けたままにするよ。」
「その方がいいね。私達といるなら別だけど…。」
「あぁ。そう言えば忌み子で思い出したが、ティナは明日俺と服屋にでも行こう。」
「えっ、どうしてリョウ兄?」
「ここまで帰ってくるまで、ティナにはずっと悪意のある視線が向けられていたからな。そして、それの意味は…、」
「他種族ってことだね?」
「あぁ。だから隠すのにフード付きのコートでも買おうかと思ってな、」
「えっ!いいの!?」
「あぁ。ティナもリアスもそうだが人の町では忌み嫌われてしまう。それにより起こるいざこざもあるだろう。その為に隠せるものは隠さなきゃな!」
「確かに。けど、なら他の町へ行けば?」
「それはそうなんだが、取り敢えず俺達には資金がないんだ。だから稼ぐまではな、」
「リョウ兄、なら、冒険者になったらどう?」
「無理だ、」
「えっ、なんで?」
「二人共、実戦は?」
「無い…、」
「だろ?だから、」
「けど、それは少しずつでも頑張れば!」
「危険だろ?」
「危険を恐れちゃ何も出来ないよ!」
「…、」
「でしょ。ねっ!」
「分かったよ!」
「やったー!」
「じゃあ二人共、明日は二人の装備と冒険者登録でいいな?」
「うん!」
「いいよ!」
「なら、今日は早めに寝て鋭気を養うぞ!」
『おー!』
「そう言えば、部屋割りはどうするの?」
「そんなの、決まってるだ‥‥」
「リアス!?」
「ティナ!?」
「分かりました、」
どうやら入らない方がいいらしい。
二人の絶戦が終わるまでは酒でも飲んで待とう。