第11話
「二人共、あたしに内緒で何を話してたの!」
「えーと、、」
「いいんですか?」
「まあ、いいか。今はリョウもいるしな。」
「どうしたの?」
親父さんは俺を含め自分が転生者であることを話した。
「そうなんだ……。それに、リョウもなんだね」
「あぁ。ごめんな、嘘ついてて。」
「いいよ。あたしもリョウだけだったら冗談かなって受け止めてたと思うし。」
「ありがとう、」
「俺も、すまん。」
「親父も、もういいよ。」
「……。」
「さあ、二人共ご飯にするよ。折角なんだし、今日は豪華にするよ!」
「お、久しぶりの娘の手料理だな!」
「久しぶりってっ!いつも作ってるじゃない!」
「簡単な物だけどな!」
「親父ー!」
それから数時間後、トーナメントの主催者の使いが賞金と商品を持ってきた。金だけだと思っていたのにこれはいい誤算だ。
「それではリョウ様。こちらが賞金の10000000Gでございます。そしてこちらが三位内入賞のアイテムボックスになります。そしてこれが参加賞の100000Gでございます。ご確認を。」
渡された途方もない量の紙幣の確認はさておき、三位入賞のアイテムボックスの確認はした。しかしボックスと言うが形は単なる宝石のようだ。
「間違いない。」
「それでは受け取りのサインを。」
渡された紙にサインを書くと使いは大事にその紙を折ると胸元へしまう。
「それではリョウ様。失礼します。」
そう言うと乗ってきた馬車に乗り帰っていった。そして使いが帰ると親父さんとシュラが出てくる。
「お前凄いじゃないか!あのジーンを破ったのかよ!」
「はい。少しズルいことをしましたが…。」
「ははは、ズルいって、勝てばいいんだ勝てば!」
「そうですね!」
「リョウ、改めておめでとう!」
「ありがとう、二人共。」
俺はそうお礼を言うと、金の内、出せる量を机の上へ出した。
「受け取ってくれ。シュラにはとても世話になった。それにこれの代金もだ、」
ミスリルの短剣はほぼ一本タダで貰ったのと同じだった。
「リョ、リョウ、止めてよ。あれはあたしが勝手にしたんだよ。」
「そうだぞリョウ。俺も金なんて貰っても嬉しくない。それなら俺の武器を買ってけ!」
「……。」
「なっ、俺の武器はスキルで創った地上最高傑作だ。それと交換なら受け取ってやろう!」
「……。分かった。ならオススメをこれで払おう。」
「よし、そう来なくちゃな!」
まんまと親父さんの言う通りになってしまった。
まあ、悪い気はしない。
「これでどうだ?」
親父さんが持ってきたのは真っ赤な武器が四つ。それぞれが尋常じゃない能力を感じる。
「これは?」
「これは全て日緋色金による武器だ。見ての通り刀、弓、槍、二刀がある。まあ、最後の二刀は使い物にならないけどな。」
「少し待ってくれないか。日緋色金って…。」
「それは俺のスキルだ。自分の知る金属なら何でも創ることが出来る!」
「最強だな、」
「そんなことない。これは等価交換でこの日緋色金を創るのにどれだけ純鉄を集めたか…。」
何処か遠い所を見るように眺めると、思い出したようでウンザリとした表情を見せる。
「それなら、こんな物じゃ足りないんじゃないか?」
「いや、十分だ。いくら大変とはいえこれだけ有ればもう一度創る以上の純鉄が手にはいる。」
「そう、なのか。」
「おう。だからこれ全部持ってけ!」
「全部!?」
「おう。全部だ!」
「本当に、いいのか?」
「おうよ。けど、一つ条件だ!」
その瞬間、親父さんの雰囲気が変わり顔も真剣な顔付きになる。
「……。」
「俺に、俺に銃の作り方を教えてくれ!」
「‥‥。」
「お願いだ!」
「いや、それよりそんなことでいいのか?」
「あぁ。俺は特技兵所属だが銃に関しては全くの無知だった。俺は俺の戦闘機をあんなに撃ち落とした銃と言うものを知りたいんだ!」
「わ、分かった。それなら、すぐ教えられる」
「そ、そうか。すまんが、早速教えてくれ!」
本当に早いスピードで紙と筆記用具を取り机に広げ、書くものを俺に渡す。
「えーと、、取り敢えずは銃の原理だが、銃は火薬で弾を飛ばす。基本的なのはこれだけなんだが……。」
「そうか、分かった!少し待っててくれ!」
そう言うとメモられた紙をひっつかみ部屋の中へ入っていく。
「親父、大変でしょ?」
「そうかな。ただ、強い熱意があることが感じられた」
「そうなんだ。やっぱり同じ転生者だからかな?」
「……。それは違うと思う。」
「そう?」
「あぁ。不思議だが断言できるな。」
「そっか。あたし、実は‥」
その時、シュラの次の言葉を遮るかのように扉が開かれ親父さんが出てきた。
「リョウ!これでどうだ!」
親父さんが見せたのは携帯用の拳銃のような銃だ。それに形も良く初めてとは思えない。
「凄い。これが初めてなんて…。」
「リョウ、それはお前にやるよ。一応日緋色金で創ったから能力は保証するぞ!」
「……。本当にこんなに貰っていいのか?」
「大丈夫だ、大丈夫!試作品だし問題無い!」
「分かった。ありがたく貰うよ」
「おうよ!これで俺もまた創る物が出来た!」
親父さんはガハハと笑うとさっき入った部屋へと戻った。
「親父、中々出てこないからご飯食べちゃおっか?」
「ああ。けど、いいのか?」
「うん!」
「分かった。何か手伝うことはあるか?」
「大丈夫だよ。リョウはお客さんだし待ってて。」
「分かったよ。」
親父さんは部屋の中で銃開発に夢中!
シュラは夕飯の準備を始める。
俺は何をすればいいんだ?
「ごちそうさま。美味しかった!」
「お粗末様♪」
「二人共、仲良すぎないか?」
「悪い!?」
「い、いや、そんなことはないが……、」
親父さんは意味深げな目線を俺に向けると、酒を飲み干す。
「さ、洗い物してくるし二人共、ゆっくりしてて。」
そう言うと机の上の残っている物を台所へ持っていく。
「リョウ、一つだけ率直な質問をしていいか?」
「はい。」
「お前、シュラとどんな関係だ?」
「えーと、、客でしょうか?」
「客、か、、、。シュラはどうやらそれだけじゃないみたいだぞ?」
「えっ、、俺、何か悪いことしましたか?」
「はぁ。忘れてくれ。俺の勘違いだ……。」
親父さんは呆れたような表情を浮かべ開発を再開する為、部屋へと消えた。
あれから数十分。シュラが二つのココアを持って机へと戻ってきた。
「どうぞ。」
「ありがとう、、シュラ、大変じゃないのか?」
「まあね。けど、今みたいにゆっくり出来る時もあるから大丈夫だよ。」
「そうか。俺に出来ることがあれば何でも言ってくれよ?」
「うん。じゃあ一つだけ。」
「?」
シュラは立ち上がると俺の横へ座る。
「もう少しの間だけ、甘えさせて?」
「そんなの、許可なんて必要ないだろ。」
「ありがと、」
シュラはニコッと笑うと、俺にもたれかかる。
「あたし、今幸せだよ。」
一時の静寂が広がる。そしてふとシュラを見ると静かな寝息をたてていた。
「じゃあな、」
俺の呟きとほぼ同時に欠伸をしながら親父さんが出てきた。
「リョウ、シュラは何か言ってたか?」
「いや、何も。それより、一言だけ伝言を頼んでもいいか?」
「リョウ、出ていくのか?」
「あぁ。やることがある。けど、当分はここにいるつもりだ。」
「そうか。その伝言はシュラにだな?」
「あぁ。ありがとう。それだけだ。」
「分かった。」
シュラの美しい橙色の髪を撫でると、ゆっくりと椅子へ降ろす。
「じゃあな、」
俺はそう言うと鍛冶屋を出た。