第109話
「依頼達成ですね。これが報酬の4000Gになります。御確認下さい」
「はい。ちゃんとあります。それでは素材も売ることは出来ますか?」
「はい。鑑定しますので見せて下さい!」
「これらなのですが?」
ポンッと出した量は凡そ130本程の牙。山を成す牙の中には床に刺さる物さえある。
「多いですね。少々お待ちください」
受付隣の呼び鈴を受付嬢が鳴らすと中から出てきた男達が俺の出した素材を荷台に積み込みギルドの中へ入っていく。
「………」
「決算できました。合計金額は40000Gです。お受け取り下さい」
「はい。確かに、」
受け取った物はそのままアイテムポーチへと直すと俺は少し減ったカフェへと腰を下ろす。
「そう言えば昼食ってなかったな…」
あの混み具合じゃ入ろうとは思わなかったし、まして戦闘、解体中に食おうとも思わない。なので俺は昼食がまだだった。
「あの、注文いいですか?」
通りかかった店員を呼び止めると接客的笑みで返され、俺の席まで近付いてくる。
「はい、どうぞ。御注文はなんでしょうか?」
「えーと、これを1つ」
「いろどりサンドウィッチですね。御注文、承りました!」
と言うと厨房へ注文を届けに行った。先に運ばれてきた無料の珈琲。
「くっ、アメリカンか…」
少し薄い。
水割りとかじゃ無さそうだが、取り敢えず味が薄い。アメリカンと言うよりも失敗したか、というような味だ。
「御待たせしました。いろどりサンドウィッチになります」
バスケットごと運ばれてきた中には色とりどりの具材が挟まれたサンドウィッチ。トマトにレタス等のド定番から鳥照り等のガッツリ系、果物等のデザート系までその種類は様々だ。
「いただきます」
手を合わせ合掌。この世界ではこのような文化がない為、3人の時にはまずしないが1人の時は1人の日本人としての文化は貫きたいものだ。
「旨い…」
新鮮の証拠であるシャキッというレタスの音が聞こえる。なんというか、サンドウィッチとして定番だよな!
「次はこっちにしようか」
レタス等でスタートした次といえばそう、肉だ。濃いたっぷりのタレで味付けされた照り焼きは見るからに旨そうだ。
「んっ!」
魔法を使っているのか調理人の腕なのかは知らないがとてつもなく旨い。極限まで柔らかくした肉に香ばしい香り。腕ならば三ツ星リストランも超えるんじゃないか?
《美味しそう。僕も!》
いつの間にか参戦した裏背。いや、逆に参戦したこらこそ俺の食事ペースは上がり10分しない間にバスケットの中は綺麗サッパリ無くなった。
《旨かった~》
《だね。今度からは僕の分も頼んでよ!》
《なあ裏背。1つだけ聞いていいか?》
《な~に~》
《お前が普通に食ってるけど、周囲からは完璧なポルターガイストじゃないのか?》
《………》
《………》
《………》
《取り敢えずお前は外食禁止な!》
《えー! いいじゃないか!?》
《駄目だ。絶対不自然だろ!》
食べてる途中から薄々感付いてはいたが周囲の冒険者からは少し引かれているというか距離を取られ始めた。いや、絶対コイツのせいだろ!
《分かったよ~。なら宿では今日食べた物全部そのスキルで作ってくれよ!》
《………。分かったよ。仕方ないな!》
《なら約束だよ。じゃあね~》
と言うことでまたもやボンッと消えた裏背。残された俺は奴のいた所を珈琲片手に眺めていた。丁度その頃…
「わっ!」
背中に気配を感じてはいたがその正体が掴めないままその誰かは大きな声と共に俺の肩を叩く。もうその声で分かったよ!
「リアスか。依頼は終わったか?」
「んー、全然驚いてくれないっ!」
「驚いて抱き付こうか?」
「っ!」
「冗談だ。それよりも立ってないで早く座れよ」
「うん!」
「すいません。さっきのもう1つ御願いします」
「承りました!」
さっきの店員を偶然見掛けたので呼び止めさっきのと同じものを頼む。意外と旨かった。
「で、依頼はどうなった?」
「えーと討伐依頼を受けたんだ。報酬は合わせて24000G。バイトハウンドの討伐だって!」
「あー、アイツらか。で、何匹仕留めたんだ?」
「依頼内容は10匹だったけど時間があったから30匹程仕留めたんだ。それも全部売っちゃったけど!」
「大丈夫だ。資金集めにはいいからな!」
取り敢えず俺とリアスの報酬合わせて68000G。ここに2人が加わりどこまでいくかは分からないが100000Gを越えられれば幸いかな。
「リョウは何してたの?」
「俺は数日の戦闘指導の依頼を受けてから討伐依頼をこなしてきた。戦闘指導は最終日に締めて渡されるからな!」
「そうなんだ。じゃあ報酬は?」
「計44000Gってところだ。報酬と売却と、適当に仕留めてきたからな!」
「そっか。何匹仕留めたの?」
「60匹程じゃないかな。多すぎて数は覚えてないが…」
「流石規格外!」
「酷くないか?」
「酷くない。依頼を1つこなした上、討伐依頼まで超過した数を倒してくるなんて!」
「けど、やっぱり規格‥」
「あーあー、それよりもリアス、ギルドカード、交換してみないか?」
「ん、どうして?」
「お互いのスキルでも見て見たくないか?」
「見たい!」
ここ数週間で俺のスキルは色々と増えて、強化されている。と言うことはリアスも少なからず強くなっているだろう。まあ、リアスのいう規格外というのを除いた話だが…。
「なら交換だ!」
お互いギルドカードを伏せた状態で机に出すと相手の方へ押し出す。そしてお互いが相手のカードに手を添えた瞬間、自らも相手のカードを手にとった。
「ほう……」
リアスのステータスは以下の通りだ。
◈名前ーーーーーーーーーーーー
リアス
◈種族
・獣人(九尾)
◈加護
・無し
◈称号
・無し
◈固有スキル
・『獣化』
・『夜月妖』
◈一般スキル
・『嗅覚』
・『索敵』
・『鑑定』
・『瞬発力』
・『縮地』
・『槍術』
・『掌打』
・『斬手』
◈耐性
・火炎耐性ー弐
・痛覚耐性ー壱
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まあ相変わらずなのだが一般スキルが2つ増えているな。それを本人は気付いているのか…。
「ねえリョウ、少し気になるスキルがあるんだけど…」
「ん、どれだ?」
リアスの方まで移動して自分のギルドカードを覗くとこれまた見覚えのないスキルが5つ以上は表示されていた。
「この『無月覚醒』なんだけど、私の固有スキルと似てるなって!」
「そう、なのか?」
「私の固有スキル『夜月妖』。夜にだけ無茶苦茶強くなれるスキルだよ!」
「ほう。俺は新月の夜だけだからな。リアスよりは使い勝手が悪い…」
「ふふんっ、新月意外は私の方が強いからね!」
「ふっ、まだまだ負けるかよ!」
得意げに鼻をならすリアスをポンッと小突くと自分の席へと戻る。そういえばリアスって3人の仲で1番古いんだよな~。
「痛っ~~。もう! リョウったら手加減ないんだから!」
「怪我すれば治してやるよ! 怪我すればな!」
「んーー!」
こないだ体がボロボロの時に船上でリリスの腕を治したことがあった。その時に作り出した方法で無駄な部分を一切省いた一点だけを回復させる精霊魔法を使えるようになった。まあ、中々使わないだろうがな。
「おーいリョウいる~?」
また1人の帰ってきたようだ。長い銀髪に赤い瞳。リリスだった。