第10話
『それでは一組目、開戦でーす!』
「■▧■▧■▧■▧■▧■▧炎魔法・炎息吹」
「風魔法・真空の刃」
「バカな、属性は有利な筈だ!」
「ばーか、属性を理解してないでどうする?」
本当に馬鹿だな。魔法を理解していないとは…。
「くっ、、■▧■▧■▧■▧■▧■▧■▧■▧、■▧■▧■▧■▧■▧炎魔法・炎燃斬!」
「水魔法・水壁!」
「くそっ!」
「炎魔法・炎鳥。水魔法・水蛇。風魔法・風狼。土魔法・土蠍。」
「なにっ!」
作り出した疑似生命は毎度恒例炎鳥。そして発御披露目の水蛇と土蠍。そして狼っぽい魔物をベースにした風狼。
「魔法戦だろ?まだまだ行くぞ!」
「っ!!!!」
「炎魔法・炎鳥‥‥‥。」
それぞれ三体ずつ、総勢十五体。相手のガイラ選手の顔は絶望に染まっている。
「気絶させろ!」
「キュイ!」
「シャァッ!」
「ガウッ!」
「…………!」
その時、ガイラ選手がニヤリと顔を歪ませ…。
「魔法は完成だ。お前のその自慢の魔物共、消し炭にしてくれる!炎魔法・炎墜灼塊!」
「馬鹿が!」
その魔法にはこの闘技場を全て燃やし尽くす程の魔力を持っている。しかし逆にそれ程しか無いということだ!
「氷魔法・氷極世界!」
氷が渦巻く。冷気が辺りを包み骨の髄までを冷たく震え上がらせる。
「何をするきだ!」
落ちてくる炎の塊に手を翳す。
「収」
そう呟くのと同時に氷極世界の冷気は炎へ集まり相殺してしまう。以外と炎塊の威力が強く驚いたが…。
「ば、化け物だ…。」
「俺は魔法を学んで長くないが魔法は心が大事なんだと思う。一度折れれば敗けだと思うぞ。」
「……。」
「雷魔法・ショックサンダー」
ビリッ!
またもや一時の光が辺りを包むと、ガイラは失神していた。
『勝者リョウ選手!皆様、盛大な拍手をーー!!』
あと一戦。次はいよいよ決勝だ。これを勝てば、これを勝てば……。
『いよいよ決勝戦!右扉をご覧くださーい!連続優勝者、無敗の星、ジーン!』
大きな拍手が沸き起こり、辺りを熱気が包む。
『左扉をご覧下さーい!今回トーナメント快進撃を続ける期待の新星、リョウ!!!!』
またも大きな拍手が沸き起こり、俺は本当にもう頭の中が煩くて仕方ない。
『それでは超星同士の決勝戦、スタートでーす!』
魔晶発動。今ある全ての魔晶を疑似生命へ変えると俺の体にも炎による身体能力強化をかける。
「相手を倒せ!」
「ごーーー!」
音が重なり聞こえないがそれぞれの意思は感じれれた。
「溶岩魔法・巨大隕石!」
「!」
なんとジーン選手は軽く飛び上がると隕石を拳だけで壊してみせたのだ。
「すげぇ、」
誰が呟いたのか分からないが会場はその別次元の試合に静まり返る。
「くっ、、」
相手はもしかすると熊よりもよっぽど手強い。
最低でもあの範囲内に入れば俺は死ぬ。
「氷魔法・乱飛氷」
俺の手の動きと共に作り出される氷の塊はジーン選手に向かい飛んでいく。しかしそれさえも何かに覆われた拳で潰されてしまう。
「もう、いいか?」
そんな問いの言葉を投げ掛けると共に俺の腹には鋭い拳が叩き込まれた。
「ぐはっ!」
思わず意識が飛びそうになった。
これはヤバい。次喰らえば確実に負ける。
「雷魔法・伝達速度上昇。風魔法・神速。水魔法・明鏡止水。炎魔法・身体能力強化。土魔法・威力吸収」
連続で付与魔法を掛けるが効いているのかさえ怪しく感じる。けど、、負けられない!
「はっ!」
魔力じゃない。炎の本当の爆発を込めた短剣による突き。
「!」
しかしそれも避わされ拳が俺の顔面を襲う。
けど、二回も受ける気なんて毛頭ない!
「何処まで出来るか知らないが現代技術最高位のダメージを!火炎魔法・核爆破」
「っ!」
ジーンは一瞬硬直した。今だ!
「土魔法・金剛結化!」
ジーンの体を輝く鉱石が包み込むと拘束して離さない。当然だ。現代最硬度の金剛石だ。絶対に壊せない!
「くそっ!」
その声と共にジーンの体は爆発の光に巻き込まれる。当然、爆発の余波は闘技場内を壊し辺りを覆う結界にもヒビが入ってしまう。
「ふぅ。油断禁物だよな。」
念には念をと氷魔法による核爆破と雷魔法による核爆破を発動する。辺りはもう一度眩い光が覆い、闘技場内は面影が無い。
「風魔法・突風」
結界内に残る砂煙を吹き飛ばし現れたのは、全身に傷を負い気絶しているジーンと結界に守られた審判だけだ。
「審判?」
『しょ、勝者、リョウ選手ー!皆様、新星の活躍に大きな拍手を!』
この思わぬ出来事に客達は呆然としていたが、次の瞬間、大地を揺るがすような大きな歓声が沸き起こった。
『今年度の優勝者、リョウ選手ーーー!!!』
「リョウ、やったじゃない!」
「ありがとう。けど、流石に簡単にはいかなかったよ」
「当然だよ!あのジーンって選手、前もその前も優勝してるんだよ!」
「それ、本当か!」
「うん。それに勝つなんて…。」
審判に宿泊場所に後で尋ねますと言われ、俺とシュラは一度鍛冶屋まで戻っていた。するとそこには、、
「親父!」
「シュラ、店を出て何処行っとんだ?そんにそいつは!?」
「えーと、、」
どうやらシュラの親父のようだ。そして俺が会う初めての転生者。
「俺はリョウ。長野県に住んでいました。」
「リョウだとぅ!、、、長野県、っ!」
「はい。」
「ちょっとこい、」
俺は親父さんに腕を掴まれ、シュラの見えない場所まで連れていかれた。
「親父さん、どうしたんですか?」
「お前、転生者か?」
「はい。そう言う親父さんもですよね?」
「おう!で、日本はどうなったんだ?」
「はいっ!?」
「だから、今日本はどうなったんだ!」
「どういうことですか?」
「お前、いつの時代から来たんだ?」
「西暦2013年ですけど…、」
「2013年、、、もうそんなに経つのか…。」
「どういうことですか?」
「俺は戦争に行ってたんだ」
「戦争っ!戦時中ってことですか?」
「そうだ。俺は日本軍の特技兵だった。」
「じゃぁ、どうしてここに?」
「戦闘機の点検中に敵襲にあったんだ。大きな爆発だった。俺が運ばれた時には右手と右足が無くなっていたんだ、」
初めて戦争に関する生々しい話を聞いた。
こんなの授業でサラッと習ったくらいしかなかった。
「…。」
「それより、日本はどうなったんだ?」
「負けました。米国に…。」
「そうか…。悪かったな、向こうの話をして…、」
「いえいえ、これで分かったこともあります。」
「どういうことだ?」
「第二次世界大戦は西暦1945年に終わりました。そして親父さんはどう見ても50歳を超えてるとは思いません。と言うことは、最低でも13年の空白があります。」
「た、確かに…」
「そう考えれば親父さんが死んだ時間とここへの転生した時間と過ごした時間が合いません。」
「……。」
「これを纏めると向こうとこちらの時間軸は同じでは無いということが分かります。だから完全に離別した世界であると言うことが分かります。」
「お前、、技術者じゃないよな?」
「はい。ただの中学生です!」
「はっ!中学生!」
「はい。」
「お前の時代の中学生ってそんなに賢い奴ばかりなのか!?」
「はい!」
「うわぁ。もう俺負けるじゃねえか!」
親父さんがションボリと肩を落とした所へ大きな声が飛ぶ。
「親父ー!まだなのー!」
「リョウ、すまん。あの馬鹿娘が呼んでるんだ。戻る。」
「はい。」
親父さんもやはり娘には弱いようだ。
そう言って急いで戻る。