第1話
誤字脱字の割合が多いです。
読みにくいかもしれません、すみません。
また、テスト期間等で連載出来ない時もあるので、ご了承下さい。
ピピ、ピピ、ピー
子鳥の鳴き声が辺りに響いた。チョロチョロと流れる水の音が妙に心地いい。冷えきった森林の風は俺の体に凍みていった。
ガラガラ、
少し古い引き戸の音が聞こえ、俺は少し体を動かした。
「遼ちゃん、昼間っから何ボウっとしてんだい。少しは遊んできたらどうだい?」
祖母の声だ。つい最近親父が事故で死んで以来、俺はここで世話になっている。まあ、親父もここに住んでいたから元々ここに住んでいたのだが…
「ばあちゃん、帰ってきて一言目がそれっておかしいんじゃない!?」
「悪いねぇ。遼ちゃんが中々遊びに行かないもんだから心配になるんだよ。」
祖母は遠い所を見ると、台所へと向かう。もうさっきみたいな落ち着いた音は聞こえない。耳に響くのは「心配」の一言だった。
俺は今年で中学生二年目の14歳だ。既に父親は他界し母親は蒸発。今は父方の祖母に引き取ってもらっているという状況になる。
「遼ちゃん、明日は学校だろ?準備しなくていいのかい?」
今日は日曜日。友達の数も少ない俺の休日は家で昼寝をするくらいだ。しかしそんな中、訪ねてくる者がいる。それは残念なことに人じゃなかった。
「グオォォォォッ!」
「遼ちゃん、頼めるかい?」
「分かったよ。ばあちゃんは中で待ってて。」
「あいよ、」
家への来訪者は人でも犬でもなく熊。山奥と言っても本当に筋金入りの山奥にある家は自然との隔たりが全くと言っていいほど無い。だからちょくちょくこんな野性動物が襲ってくる。
こんなの普通はありえない。そんなことは十分承知だ。しかし、昔から見ていれば流石に慣れる。
「グオォォォォッ!」
「熊、か。今月で三匹は来たよな。」
俺は腰元の鞘から携帯用のナイフ二本を抜くと、ラフに身構える。
「グオォッ!」
やはり野性動物。その行動は単純な動きで絶対に仕留められると自信を持った一撃が振り下ろされる。
「俺の睡眠を邪魔するな、」
ナイフをがら空きの眼球へ捩じ込む。そして急いで離れると、悲鳴を上げる熊へともう一本のナイフをもう一方の眼球へ捩じ込む。
「グオオオォォォォォォォォォッ!!!!」
悲鳴を上げる間にもう1本ずつナイフを取り出すと、暴れる熊の後ろへ周りナイフを振りかざす。しかし相手も野性動物。勘だけは鋭く、俺の攻撃を右手で受け止めた。しかし既にもう片方のナイフは熊の頸動脈を切り裂いていた。
プシューーゥ、
血潮が俺の服を汚し真っ白なTシャツは赤いTシャツになってしまった。
「ばあちゃん、これ頼んでいい?」
「ありがとよ。いつもいつも嫌なことをやらせてしまって、、、こんな事、御安いものさね。」
「いいよいいよ。俺だってここに住んでるんだ。これくらいならどうってことないよ。」
熊の眼球、右手、からナイフを回収すると水で洗い流した。こんな現代人には経験の無いようなことをしている俺だが、これも仕方の無いことだった。
「いってきます。」
「あいよ。いってらっしゃい!」
命のやり取りをした次の日だというのに俺の心情は全く変化しない。命のやり取りなんてものも所詮慣れだと言うことだ。
ピピ、ピッ!
朝から響く小鳥の鳴き声は俺の心を静める。
この獣道からでもいつ襲い掛かられてもおかしくない。こんな劣悪な場所で育てば昨日のようなことでも動じなくなるものだ。
一時間程後、森林を抜けバス停についた。
「時間は、、、あと十二分、か、、、」
ほとんど無い金銭で買った腕時計なのだが、最近少し狂ってきた気がする。
森林とは違う落ち着いた感じだ。田畑が見渡す限り広がり、所々に家が立つ。右を向けばこの周辺で一つしかない神社があり、ボロボロの鳥居が静かに佇んでいた。
「よぉ、遼。久しぶりだな、」
「あぁ。まあ、金曜日には会ってるがな。」
「ははは。そうだそうだ。けど、遼は中々降りてこないからなぁ、、休みの日は暇だぜ!」
「そう言うなよ。休日くらいはゆっくりしたいものだろ?」
「ゆっくりって何してる?」
「……。」
「どうせゴロゴロとお祖母さんと雑談でもしてるんだろ。俺なんて親と仲悪いから家になんていられないんだぜ!」
それからはこの男、竜次の愚痴を永遠と聞かされた。そしてバスのエンジン音が聞こえバス停へバスが止まった。
「ん、来たか。そう言えば、桜咲は?」
「んー、、アイツならどうせ寝坊か何かだろう?」
俺が少し辺りを見回すと、急いで走ってくる人影を見付けた。
「運転手さん、少し待ってくれますか?」
「大丈夫ですよ。」
運転手さんは優しく微笑むと、ハンドルから手を離した。
「はぁ、はぁ、、遼くん、待っててくれたの?」
急いで走ってきたのか、肩で息をしている。
「まあな。これ以上待たせるのも悪い。乗ろう。」
俺は二人を急かせると、運転手さんへ「ありがとうございました」と伝える。すると笑顔で返されただけで、バスは発進した。
「遼くん、昨日何かあった?」
「っ?無いけどな…。急にどうしたんだ?」
「いつもと雰囲気が違うなって思って…。」
「っ。」
ヤバい。この二人には俺の住んでいる場所や家族のことは伝えているが、逆にそれくらいしか伝えていない!
「桜咲、そんなよく分かんねえ話より、あの話の続きを頼めねえか?」
「輝くんのこと?」
「おう。アイツって桜咲にゾッコンだっただろ?」
「まあね。けど、私にはちゃんと好きな人がいるし、丁寧にお断りさせてもらったよ♪」
「そっかぁ。輝秀もショックだろうな…」
「そうだけど、私だって好きでもない人となんて付き合いたくないし、それに好きな人だってるしね♪」
「そ、そうか、、」
その「好きな人」と言う言葉に竜次は少し身構えながらもこんな会話は学校手前まで続いた。
「はぁ。ここから歩くのが苦痛なんだよなー。」
「あぁ。俺もそう思う。この中途半端な距離が一番嫌だな。」
「二人共、そんなこと言ってないで行くよ。そんなの言ってても仕方ないんだから!」
俺達はバスで来たが、そんなバスでくる距離も合わせてこの周辺には俺達の学校以外無い。この前まではもう1つあったのだが、老朽化で取り壊された。
「そえいえば、今日は雨って言ってなかったか?」
「そう言えば、、今日は一日中雨だって、、、」
俺達が空を見上げると、澄んだ青色の空が遥か遠くまで広がっていた。そしてその中に小さな小さな粒が見えた。
「竜次、あれ、なんだと思う?」
「さぁ。けど、落ちてきているように見えるんだけど、、」
「私もそう思う。それに目標は私達の方向だよ!」
そう。それは加速してもう目で追えないスピードまで達していたが、それが俺達の方へ落ちてきて俺達を貫いたことは分かった。
「ぐはっ!」
その粒は俺の体を的確に貫き腸管内にダメージを与えたのだろう、俺が吐き出したのは血だった。
「二人、とも、、」
二人は既に痛みで気を失っていた。
まあ、そんな呑気な話をしてられるわけでもない。何故なら俺の吐血した量は異常な程に多く、損傷部位の悪さを伺わせた。
「これで、死ぬ、のか。」
あと数十分後には誰かがこのド田舎から救急車
を呼ぶだろう。しかしその頃には俺達三人とも息絶えているだろう。
なんだろうな。今まで襲ってきたとはいえ色々な獣を殺した。それが嫌だとはもう思わないが、全然怖くないんだ。もうすぐ死ぬっていうのに…