デスゲームオンライン始めるよ!
新発売のVRMMOゲーム、デスゲームオンライン。
このゲームは発売前から話題になっていた。
ゲーム内での通貨を日本円に換金することは法的に問題があるため、斜め上の抜け穴として始めから全て日本円で取引する事。
その為、上手く財宝を見つければリアルに大金が手に入ること。
非常にリアルな上、このゲームを経験すると元の生活には戻ってこられない可能性があることや、死亡する事すらあるという触れ込みも含めて、炎上していた。
メーカーが小さな会社をいつくか吸収合併しているとはいえ、ゲーム開発経験が無いのもマイナスだ。ノウハウが無い。元が引越会社だったらしく、手早い梱包と作業の丁寧さでは評判が高いが、そんなのはゲームに関係ない。
それに、デバッガーや社員の中の人によるリークでは、死亡するようなプログラムはそもそも作れないし、デバッガーにも死者はいない事などが漏れている。
よって、ただの趣味の悪い話題作りだろうと言われている。炎上商法乙。
だが、それでも。
なんとなく、期待するじゃ無いか。
ネットでメーカーの専用ページから購入し、独り暮らし特有の散らかった部屋の中でワクワクと箱を空けているのは、命のリスクを背負った冒険と、その中で「自分が主人公になれる」事への期待。そしてリアルマネーへの欲望。
ゲームを始める前に必要な「死亡承諾書」も炎上の理由の一つだが、他にも紙の書類が多い。
なになに?「ゲーム内では部位欠損が実装されています。万一の場合に備えて臓器提供の意志を…」うわー、グロいな! 大好きだ!
必須マークの付いた書類はまだあるぞ。「ゲーム内で意識を失ったときの救助に備えて以下の委任状に……」
なんか薬瓶まで入ってる!「ゲームへの没入感を高める暗示効果、およびロールプレイの一環として添付の薬品を必ず飲んで下さい ※本薬品の服用による直接の死亡事故などは起きておりませんのでご安心下さい」 薬品の主な成分を見てみると、含有量上位からビタミンC、ブドウ糖、とか続いている。驚かせやがって。
これらの無駄に手の込んだ設定を終え、胸のドキドキを押さえながらヘルメット上のディスプレイを被り、酸素マスクを咥えた。
画面に浮かぶ「全ての書類に判を押していますか?」の質問にYESと応えると、リラックスさせるためか穏やかな音楽が流れ始める。ぐるぐる回る接続中の文字を見ながら、だんだんウトウトしてくる。
プレイヤーがすっかり眠り込んだ頃、黒服の男が室内に無断で入ってくると書類を確認し、後続の作業着を着た男達に合図をした。
寝袋のような物を持った男達は、獲物を手早く袋に詰めると安全運転で運び去った。