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不思議な少女の実力


 四条院へは定期的に連絡を入れている。その定時連絡は黒龍が持ってきた。

「あの子が?……高校生はまずいんじゃね?」

「適性はある。というより、わざと解いて魔術屋にして見せたんだが、それでも『ファンシーショップ』と言いきった」

「おいおい。ありまくりってことろか」

「あぁ。ただあの子の素性が分からない。名前は祖父江 菜月。どうも上に歳の離れた兄がいる。あと高校は制服や生徒手帳から聖マリア学院。この近くの学校だ」

「それだけ?お前さんとあろうものが」

「だから分からない。いっそ紫苑に聞こうかと思っている」

「あぁ……それで俺かい」

 その言葉に頷く。そして書類を渡してきた。

「……あの時期産まれた者の中に該当者がいない?」

 思わず結果を読み上げてしまった。

「は?」

 黒龍も驚いたように声をあげた。たった一枚の紙切れに絶句するしかない。

「後日、紫苑から直接……」

「マスタ、紫苑が来たよぉ。菜月ちゃんお買い物行っていないから魔青が案内しちゃった」

 運よく紫苑が来た。


 そして話は報告になっていく。

「基本的に祖父江の血を引いた者は、あの地でしか出産しない。してしまったらヒトならざるモノが集まってきてしまい、母子共に亡くなるはずだ。ところが住職も奥方も出産に立ち会っていないし、記録もない。つまり、あそこで産まれていない」

「例外はあるのか?」

「例外は俺が知る限りで一人。ちい姫だ」

 またその名前か。

「その代償として母親がなくなっている。俺の叔母にあたる人らしい。まぁ、出産が出産だっただけに骨の一つも残っていないそうだ。ヒトならざるモノが全てたいらげたらしい。その間に子供についた血を特殊な方法で洗い流したんじゃないかと、住職は言っていた。ただ、住職もちい姫を見たことがない」

「本名は?」

「ところがどっこい、何一つ分からないし、出生の日付がちい姫とこの祖父江 菜月では違っている」

「出生の日付くらい変えれるだろう?」

「あぁ。だが、本人に会っていないのなら答えようがない。紋章は?」

 四条院の者は産まれたときにそれぞれが紋章を持つ。

「それは私も確認した。なかったね。なんだかお守り代わりの防犯ホイッスルのみだ」

「いっそ、華弦巻き込め。俺が知る限りであいつの上をいく情報力の持ち主は杏里さんだが、今はいない」

「……あの面子が出張ってくるのは確実かな?」

「あの子を呼ばないと、拗ねるか?」

 こうなったら、実戦で菜月の様子を見ていくしかない。


 一週間後、あの面子の中の二人が来た。

「さすがにばれるとまずい。お前たちはあの名前を使いなさい」

 髪型はスポーツ刈りだが、性格は昔からその辺にいるいたずら小僧をそのまま大きくしたら、こんな風になるんだろうなと思わせる陽光と、猟犬を人間にしたような雰囲気をかもし出す緋炎に向かい、話す。

「聖さん、りょーかいっす」

 陽光がわざとらしく敬礼をして答えてきた。だが、緋炎は面白くなさそうだった。

「緋炎?」

「いや、しばらく来るなとかいいながら、こうなるかなと」

「予想外だよ。あまりにも情報が少なすぎる」

 そして時間になり菜月が来た。

「すみません!少し遅くなりました」

「いや、構わない。さて、紹介しよう。緋炎と陽光だ」

 きょとんとして菜月が見つめてきた。

「どうかしたのか?」

「いえ、この間の話だと店番はあたしと魔青だと思ってたので」

「あぁ、この二人は店番……陽光はするときはあるがね、緋炎はしない。逆に魔術屋で緋炎は動くし、情報でも二人は動く」

すでに魔術屋というスタイルも菜月には言った。そして基礎だけではあるが菜月も魔術をかじっていると。

「それからたまにだが、緋炎と動きを共にしてもらう事もある」

「は?」

「君は魔術を習ったそうだね。だとしたら多少役に立ってもらうよ。もちろんその分、時給に上乗せする」

「分かりました」

 あっさりと条件すらのんでくる。

「へぇ、二人とも大学生なんですか?」

「そ。今年卒業なんだけどね」

 陽光と菜月が楽しそうに話している。

「就職活動しなきゃいけないんだけどね、俺も緋炎ものんびり屋でさ。こうやって聖さんの手伝いしてるんだ」

「楽しかったら別にいいんじゃないんですか?」

 不思議そうに菜月が言う。

「楽しいよ。だからついね」

 それを面白くなさそうに緋炎が見ていた。

「それで、お前たちとしてはあの子をどう見る?」

 仕事が終わり、菜月が帰ったあと二人に尋ねる。

「いやぁ、俺に聞かれても。ちょっとピントのずれた普通の女子高生としか思えませんが」

 これは陽光である。緋炎は黙りこくっていた。

「緋炎?」

「いや、資質はあると言うのが師父の言い分ならそうだろう。その後の話ならそのあとでいいと思うが」

 それが緋炎の答えだ。

「お前ってさ、どうしてそうなんだって言いたくなるよ」

「適材適所はどうも出来ない。それくらいなら信じたやつの腕を信じきるしかないだろ?」

「そりゃそーだ」

 呆れ顔で陽光が呟いてた。

「お前たちは本当にいいコンビだよ。それで何故あそこまで呪術をあわせられない?」

 合わせられたらここまで苦労せずにすむのに。

「さぁ?資質的に無理としか」

「いい答えだ。さて、明日菜月が来たら、B地点に行ってもらう。これが呪符だ。陽光はこちらでサポートを」

 サポート向きの陽光の能力、守りには向かない。そして緋炎はサポートも守りにも向かなすぎる能力である。

「あぁ」

 不機嫌なまま、緋炎が答えていた。

「さて、今日は解散」

 その言葉を受けて二人は帰っていく。


「それで君はどれ位魔術が使える?」

 翌日改めて尋ねる。

「基礎だけです。それくらいしか習ってませんから」

 当たり前のように答えてきた。そしてその言葉を信じて送り出した。

「聖さん、いいんっすか?」

「いいもなにも、分からない状態で動かざるを得ない。それだけだよ」



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