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平成剣士  作者: たらふく
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強者

第六章




あれから新さんは、もう土方さんラブっていうか、剣道やる気満々なんだけど、俺はちょっとなぁ。

まあ、見学には行くつもりだけど、まだそこまでの気にはなれなかった。

それより今夜は祭りの日だ。もちろん、新さんも誘った。


土方さんには、安物だけど浴衣を用意した。

黒地で格子模様が入ったものだ。帯は白。

これがまた、なんと着こなしバッチリっていうか、浴衣のモデルみたいだった。


「歳さん、似合ってますよ」

「そうか。お前はいつもの服か」

「はい、これで十分ですから」


俺と土方さんは、新さんとの待ち合わせ場所へ向かった。


「やはり洋装よりしっくり来る」

「そうですね。モデル・・・いや・・浴衣を着る人の見本っていうか、それくらい似合ってます」


ほら、みんなが見てる。中には立ち止まってる人もいるぞ。。

俺には関係ないけど、なんか誇らしい気分だ。


「土方さん、太陽!」

「あ、新さん、外で「土方さん」は、マズいですよ・・・」

「あ、そっか」

「よう、新五郎」

「歳さん!すごく似合ってますね!」

「そうか」


新さん、嬉しそうだな。

だってほんとにかっこいいんだもんな。

今の日本人は猫背が多いけど、昔の人は、みんなこんな感じだったんだろうな。

背筋が伸びてると伸びてないとでは、こうも違うもんなんだな。背も高く見えるし。


露店がぎっしり並んでいるのを見て、土方さんは微笑んでいた。


「賑やかだな」

「はい。なんか食べますか」

「な、太陽。リンゴ飴はどうだ?」

「ああ、いいかも」

「じゃ、俺、買ってくるよ」


そう言って、新さんはリンゴ飴を買いに行った。


「リンゴ飴?」

「はい、リンゴを飴でコーティング、いや・・・包んだお菓子です」

「ほう」


「はい、歳さん、どうぞ」


新さんは、土方さんにリンゴ飴を渡した。


「これ、どうやって食うんだ?」

「そのまま、かじってください。ほら、こんな風に」


俺が食べると、土方さんもそれに倣った。


「うわっ・・甘いな」

「飴は甘いんですが、中のリンゴと一緒に食べるとちょうどいい味になりますよ」

「うん?そうか・・」


土方さんは、思いっ切りリンゴをかじった。


「おお、確かにな」

「美味しいですか?」

「ああ。でもやっぱり甘いな」


そう言って土方さんは笑った。


「これを総司に食わせてやったら喜ぶだろうな・・・」

「そうなんですか」

「確か、沖田さんは甘いものが好きでしたよね」

「ああ。よく知ってるな。新五郎」


新さん、ほんとによく知ってるな。

沖田さんの好物まで・・・


「あの・・・写真、撮ってもらえませんか・・・」


一人の若い女性が、土方さんに声をかけてきた。


「あっ、いや、それは困ります」


俺はとっさにそう言った。


「え・・そうなんですか。。」

「はい、ごめんなさい」

「この人、俳優さんですか・・?」

「いえ、違います」

「そ・・・そうですか・・・」


残念そうな顔をして、その女性は去って行った。


「写真ってなんだ」

「えっと・・小さな箱の中にフィルム・・いや・・ビニールのような・・・いや、難しい・・・新さん、バトンタッチ」

「えっ・・・つまり・・あっ、テレビ観ましたよね。あれの静止画版っていうか・・違うか。。とにかく小さな箱の中で画像が撮れる仕組みがあって・・」

「あっ、俺のスマホで写メ撮りましょう。百聞は一見にしかずです」


そして俺は、新さんを撮った。


「ほら、これが写真というものです」

「ほう。なるほど」

「これでさっきの人は、歳さんの写真を撮りたかったんです」

「なんでだ」

「歳さんが、かっこいいからですよ。それで二人で並んで撮りたかったんでしょうね」

「へぇ」

「歳さん、結構、モテたそうですね」

「うん?さあな」


そうなんだ。新さん、ほんとによく知ってるなあ。

土方さんは、照れくさそうに誤魔化してたから、ほんとなんだな。

のちに、土方さんも、写真を撮ってるんだけとな。一枚だけど。


「あっ、あそこで剣術の披露会をやってるぞ!」


新さんがそう言って、指をさした。

ほんとだ、あれ日本刀じゃないのか。


「歳さん、行ってみましょう」


俺は土方さんの手を引っ張って、その場へ向かった。

白州の上で刀を持った男性が「型」を披露していた。


「歳さん・・あれって本物の刀ですか」

「いや、あれは模造刀のように見える」

「そうですか」

「太陽。だって、この人出だぜ。真剣だと危ないだろ」


新さんがそう言った。


「なるほど」


「あの、ちょっとすまないが、私と一緒に来てくれないか」


突然俺たちの横に、一人の男が現れ、土方さんにそう言った。


「誰だ、貴様」

「いいから、来てくれればわかる」


そう言って、男は無理やり土方さんを引っ張って行った。


「待て!どこへ連れて行くんだ!」


俺と新さんは、急いで後を追いかけた。

なんだ、あいつ。どこへ連れて行くつもりだ。


すると男は、さっきまで剣術を披露していた男に、なにやら話しかけていた。

駆け寄って来たスタッフらしき人が、他の人に声をかけ、やがて一人の男性が木刀を二本持って来た。

なんなんだ・・・なにをするつもりなんだ。。

新さんも、心配そうな顔をしている。


ほどなくして、その男と土方さんは木刀を手にして向かい合った。

えっ、試合が始まるのか。


「新さん、これ、どういうことなんでしょうか」

「俺にもわからないよ。でも試合が始まるってことは確かだな」

「試合って・・・いきなり・・」


それにしても、なんで土方さんを選んだんだ。あの男は。

二人は中段に構えて、間合いを取っていた。

土方さんもすごいけど、あの男も、なんか様になってるぞ。


そして二人は打ち合いになり、ほぼ互角だった。

できる・・・あの男、かなりできる・・・

土方さん、頑張って!負けるな!

そして一瞬の隙を突き、土方さんは男の木刀を宙に舞わせた。

やった!勝ったぞ!さすが土方さんだ!


観衆から自然と拍手が沸き起こった。

二人は礼をして、白州から下りた。


「やったね!新さん!」

「うん、よかった!」

「それにしても、歳さん、すごいよね」

「ああ。ほんとにすごい。まさに「本物」を見せてもらったな」


土方さんは俺たちのところへ戻って来た。


「歳さん!」


俺と新さんはシンクロして、そう言った。


「危なかったな」

「いえ、完勝ですよ!」

「そうそう、すごかったー!」


すると男がこっちへ来た。


「突然の無礼をお許しください。でもこれではっきりとわかりました」

「なにがわかったんだ」

「あなた・・土方さんですね・・・」

「えっ・・・」


「ち・・違います!この人は俺の親戚です」

「いや、私にはわかる。この人の剣術は天然理心流だ」


え・・・そうなんだ。よくわからないけど、見抜かれてしまったのか。


「貴様、どこのどいつだ」

「私は新選組に入隊を希望していた者です」

「なにっ!どういうことだ」

「あの日、池田屋の前で騒動を見ていました」


な・・・なんだって!

どういうことなんだ・・・


「土方さん、ここでは他の者に聞かれる恐れがあります。あちらの物陰へ参りましょう」


男がそう言って、土方さんは着いて行った。

もちろん俺たちも着いて行くことにした。


「君たちは来なくてよい」

「いえ、そんなわけにはいきません」

「こいつらは、いいんだ。俺の素性を既に知っている」

「そうですか。では参りましょう」


そして俺たちは、ひとけのない物陰へ行った。


「それでた。貴様、新選組に入りたいと言ったな」

「はい。仰せの通りで」

「じゃあ、あれか。貴様も時空を超えて現代へ来たったわけか」

「はい」


えええ・・・この人も幕末で生きてた人なんだ。。


「私も土方さんと同様この時代に迷い込み、ある者に助けられたのです」

「そうか」

「私は商家の出ですが、新選組の噂を聞き、生涯この身を新選組に捧げようと決心し、上洛したのです」

「そうか。それにしちゃあ、かなりの腕前だったな」

「はい、私は子供の頃から武士に憧れて道場へ通っていたものですから」

「ところで、お前の名前は」

「伊佐美格之助と申します」


第六章END

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