エピローグ
エピローグ
俺が幕末から現代に帰って来て、一ヶ月が過ぎたある日のこと。
いつもように、道場で稽古していたら、一人の中年女性が訪ねて来た。
「お稽古中、申し訳ありません。こちらに星川太陽さんは、いらっしゃいますか」
「はい、俺が星川ですが、どちら様でしょうか」
その女性は驚いた様子で俺を見ていた。
誰だ・・・この人。俺になんの用だ。
「あ・・ほんとにいらしたんですね・・・」
「え・・・?」
「あ、申し訳ありません。私、鈴木多恵と申します」
「はい・・」
「今日は、星川さんにお渡ししたいものがあって、まいりました」
「渡したいもの・・・?」
「はい、こちらです」
そう言って鈴木さんは、風呂敷包みを俺に差し出した。
「これは、なんですか?」
「星川さんの持ち物だと思われます。どうぞ開けて確認なさってください」
「俺の持ち物・・・?」
俺は包みを開けてみた。
そこには、色褪せてボロボロになった鞄が出てきた。
え・・・なんだこの鞄。俺には見覚えが無いぞ。
「これって・・・」
「星川さんの鞄ですか?」
「えっと・・ちょっと心当たりがないんですが・・」
「そうですか・・やはり私どもの勘違いだったのでしょうか・・」
「これをどうして俺に?」
「あの・・伊佐美格之助という人物は、ご存知ありませんか?」
「えっ・・・」
伊佐美さん??
「知ってるっていうか・・新選組の隊士だった方ですよね」
「はい。伊佐美は私の父方の先祖にあたる、茂一郎の弟なんです」
「ええっっ!そうなんですか!」
「聞き伝えられるところによりますと、この鞄を平成29年になったら届けてほしいとのことで、代々お預かりしていたのです」
なにっっ!するとこの鞄は、俺が幕末に置き忘れたものなのか!!
「中を確認してもいいですか?」
「もちろんです。どうぞ」
俺は急いで中を確かめてみた。
ああっっ!これは俺の財布・・・携帯も・・・
嘘だろ・・チラシも残ってる・・・
確かに色褪せてボロボロだけど、150年も経ってるのに・・・形はそのままだ・・
きっと、大切に保管されていたんだろう。。なんてありがたいことなんだ・・・
「これ・・確かに俺の鞄です。中身も俺の持ち物です・・」
「そうですか!ああ・・よかった・・」
「大切に保管してくださってたのですね・・」
「はい・・それはもう「絶対に紛失してはならない」と、代々厳しく言い伝えられてまして。でも本当に星川さんがいらっしゃるとは・・・私は半信半疑でしたので、大変驚きました」
「そうだったんですね・・」
「なぜ、この鞄があの時代ににあったのか、それがなぜ受け継がれてきたのかは、私は存じませんが、とにかくお届けすることができてほっとしました」
「本当に・・・なんとお礼を申し上げたらよいのかわかりません」
「いいえ。とんでもございません。これでやっと役目を果たすことができました。帰りましたら伊佐美に報告いたします」
「そうですか・・150年もの間、ご苦労をおかけしました。皆様にもよろしくお伝えください」
「こちらこそ。では私はこれで失礼します」
そう言って鈴木さんは帰って行った。
そうか・・・伊佐美さんは俺がいなくなった後、お兄さんにこれを届けてくれたんだ。。
伊佐美さん・・・なんて人だ・・・ほんとに。。
最後の最後まで俺のことを・・・
あれ・・・なんだこれは。。
鞄の底に小さな包みがあった。
その包みを開けると、巻紙が出て来た。
なんだ・・・これ・・・
--------星川殿。私を見舞ってくれた後、屯所から君が消えたと知り、私は方々を探しましたが君はどこにもいませんでした。家には鞄が残されており、きっと君は元の時代へ戻れたのだと直感した次第です。私が生きる時代と君が生きる時代を、まるで何かに引き寄せらるように私たちは出遭いました。その後、君は必要に迫られたとは言え、剣術を覚えました。そのことを決して無駄にせず、君が生きる時代で「平成の剣士」として、新五郎くんや京太郎くんと共に道場を繁栄させてください。副長もそれを願っています。伊佐美格之助拝
伊佐美さんの手紙だ・・・
うん。伊佐美さん、土方さん。俺、頑張るよ。
これからも真っすぐに、平成剣士として前に進むよ。
俺は一生、あなたたちのことは忘れない。
過去と現代と未来は、一本の長い糸で永遠に繋がっているのだから。
END
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最後までお読みくださり、ありがとうございました。




