表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平成剣士  作者: たらふく
26/29

ど素人の格闘

第二十六章



俺は次の日から、家の中で刀を持ち、素振りの稽古をすることにした。

やっぱり自分の身は自分で守らなくちゃな。

元の時代に帰るには、絶対に生きていないと。


「沖田です、開けてください」

「あ、はい」


俺はつっかい棒を外し、戸を開けた。


「わっ・・」


刀を持っていた俺に、沖田さんが驚いた。


「あっ・・すみません」


俺はすぐに刀を後ろに隠した。


「いいですよ。稽古ですか」

「はい・・」

「これ、差し入れです」


沖田さんは団子を持ってきてくれた。


「あ・・わざわざすみません」

「見回りの途中ですから、いいんですよ」

「そうですか・・」


あっ、そうだ!


「ちょっと待っててください」


俺は鞄のの中からチョコを出した。


「これ、食べてください」

「これはなんですか?」

「未来のお菓子で「チョコレート」っていいます」

「へぇー」

「沖田さん、甘い物好きなんでしょ?」

「うん。これ、美味しいんですか?」

「はい、美味しいですよ」

「そうですか、じゃいただきます」


沖田さんはパクリと一口で食べた。


「どうですか」

「うん、美味しいですね!」

「そうですか、よかった」

「いいな~未来かぁ・・」

「・・・」

「行って帰って来られる道があればいいですね、あはは」

「はい・・あ、このお菓子のことは内緒で・・・」

「わかってますよ、では」


そう言って沖田さんは見回りに行った。

団子か。どれどれ・・・

おっ!美味しい!へぇーこんな味なんだ~


そうだ、食器を洗いに行こう。

俺は井戸へ行った。


お・・・誰もいないぞ。ラッキー。

俺は水を汲んで、小さな桶で茶碗や湯呑を洗った。

洗いながら、水道ってありがたいものだと、つくづく思った。

蛇口を捻るだけで水が出てくるって、こんなにありがたいことなんだな・・・

水だけじゃなくて、お湯まで出るんだもんな。。


土方さん、俺んち来た時、最初は驚いたんだろうな。

なんだこれっ!ってきっと驚愕したと思う。


「あら~~昨日のお兄さんやないの~~」


わっ・・・来たっ!昨日の主婦だ・・やべーー


「あ、どうも・・」

「あんたはんも、新選組のお人なん?」

「いえ、俺は違います」

「そうなんどすかぁ~」

「はい・・」

「新選組って今でこそ、えらい出世しはったけど、ちょっと前までは壬生浪いうて、蔑まれとったんよ」

「え・・・」

「もう、それはそれは恐ろしゅうて」

「そうなんですか・・」

「まあ、私は最初からかっこええ思とりましたけどなぁ~」

「では・・・俺はこれで・・・」


俺は逃げるようにして、その場を去った。

はぁ~~ヤダヤダ。。

にしても、壬生浪ってなんだ?

蔑まれてたって・・・どういうことだ?

まあ、確かに怖いことは怖い・・・それはわかる。。


俺はまた素振りをした。

でも素振りってだけなのもなぁ。。

ちょっと、「コツ」くらいは習った方がいいのかな。

俺は試しに壬生寺へ行ってみた。


あっ、稽古やってるぞ。

でも知らない人ばかりだ・・声をかけたら怒られるかな。。

俺は恐る恐る近づいてみた。


なんだ、あの背の高い人は。。

すげーー180センチくらいあるんじゃないのか。

この時代にも背の高い人っているんだなあ。


「お前、そこで何をしているのだ」


その男が俺に気がつき、声をかけて来た。


「あ・・すみません。ちょっと見学っていうか・・」

「確か・・お前は、先日屯所に居た奴だな」

「はい・・」

「誰かと知り合いなのか」

「えっと・・・沖田さんの友人なんです・・」

「そうか、総司の」


この人、剣術の先生っぽいな・・・

思い切って頼んでみようかな。


「あの・・剣術を教えてらっしゃるんですか」

「そうだが」

「俺も教えてもらえませんか」

「経験はあるのか」

「ないんです。素振りはやったことがありますが・・」

「まあ、いいだろう、そこへ並べ」

「ありがとうございます!」


よかった!


「お前、名はなんというのだ」

「星川太陽といいます」

「そうか。俺は斎藤一だ」


斎藤一・・・そうなんだ。

斎藤さんっていうんだ、この人。


「よろしくお願いします!」

「お前、竹刀か木刀は持ってないのか」

「あ・・・はい」


そこで斎藤さんは、一人の隊士に声をかけ、竹刀を持ってくるように言ってくれた。


「ちょっと待ってろ」

「はい」


ほどなくして、隊士の人が竹刀を俺に渡してくれた。

俺はまず、素振りから始めた。


「もっと真っすぐ上から振り下ろせ」

「はい!」


みんなの「やあー!やあー!」という声が境内に響いていた。

それから斎藤さんは、一人の隊士と打ち合った。

えっ・・・斎藤さんって左利きなんだ・・・へぇー


それにしても、すごいな。あの剣さばき、並みじゃないぞ。

土方さんも、伊佐美さんも、新さんもすごかったけど、この斎藤さん、すごいぞ。


「太陽くん、稽古ですか」

「あっ、伊佐美さん!はい」

「斎藤さんに教えを乞うとは、太陽くんも目が肥えましたね」


え・・・

やっぱりそうなんだ。すごい人なんだ。


「伊佐美、来い」


斎藤さんがそう声をかけ、伊佐美さんは向かい合った。


「お願いします」


すると信じられない光景が、目の前で行われた。

あの伊佐美さんが・・・まるで子供扱いだ・・・

マジか・・・あの伊佐美さんだぞっ!


「伊佐美!もう降参か」

「いえ!まだまだ!」


やがて稽古が終わり、俺は帰る前に斎藤さんにお礼を言った。


「斎藤さん、ありがとうございました」

「また来いよ」

「はい!」


「伊佐美さん、斎藤さんって、すごく強いんですね」

「はい、あの方は三番隊の組長です」

「そうなんですか・・」


やっぱり組長ってのは、すごいんだな。

斎藤さんが三番隊ってことは、一番隊の沖田さんって、更にそれよりすごいってことか。

どんだけ達人揃いなんだ。


夜になり、俺は刀を横に置いてご飯を食べた。

前は、刀に触れることさえ怖かったけど、今では刀が無いと不安だ。


「た・・・助けてくれーー!」


突然、外で助けを呼ぶ声がした。

なっ・・・なんだ!

俺は戸を開けて、恐る恐る覗いてみた。

あっ!あれは、八之助さんじゃないか!

俺は刀を持って外へ出た。


すると侍らしき男二人が、八之助さんに刀を突きつけていた。

うわあ・・・マジか・・どうしよう・・・

八之助さんは縮こまって怯えきっている・・・


「あっ・・あのっ!」


俺は思わず声をかけてしまった・・・


「なんだ、貴様」

「そ・・・その人が何かしたんですか!」

「貴様には関係ない」

「だって・・怖がってるんじゃないですか。止めてください」

「ひょっとして、貴様も仲間か」

「仲間・・・?」


「そ・・・その子は、関係おまへん~~・・」


八之助さんは怯えながらそう言った。


「何があったのか知りませんが、刀で脅すことはないでしょう!」

「ふっ。町人ふぜいが、異なことを」

「なんですか!町人だろうが侍だろうが関係ないでしょう!」

「貴様、殺されたいのか」

「ふんっ!刀を持ってるからって偉そうにするな!」


俺は思わずブチ切れた。

はっっ!しまった・・・ヤバい・・・殺される!!


「お侍はん、やめておくんなはれ、この子は関係おまへん」

「うるさい!貴様、それよりあいつを匿ってないんだろうな」

「匿ってなんかおまへん、ここにも来てしまへん」

「嘘をつくと、ためにならんぞ」

「ほんまでっさかい~~かんにんしておくんなはれ」


「お・・お前!刀をしまえ!」


俺は我慢できずに、また口を挟んだ。


「なにを!!こしゃくな野郎だ」


そいつは俺に刀を向けた。

ひっ・・・くそっ・・・くそっ・・・

俺の刀を持つ手が震えてどうにもならなかった。


「来い!」


しかし俺は、思いっ切り刀を抜いて構えた。


「ほうー」

「な・・・なんだっ!来いよ!」

「あかん!星川はん、やめなはれ!」


「そんなに死にたいなら殺してやるぜっ!」


そう言って男は斬りかかって来た。

うわあーーーー!!!

くっ・・・・くそっっっ!


俺は無我夢中で応戦した。

キンキンという刀のぶつかり合う音が耳に痛いほどだった。

ダメだ・・・もう殺される・・・俺は死ぬんだ・・・


「ぎゃーーー!」


男が突然大声で叫んだ。

なんだ・・・・なにっ???


「太陽くん!下がりなさい!」

「伊佐美さん!」


男の叫び声は、伊佐美さんが背後から斬りつけたためだった。

もう一人の男が伊佐美さんに斬りかかって行った。


「伊佐美さん!危ない!!」


「うっっっ!」


伊佐美さんの腕から血が流れた。


「伊佐美さん!!!くっそーーー!!」


俺はその男に斬りかかって行った。


「やめなさい!太陽くん!下がりなさい!」


「うわあーーー!」


その男が叫んだと思ったら、肩から血を流しながらもう一人の男と逃げて行った。。


「お・・沖田さんっ!!」

「後は任せなさい」


逃げて行く男二人を沖田さんが追いかけて行った。


「伊佐美さん!!しっかりしてください!!」

「太陽くん、落ち着いてください。こんなのかすり傷ですよ」

「でもっ・・でもっ!血が!」

「平気です。すぐに止まります」

「うううう・・・」


「星川はん・・・すんまへん・・すんまへん・・」

「八之助さん。八之助さんこそ大丈夫ですか」

「へぇ。わしは何ともおまへん」

「そうですか、よかった・・・」

「それより・・このお侍はん、大丈夫ですか」

「ああ、私は平気です」


俺はその場にヘタレ込んだ。

ああああ・・・・怖かった・・・もう絶対に死ぬかと思った・・・


「さあ、八之助さんも、太陽くんも家に入りなさい」

「へぇ・・すんまへん・・またお礼はさせてもらうよって、今夜はこれで・・」


そう言って八之助さんは家に入った。


「さあ、太陽くんも」

「は・・・はい・・・」


第二十六話END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ