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平成剣士  作者: たらふく
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その人の名は沖田総司

          第十五章



「太陽、少ないだろうが、これを返すよ」


土方さんはそう言って、一通の封筒を差し出した。


「え、なんですか、これ」

「開けてみてくれ」


俺は土方さんにそう促され、封筒を開けた。

すると一万円札が何枚も入っていた。

えっ・・・なんだこれ。一、二、三、四・・・じゅ・・・十万円!?


「歳さん、これなんですか」

「お前に借りてた金だ」

「俺、お金なんて貸してませんよ」

「何を言ってやがる。お前が俺に費やした金だよ」

「そんなっ!俺、こんなの受け取れません」

「いいから黙ってとっとけ」

「いや、それに俺、十万も使ってませんし」

「バカ野郎。金を借りると利息ってもんがついてくるだろうが」

「いやです!こんなの受け取れません!」

「うるさい!早くしまえ!」


土方さんはそう言って道場の中へ入って行った。

俺は、世話したくてしたんだ。お金なんていらない。

全く・・・どこに気を使ってるんだよ。


「どうしたんだ、太陽」

「あ、新さん・・」


俺は新さんにお金のことを話した。


「そうか。歳さん、気を使ってるんだな。せっかくだから貰っとけよ」

「えっ!」

「それ返すったって、歳さんが「はいそうですか」って受け取ると思うか?」

「それは・・」

「だったら歳さんに恥をかかせるな。貰っとけよ」

「はい・・・」


なんだか、水臭いんだよな。

お金なんてどうでもいいのに。


「こんばんは」

「あ、伊佐美さん、こんばんは」

「どうしたんですか。こんなところで。もう夜は冷えますよ」

「あ・・はい」

「さ、入りましょう」


そして俺たちは中へ入った。

俺は土方さんのところへ行った。


「歳さん、あの、これ。ありがたく頂戴します」

「ああ。それでいい」


なんか、納得できないけど、仕方ないか。

ほどなくして門下生が集まって来て、稽古が始まった。


「新五郎、ちょっと来い」

「え・・はい」

「今日は、お前を特訓する」

「ええっ!」

「驚くことはねぇだろう」

「いや、あの、いいんですか!」

「ああ。さあ用意しろ」


おお・・・土方さん直々に特訓か。

新さん、緊張してるな。ははっ。

でも、それだけ新さんの実力が向上してるってことだな。


伊佐美さんは全体を見回って、指導していた。

京太郎くんは、もはや指導する立場になっていた。

三杉浦さんも、それなりに形になって来たけど、相変わらず太っている。


「新五郎!なんだそのへっぴり腰は!」

「はい!」

「俺を師匠だと思うな。敵だと思ってかかって来い!」

「はい!」


わあ~~すごいな。気合入りまくり。

俺はそろそろお茶の準備をするかな。


「お邪魔しますよ」

「あっ!葛下さん、こんばんは」

「おお~やってますね」

「はい。どうぞ、こちらに掛けてください」


俺は葛下さんに椅子を用意した。


「ありがとう」

「お散歩ですか」

「まあ、そんなところです」

「歳さんや伊佐美さんとの暮らしはどうですか」

「とても世話を焼いてくれてましてね、自分のことは二の次です。あの人たちは」

「そうですか」

「掃除や洗濯はもちろんですが、庭の手入れなども細かくやってくれています」

「そうですか」

「二人で買い物に行くこともしょっちゅうですよ」

「へぇー」

「おかげで私は、淋しくないですよ」

「そうですね」

「あの人たちは私より「年上」ですが、孫みたいなものですね」

「なるほど」

「一日も早く元の時代へ帰してあげたいと思う反面、いつまでもいてほしいと思うようになりました。いけませんね、年寄りのわがままは」

「いえ、わかります」

「情が移ってしまったら、人間は手前勝手な思いを抱くものですね」


そう話す葛下さんの眼は、深い愛に満ちていた。


「でも、時々土方くんはうなされる日があるんですよ」

「そうなんですか・・」

「近藤さんや、他の隊士たちの名前を呼んでいることが多いです」

「・・・・」

「ああして日ごろは明るく振る舞ってますが、心中は穏やかではないですね。いつも新選組のことを想っているんでしょう」

「はい・・・」

「伊佐美くんは、本当に頼りになる人ですよ」

「はい」

「土方くんが、うなされてふさぎ込んでいると、必ず彼を励ましています」

「そうですか」

「彼は頭も切れますし、元の時代に戻ったら、必ず新選組の力になるでしょうね」

「はい、そう思います」

「今、土方くんとやっているのは、新五郎くんですね」

「はい。特訓だそうです」

「なるほど。土方くんも伊佐美くんも、彼のことは褒めていますよ。彼はきっと強くなると」

「そうなんですか。俺も嬉しいです」


そっかー。やっぱり新さんって素質があるんだな。

すごいな~~新さん。


「君もよくやってくれてるそうですね」

「いえ、俺はなにも。単に雑用やってるだけです」

「いいえ、君の働きぶりは、イベントの時に見せて頂きました。あれでよくわかりましたよ」

「そうですか・・ありがとうございます」

「日本の若者も、みんな君たちのような人ばかりだと、いい社会になるんですがね」

「はあ・・」

「さて、そろそろ帰りますね」

「えっ、歳さんたちと帰らないんですか」

「はい。年寄りに、ここの寒さは堪えます」

「あっ、すみません。今度、毛布を用意しますので、また来てください」

「ありがとう、では」


そう言って葛下さんは帰って行った。

日本の今の若者か。。

俺だって大したことないけど、確かに葛下さんの言う通りかも。

こないだだって、女性を三人がかりで襲ったりするやつがいたもんな。

そして、あの黒馬だよ。あいつは人間のクズだ。


「はあ~~しごかれちゃった」

「新さん、すごいですよ!強くなってますよ」

「そうかなー」

「俺、みんなにお茶を配ってきます」


休憩に入り、みんなはそれぞれに談笑していた。


「新五郎、休憩が終わったら、またやるからな」

「ひっ・・・」

「ひっじゃねえ。わかったか!」

「はいっ!」


わあ~~土方さん、気合い十分だな。


「新さん、頑張って!ファイト!」

「おおう!」


そして後半の稽古が始まった。

さて、俺は外の見回りでもするかな。

最近、どうも不審人物がこの辺りをうろついているらしい。

俺は懐中電灯を持って外に出た。

う~~さむっ。


カサカサ・・・


なんだ!誰かいるのか。

俺は音がする方を照らした。

すると、そこに一人の男が立っていた。


「誰だ!」

「・・・・」

「誰だ、お前!そこでなにをしてるんだ!」

「あのう・・」

「なんだ!」

「星川道場というんは、こちらでよろしいんでしょうかぁ」

「ああ、そうだけど」

「ひゃ~~よかったあ。探しましたわあ」

「えっと・・どなたですか」

「僕ね、ここの道場の噂を聞いて、訪ねて来たんですぅ」

「ここに用事でもあるの?」

「はいぃ~~門下生にしていただきたくて」

「ああ・・それなら申し訳ないんですけど、もう締め切っているんです」

「ええ~~そんなあ、殺生やわあ」

「えっと、君はどこから来たの?」

「僕は京都から来ましたぁ」

「京都・・・」

「なんかね、テレビの二ュースで観たんですわ。かっこいい二人を」


あっ・・・あのニュースか。。


「それで僕、弟子になりたくてここまで来たんですわ」

「それはありがたいんだけど、もう一杯なんですよ」

「そんなこと言わんと、お願いしますわぁ」

「君、いくつなの?」

「20歳です」

「わかっ」

「名前はなんていうの?」

「沖田総司っていいますぅ」

「えっ!」

「新選組の沖田さんと同姓同名ですぅ」

「そ・・そうなんだ・・」

「僕ね、大学に休学届けも出してるんです。家にも暫く旅に出る言うて、出てきたんですわぁ」

「ええっ!そんな・・・」

「だから行くとこないんです。お願いします」

「ちょっと待ってね。まあとりあえず中に入って」

「はーい」


俺たちが中に入ったら、その気合いに沖田くんは圧倒されている様子だった。


「わあ・・すごいな・・」


それにしても、沖田総司って・・・なんだこの偶然は。


「あっ!あの人らや。わあ~~かっこええなあ」

「先生って言ってくださいよ」

「もちろんですぅ」

「稽古が終わったら、一応紹介しますけど、まだ決まってないですからね」

「はいぃ」


ほどなくして稽古が終わり、俺は沖田くんを土方さんのところへ連れて行った。


「歳さん、この子が門下生になりたいって言ってるんですが」

「ほう、そうなのか」

「でも、もう締め切っちゃってますし、これまでたくさんの人も断ってますし、どうしましょう」

「お前、やる気があるのか」

「はいぃ!もちろんですぅ」

「ほう、大坂の訛りだな」

「僕、京都ですぅ」

「ほう、京の都か」

「はい!昔は都でしたぁ」

「名前はなんというんだ」

「沖田総司ですぅ」

「えっ!」


土方さんは、引くくらい驚いていた。

そりゃそうなるわな・・・


「新選組の沖田さんと同姓同名ですぅ」

「そうなのか・・・」

「僕、ここの門下生になるめために、家を出てきたんですぅ」

「家を出ただと!」


土方さんは困惑しながらも、なぜか嬉しそうにしていた。


「よし、いいだろう」

「えっ、歳さん、いいんですか!」

「ああ。家を出てまで門下生になりたいという、その意気込みが気に入った」

「ほんとですか!ありがとうございます!」


ええ・・・いいのかな。住むところもないんだよ、この子。


「みんな、紹介する。今日から門下生になった沖田総司くんだ」

「えーー沖田総司って、新選組の人と同じ名前ですねーー」

「きゃー沖田総司っていうのー。かっこいいー」


みんな驚いて、口々に話していた。


「歳さん、この者が沖田総司というのは本当ですか」

「ああ。総司と同姓同名だそうだ」

「なるほど。偶然にしてもいい名前ですね」

「ああ、そうだな」


土方さんと伊佐美さん・・・もはや名前だけで嬉しそうにしてる。


「さて、伊佐美、始めるか」

「はい」


そしていつもの打ち合いが始まった。


「わあ~~これ、なんですか。試合ですか」

「いや、この先生方は稽古の後、いつもこうして打ち合いをやってるんだよ」

「へぇー」


「太陽、この子が新しい門下生だって?」


新さんが声をかけて来た。


「はい。沖田総司くんといいます。歳は20です」


沖田くんは夢中になって打ち合いを見ていた。


「まいったな・・・沖田総司って・・」

「はい、そうですよね。俺もびっくりしました」

「そりゃ歳さんも伊佐美さんも歓迎するよな」

「はい。でも沖田くんは家を出てきたので、泊まるところがないみたいです」

「ありゃ~~・・・そりゃ困ったな」

「俺んちでも連れて行きますよ」

「そうしてくれるか。悪いな」

「いえ、平気です」


そして打ち稽古も終わり、帰り支度を始めた。


「沖田くん、俺んちにおいでよ」

「えっ、いいんですか」

「うん、俺一人暮らしだし、いいよ」

「すみません~助かりますぅ」


そして俺は沖田くんを家へ連れて帰った。


第十五章END

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