表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平成剣士  作者: たらふく
1/29

過去から来た人

第一章




今日の天気は雨が降らないはずだったのに、いきなりこれだもんな。

たまたま折り畳み傘を持ってたからよかったけど、みんなずぶ濡れになって走ってる。

俺も早く帰ろう。


あれ・・・あんなところで誰かが寝てる・・・

そこは俺の家からほど近い公園のベンチでのことだった。

こんなに雨が降ってるのに、なんであんなところで寝てるんだろう。

いや、寝てるんじゃなくて倒れているのか?


俺はその人に近寄ってみた。

着物着てる・・・男の人だ・・・

なんか苦しそうに唸ってるぞ・・・


「あの・・・大丈夫ですか」

「う・・・」


俺はその人に傘をかざした。


「どこか苦しいんですか・・・家はどこですか」

「うう・・・近藤さんはどこだ・・・」


その人はうつ伏せになったままそう言った。


「近藤さん?お知り合いですか」

「近藤さんに知らせなきゃいけねぇんだ・・・」

「なにをですか?電話は持ってますか?」

「俺たちが行くまで待てと・・・」


なんだろう、緊急事態なのか?


「あの、ここではびしょ濡れのままですから、よかったら俺の家へ来ませんか?」

「なに・・・?」


その男はそう言って、ようやく起き上がった。


「なんだ・・・ここは。お前は誰だ」

「えっと・・・通りすがりの者ですけど」

「ここはどこなんだ・・・」

「どこって・・・公園ですけど」

「公園・・・?」

「それより、このままだと風邪ひきますから、俺んち近いんでよかったら来てください」


男は仕方なく立ち上がった。

その時、刀が見えた。

ひっ・・・か・・・刀??なんで・・刀・・・本物なのか?

そういえば頭に変な鉢巻き巻いてるし、なんなんだ・・・この人・・・

警察に見つかったら銃刀法違反で逮捕されるぞ・・・


「あの、とりあえず行きましょう」


俺はそう言って、男に手を差し伸べた。


「すまねえ・・・」


俺は男に肩を貸し、家まで連れて帰った。

俺は幸いにも一人暮らしだから、ほかの人に見られることはない。

それにしても・・・

もしかして、時代劇好きのコスプレかなにかか?


「とりあえず、その着物、脱いだ方がいいですよ」

「ここはお前の家なのか」

「はい。着替え出しますので、ちょっと待ってください」


俺はTシャツとジャージとタオルを出した。


「これで拭いてください」

「ああ、すまねえ・・・」


男は長い髪を縛っていた紐をほどき、着物も脱ぎタオルで拭いていた。

えっ・・・ふんどし・・・??


「これはなんだ」

「Tシャツとズボンですけど」

「てぃしゃつ・・・ずぼん・・・」

「はい、そんなのしかないですけど、よかったらどうぞ」


男は窮屈そうにシャツとズボンを身につけた。


「あの・・・それ・・刀ですよね・・・」

「ああ」

「それって・・・本物なんですか?」

「本物?どういうことだ」

「いえ・・・おもちゃかなと思って」

「おもちゃだと?そんなわけねえだろう。本物に決まっている」

「ええっ!あの・・それ、絶対に外に持って出たらだめですよ」

「なぜだ」

「逮捕されますから!」

「逮捕?」

「そうです、捕まりますよ!」

「捕縛ってことか」


この人・・・かなりのイケメンだけど、なんか薄汚れてるし疲れているようにも見える。


「あの、あなたの名前は?」

「貴様、人に名前を聞く前に、先に自分が名乗るのが礼儀ってもんだろう」

「ああ・・すみません、俺は星川太陽っていいます」

「星川か・・・俺は土方歳三だ」

「土方さんですか・・・」

「それより、ここはどこだ」

「どこって・・・」

「都じゃないのか」

「みやこ・・・確かにそうですけど」

「じゃあ、京なんだな」

「はい、東京です」

「とうきょう・・・?」

「はい」

「俺が言ってるのは京の都のことだ」

「ああ・・・それは京都ですね。でもここは東京です」

「わかんねぇ・・・」


なんなんだろう。。記憶喪失??

それにしても、綺麗な黒髪だな。

今どき男の長髪なんて珍しくないけど、パーマもかけてないし、染めてもない。

俺は濡れた着物を洗おうかと思ったが、変に縮まったりしたらいけないと思い、できるだけ搾ってハンガーにかけた。


「俺は近藤さんに知らせなきゃならねぇことがあるんだ・・・」

「なにをですか?」

「俺たちが行くまで待てと言わなきゃならねぇのに・・・俺はこんなところで何をしているんだ・・・」

「そんなに緊急なことなんですか」

「当然だ!」

「ひっ・・・」


土方さんの顔が、一瞬、鬼に見えた。


「それは・・どんなことですか・・・」

「不逞浪士どもが密談する場所が四国屋ではなく、池田屋だった。俺たちは二手に分かれ近藤さんは池田屋へ行った。あの人数ではこっちがやられる可能性がある。だから俺たちが行くまで踏み込まなきゃいいが・・」

「四国屋・・・池田屋・・・」


なにを言ってるんだ・・・この人は。。


「それ、なんですか?」

「お前、知らねぇのか。あいつらを取り逃がすと京が火の海にされちまうんだぞ」

「火の海・・・あの・・なにを仰ってるんですか?」

「なにをだとっ!」


土方さんはまた鬼の形相になった。

めちゃくちゃ怖いんだけど・・・なんなんだほんとに。。

土方さんは、俺の部屋を見まわした。


「お前の部屋は、変なものばかり置いてるんだな」

「そ・・・そうですかね・・」

「ああ。見たことないものばかりだ」

「あの・・・土方さんは何の仕事されてるんですか」

「俺は京の治安を守るために結成された、新選組の副長をやっている」

「新選組・・・」


なんだ、新選組って。。

暴力団の名前か?そう言えば、怖い顔してるし、ヤクザなのかも。

ヤクザなら日本刀の1本や2本、持っていても不思議じゃないし。


「土方さん・・・おなか空いてませんか?」


俺は思わず気をそらすことを言った。


「減ってねぇよ」

「そ・・そうですか・・。あ!お茶いれますね」

「すまんな」


俺は冷蔵庫からペットボトルを出してコップにお茶を注いだ。


「どうぞ」

「それはなんだ・・・」

「ペットボトルですけど」

「はぁ?わかんねぇ・・・」


やっぱり記憶喪失なのか・・・いや、でも自分の名前は覚えてるしな・・・仕事も覚えてる。


「あの、今、平成何年か知ってますか?」

「平成?なんだそれは」

「年号ですよ」

「嘘をつくな!今は元治元年だ」

「元治元年・・・?」


なにっ!?元治元年って・・・幕末じゃないか!

もしかして、土方さんはタイムスリップしてきたのか!

ちょっと待てよ・・・ネットで調べたらわかるはずだ。

俺はスマホで「新選組 土方歳三」を検索した。


わっ!すげーー、たくさん出て来る。

写真もあるぞ・・・ああっっ!これは・・・目の前にいる土方さんだ。。

髪は短いけど、顔はそのままだ。。

やっぱりタイムスリップしてきたんだ。。


「あの・・・土方さん」

「なんだ」

「近藤さんって近藤勇って名前ですか」

「そうだ。なぜ知ってるんだ」

「それから・・・他にも藤堂平助、永倉新八、沖田総司、斎藤一・・・」

「なぜお前がそれを知っている!」


タイムスリップしてきたこと、言った方がいいのかな。

うわっ・・・また怖い顔してる。


「あの・・理解してもらえないかも知れませんが、土方さんは150年後の日本にいるんです」

「はあ?なにを言っている」

「タイムスリップ・・・いや、えっと、時間の空間を飛び越えて、150年後の日本に来たんです」

「言ってる意味が全くわからねえ」

「だから、今は元治じゃなくて、平成っていう年号なんです。それから過去に遡って、平成の前は昭和、大正、明治、慶応、元治、文久・・・」

「・・・・」

「今は平成29年、西暦で2017年なんです」

「それは本当か・・・」

「はい、本当です」

「近藤さん・・・総司・・・新八・・・平助・・・」


土方さんはうな垂れて、そう呟いた。


「あの・・・でも「池田屋事件」って言うんですかね・・・新選組は成功してますよ」

「ほんとか!」

「はい。それで土方さんも駆けつけてます」

「でも俺がここにいるってことは、歴史が変わるんじゃないのか」

「それは・・・俺にもよくわかりませんが・・・」


それにしても、土方さんってすごい人なんだ。

歴史に名を残してる人なんだ。

俺は今の今まで、新選組も土方歳三も全く知らなかったけど、歴史上の人物が目の前にいるって、すごいよな、これって。


「とにかく、今は俺の家に居てください。それと刀は押し入れに隠しますからね。着るものも僕のを着てください。髪は・・そのままでいいか。。」

「そうか。じゃあ世話になるか。すまねぇな」

「いいえ。元に戻れる方法も、おいおい考えましょう」

「ああ」


こうして俺と土方さんとの二人暮らしが始まった。


第一章END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ